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反撃開始
夜明けの国 決行
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「それで?」
4頭のブルームーンドラゴンを引き連れて夜明けの国へと戻った私は、神々の頂であったことをヒサメたちに話した。
そうして黙って聞いていたヒサメが最初に発した言葉が冒頭である。
「ドラゴンの保護と協力要請に向かったはずのキミが、血の契約を交わし、さらに悪魔まで連れてるのは何故だろうな。」
「今説明したじゃないですか。血の契約は生存率を上げるためだし、悪魔にしか知り得ない情報を得るため・・・」
「何故というのは非難であって理由追究ではない。代償が命と魂とは、大盤振る舞いじゃないか。それほどの働きを見せてくれるということだろうな?」
ヒサメは私の隣にいるアシャレラとさらに後方にいる4頭のドラゴンを睨みつけた。
傷のドラゴンは頭を屈めて私の近くに寄る。
『血の契約は堕ちた悪魔を封印するまでだって説明もしておけ。ああいうのは恨んだらしつこいんだ。』
「聞こえているぞ。」
ヒサメの微笑みにブルームーンドラゴンは縮こまる。
ドラゴンでも狼獣人が怖いのだろうか。それともヒサメが別格なのだろうか。
「血の契約の際にドラゴンたちには仮の名前をつけました。目に傷があるのがウミ、翼が欠けてるのがツナミ、毛がふわふわなのがウズ、この中で一番小さいのがナギです。」
ブルームーンドラゴンの青から連想できるのが海しかなかったため、このような名前になった。
臨時で呼ぶためのものだし、問題はないはずだ。
ドラゴンの説明を聞き終えるとヒサメはアシャレラに声をかけた。
「リビ殿の魂を奪うつもりか。」
「奪うだなんて人聞き悪いな。俺はリビちゃんとちゃんと契約したの。それに、リビちゃんが死んでから貰うものなんだから、あんたには関係ないだろ?」
「・・・下界に生きる者では魂のやり取りはできない、ということか?」
「出来ないのが当然でしょ・・・え、こわ、何考えてる?」
アシャレラは一歩引いてヒサメを見た。
「いや、いい。先ほどの説明通りなら悪魔のキミはリビ殿に危害を加えることも虚偽することもできないという話だったな。だが、嘘をつけないというのは真実を話すことと同等ではないだろう?」
「さすが国王様鋭いね。確かに俺が真実だと思い込んでいるものはそれが本当のように話せてしまう。また、本当は知っていることでも忘れていたら知らないと答えられるね。ただし、そこらへんの悪魔とは違い俺には生前の記憶があり、俺が悪魔になった理由は戦争でたくさんの命を奪った英雄だから、ということを念頭に置いてほしい。小賢しい小細工なんかせず、曖昧な情報はちゃんと、不明瞭だと伝える誠実さだってある。」
その場にいる全員が驚きの声を上げた。
「そんな人まで悪魔になっているの?悪魔のあんたの妄想じゃないでしょうね?」
「妄想を疑われたらそれまでだが、俺みたいな悪魔は結構多い。そういう奴ほど上界で生き残れず自害を選ぶ。好きで殺しをしていた訳じゃない連中は人を唆して負の魔力を巻き上げるなんて出来ないからな。戦争で功績を残していた兵士や騎士は国のため、正義のために敵国の人間を殺している。勿論その中には殺し合いが好きな奴もいただろうが、そういう奴は上界で生き残ってる。」
ハルはそれを聞きながら眉を顰めた。
「それであなたはその中でもイレギュラーで、飢餓の苦しみに1000年も耐え抜いているおかしな悪魔な訳ね。苦しいことに喜びを見出せる悪魔ということかしら。」
「誤解生むようなこと言わないでくれる?俺は生前の記憶が自分の支えになっていただけだよ。周りと同じように記憶を奪われていたら自害していただろうね。」
アシャレラのその瞳は真剣そのものだった。
現に彼は下界の者から魔力を奪うこともなく、苦しみに耐えながら存在し続けている。
「さてと、リビちゃん。せっかく悪魔の俺がいるんだから、有効利用してもらおうか。」
「と、いいますと?」
アシャレラは私の腕を掴む。
「今の俺は実体がないけど、契約主とだけは互いに触れることができる。」
そう言いながら、アシャレラの反対側の手はヒサメの胸をすり抜ける。
「つまり、リビちゃんは俺を食べることで悪魔である俺と一心同体になれるってことだ。」
「はい??」
思いっきり顔を顰めて見せれば、アシャレラは口角を上げる。
「魔獣の暴走を止めるためにそこにいるドラゴンちゃんたちに凍らせてもらうんだろ?少しでもその魔獣が持つ本来の魔力が残ってさえすれば死なないかもしれない。そのために鉱石の力で一つ一つ負の魔力を引き出して、なんて効率が悪い。悪魔である俺ならば負の魔力を存分に吸い出せる。そのために俺は、唯一触れられるリビちゃんの体がいる。下界に干渉するためには契約主を通す必要があるからだ。そこでリビちゃんには俺の一部を食べてもらう必要がある。」
負の魔力を糧とする悪魔であれば、今回の魔獣暴走の原因である負の魔力を吸い出すことも容易という話だ。
鉱石も有限だし、悪魔の持っている情報としては申し分ない。
ただ、私にカニバリズムの気はまったくない。
ハルは慌てたように私の肩を掴んだ。
「リビ、これ以上人間であることを捨てるのはやめて。石を食べるだけでも狂気なのよ。その上悪魔を食べるなんて!!」
「ボクも反対かな。リビ嬢がゲテモノを食べるとこなんて見たくないよ。」
ハルとアルは心配そうに訴えかけてくる。
「でも、たくさんの魔獣が暴れているのなら手段を選んでいる場合ではないですよね・・・。」
私が覚悟を決めようとしたとき、ヒサメがアシャレラの首に爪を当てた。
実体はないから当たるわけはないのだが、その場に緊張が走った。
「オレの騎士を揶揄うのはやめてもらおう。悪魔の一部というのは髪でも血でも同じこと。肉片を食えというわけではあるまい。」
「怖いなぁ、可愛い言葉遊びにそんなに怒らなくてもいいでしょ?俺の主様の嫌がることはできないんだから。」
「リビ殿は覚悟を決めたらキミの指くらいは食べる。言葉はよく選べ。」
ヒサメの言葉にアシャレラは私の顔を見る。
「リビちゃん、どういう認識されてるの?」
「心外、と言いたいところですが、今覚悟を決めようとしてました。」
アシャレラは自分の体を抱きしめるようにして身を捩る。
「ごめんね、リビちゃん。血で我慢してね・・・。」
「人をゲテモノ食いにしないでください。」
アシャレラがいることで負の魔力を取り除くことに関してはなんとかなりそうだ。
「今からそれぞれ魔獣の暴走している場所へウミたちと移動します。全員同行しますか?」
私の問いかけに異を唱える者はいなかった。
「まずはじめに、教会の建築のために神官モナさんのいた村に行くんでしょ?説得が上手くいけば教会建設に着手してくれるはず。私はその教会建設に加わるわ。魔獣の暴走では役に立たないもの。」
ハルは薬草の調合も出来るし、力仕事なら問題なさそうだ。
「ボクはリビ嬢と共に行動する。光魔法で器を戻す役目を担うよ。魔力感知としても便利でしょ?」
アルはそう言うと私の隣に並んだ。
「俺も微力ながら協力させてほしい。光魔法でもいいし、教会建設の力仕事でも構わない。」
フブキほどの力があれば教会建設は助かりそうだ。
「ボクはヒサメ様に従います。」
「ヒメはアル殿と共に器の修復だ。」
「了解です。」
ヒメが頷くと、ヒサメが口を開く。
「オレは結界魔法の準備を始める。神々の頂にある魔光石を使い、山の一部に堕ちた悪魔が出られない結界を施す。そのために四方に鉱石を設置する、だったな。」
「はい。神々の頂にソラとドウシュさんがいます。彼らと合流して鉱石の準備をお願いします。」
「ああ。とはいえ、オレもあの山は内部までは入れないが。」
「そのことなのですが、封印する結界を施す区域のみ毒の植物を除去する許可を長のドラゴンから貰っています。今、ドウシュさんとソラが封印の場所を整えてくれています。」
狼獣人ですら神々の頂を登るのが辛いのは植物の毒のせいだ。
封印の場にはヒカルも必要だから、植物の毒はなんとかしなければならない問題だった。
だから、ソラとドウシュには神々の頂に残ってもらうという役割分担をしたわけだ。
植物の判別ができるドウシュとソラならば環境破壊せずに場を整えてくれるだろう。
「鉱石の加工も必要になるので水魔法の誰かに協力を頼みましょう。魔獣の暴走を止めつつ、協力者を増やす。同時進行で行きましょう。」
私がそう言えば、ヒサメはふっ、と小さく笑う。
「同時進行というのは、いつものことながら懐かしくも思えるな。要塞の鉱石浄化のときを思い出す。」
「あのときも長い道のりではありましたが、みんなの協力で成功しました。今回も問題は違えどみんなの協力が必要不可欠です。堕ちた悪魔に負けるわけにはいきません。」
「無論だ。あの頃とは何もかもが違う。オレは恐れられているだけの狼獣人ではなくなった。」
「私も弱音を吐いてばかりの名もない人間ではなくなりました。白銀の国王の騎士になったなんて、昔の私に言っても信じられないでしょうね。」
私はそう言いつつまわりを見渡した。
今まで出会ってきた彼らは種族も年齢も生き方も全く違う。
ここにいない友人たちだって、そうだ。
そんな彼らがいなければ、今私はここに立っていないだろう。
「それじゃあ、魔獣の暴走を止めつつ、堕ちた悪魔を引きつける囮作戦を決行します。よろしくお願いします!」
頼もしい表情で頷いてくれた皆は、先にウミたちの背中に乗り始めていた。
ベルへがヒサメやモナに話しかけているのが見える。
「あの話、皆にはしないの?」
隣にいるアシャレラはそんなことを囁く。
あの話とは、太陽の神の話だ。
私が魂を取られており、堕ちた悪魔の封印の後、私のみならず全員の記憶が奪われるかもしれない話。
でも、今は堕ちた悪魔の封印で皆精一杯だ。
太陽の神の話は、封印の準備が整ってからでも十分時間はある。
「あの話とは?」
ベルへとの話が終わったヒサメがこちらに歩いてくるのが見える。
「まさか国王様聞こえちゃった?」
「オレに聞かれて困る話か?」
ヒサメの瞳が鋭く光る。
「実はさ…」
アシャレラが話してしまうのではと一瞬思った。
「俺が1000年飢餓に耐え抜いたのは一人の愛した恋人のためなんだよね。その恋人との約束を果たすために俺は魂が必要なんだ。愛したあの人を一人になんてしておけない。きっと、生まれ変わるたび虚しさを感じさせているだろうから。」
そんなアシャレラの言葉にヒサメは瞳を鎮めた。
「そのロマンティックな話を皆に聞いて欲しかったのか?」
「そう。だって上界にいる悪魔は俺の恋物語聞いてくれないし。国王様も興味ないかもしれないけどさ。」
「移動の間なら聞いてやろう。」
「え、ほんと?国王様やさしいね!!じゃあまずは出会いからなんだけど…!」
アシャレラとヒサメの背を目で追いながら、私も歩き始める。
生まれ変わったら結婚しよう。
そんな約束で魂が欲しいなんて嘘だと思ってたけど、本当だったのか。
そんな純粋な想いに応えるためにもまず、神に与えられた私の役割を全うしないとな。
ウミの背に乗って私たちは《火森の村》に向かった。
4頭のブルームーンドラゴンを引き連れて夜明けの国へと戻った私は、神々の頂であったことをヒサメたちに話した。
そうして黙って聞いていたヒサメが最初に発した言葉が冒頭である。
「ドラゴンの保護と協力要請に向かったはずのキミが、血の契約を交わし、さらに悪魔まで連れてるのは何故だろうな。」
「今説明したじゃないですか。血の契約は生存率を上げるためだし、悪魔にしか知り得ない情報を得るため・・・」
「何故というのは非難であって理由追究ではない。代償が命と魂とは、大盤振る舞いじゃないか。それほどの働きを見せてくれるということだろうな?」
ヒサメは私の隣にいるアシャレラとさらに後方にいる4頭のドラゴンを睨みつけた。
傷のドラゴンは頭を屈めて私の近くに寄る。
『血の契約は堕ちた悪魔を封印するまでだって説明もしておけ。ああいうのは恨んだらしつこいんだ。』
「聞こえているぞ。」
ヒサメの微笑みにブルームーンドラゴンは縮こまる。
ドラゴンでも狼獣人が怖いのだろうか。それともヒサメが別格なのだろうか。
「血の契約の際にドラゴンたちには仮の名前をつけました。目に傷があるのがウミ、翼が欠けてるのがツナミ、毛がふわふわなのがウズ、この中で一番小さいのがナギです。」
ブルームーンドラゴンの青から連想できるのが海しかなかったため、このような名前になった。
臨時で呼ぶためのものだし、問題はないはずだ。
ドラゴンの説明を聞き終えるとヒサメはアシャレラに声をかけた。
「リビ殿の魂を奪うつもりか。」
「奪うだなんて人聞き悪いな。俺はリビちゃんとちゃんと契約したの。それに、リビちゃんが死んでから貰うものなんだから、あんたには関係ないだろ?」
「・・・下界に生きる者では魂のやり取りはできない、ということか?」
「出来ないのが当然でしょ・・・え、こわ、何考えてる?」
アシャレラは一歩引いてヒサメを見た。
「いや、いい。先ほどの説明通りなら悪魔のキミはリビ殿に危害を加えることも虚偽することもできないという話だったな。だが、嘘をつけないというのは真実を話すことと同等ではないだろう?」
「さすが国王様鋭いね。確かに俺が真実だと思い込んでいるものはそれが本当のように話せてしまう。また、本当は知っていることでも忘れていたら知らないと答えられるね。ただし、そこらへんの悪魔とは違い俺には生前の記憶があり、俺が悪魔になった理由は戦争でたくさんの命を奪った英雄だから、ということを念頭に置いてほしい。小賢しい小細工なんかせず、曖昧な情報はちゃんと、不明瞭だと伝える誠実さだってある。」
その場にいる全員が驚きの声を上げた。
「そんな人まで悪魔になっているの?悪魔のあんたの妄想じゃないでしょうね?」
「妄想を疑われたらそれまでだが、俺みたいな悪魔は結構多い。そういう奴ほど上界で生き残れず自害を選ぶ。好きで殺しをしていた訳じゃない連中は人を唆して負の魔力を巻き上げるなんて出来ないからな。戦争で功績を残していた兵士や騎士は国のため、正義のために敵国の人間を殺している。勿論その中には殺し合いが好きな奴もいただろうが、そういう奴は上界で生き残ってる。」
ハルはそれを聞きながら眉を顰めた。
「それであなたはその中でもイレギュラーで、飢餓の苦しみに1000年も耐え抜いているおかしな悪魔な訳ね。苦しいことに喜びを見出せる悪魔ということかしら。」
「誤解生むようなこと言わないでくれる?俺は生前の記憶が自分の支えになっていただけだよ。周りと同じように記憶を奪われていたら自害していただろうね。」
アシャレラのその瞳は真剣そのものだった。
現に彼は下界の者から魔力を奪うこともなく、苦しみに耐えながら存在し続けている。
「さてと、リビちゃん。せっかく悪魔の俺がいるんだから、有効利用してもらおうか。」
「と、いいますと?」
アシャレラは私の腕を掴む。
「今の俺は実体がないけど、契約主とだけは互いに触れることができる。」
そう言いながら、アシャレラの反対側の手はヒサメの胸をすり抜ける。
「つまり、リビちゃんは俺を食べることで悪魔である俺と一心同体になれるってことだ。」
「はい??」
思いっきり顔を顰めて見せれば、アシャレラは口角を上げる。
「魔獣の暴走を止めるためにそこにいるドラゴンちゃんたちに凍らせてもらうんだろ?少しでもその魔獣が持つ本来の魔力が残ってさえすれば死なないかもしれない。そのために鉱石の力で一つ一つ負の魔力を引き出して、なんて効率が悪い。悪魔である俺ならば負の魔力を存分に吸い出せる。そのために俺は、唯一触れられるリビちゃんの体がいる。下界に干渉するためには契約主を通す必要があるからだ。そこでリビちゃんには俺の一部を食べてもらう必要がある。」
負の魔力を糧とする悪魔であれば、今回の魔獣暴走の原因である負の魔力を吸い出すことも容易という話だ。
鉱石も有限だし、悪魔の持っている情報としては申し分ない。
ただ、私にカニバリズムの気はまったくない。
ハルは慌てたように私の肩を掴んだ。
「リビ、これ以上人間であることを捨てるのはやめて。石を食べるだけでも狂気なのよ。その上悪魔を食べるなんて!!」
「ボクも反対かな。リビ嬢がゲテモノを食べるとこなんて見たくないよ。」
ハルとアルは心配そうに訴えかけてくる。
「でも、たくさんの魔獣が暴れているのなら手段を選んでいる場合ではないですよね・・・。」
私が覚悟を決めようとしたとき、ヒサメがアシャレラの首に爪を当てた。
実体はないから当たるわけはないのだが、その場に緊張が走った。
「オレの騎士を揶揄うのはやめてもらおう。悪魔の一部というのは髪でも血でも同じこと。肉片を食えというわけではあるまい。」
「怖いなぁ、可愛い言葉遊びにそんなに怒らなくてもいいでしょ?俺の主様の嫌がることはできないんだから。」
「リビ殿は覚悟を決めたらキミの指くらいは食べる。言葉はよく選べ。」
ヒサメの言葉にアシャレラは私の顔を見る。
「リビちゃん、どういう認識されてるの?」
「心外、と言いたいところですが、今覚悟を決めようとしてました。」
アシャレラは自分の体を抱きしめるようにして身を捩る。
「ごめんね、リビちゃん。血で我慢してね・・・。」
「人をゲテモノ食いにしないでください。」
アシャレラがいることで負の魔力を取り除くことに関してはなんとかなりそうだ。
「今からそれぞれ魔獣の暴走している場所へウミたちと移動します。全員同行しますか?」
私の問いかけに異を唱える者はいなかった。
「まずはじめに、教会の建築のために神官モナさんのいた村に行くんでしょ?説得が上手くいけば教会建設に着手してくれるはず。私はその教会建設に加わるわ。魔獣の暴走では役に立たないもの。」
ハルは薬草の調合も出来るし、力仕事なら問題なさそうだ。
「ボクはリビ嬢と共に行動する。光魔法で器を戻す役目を担うよ。魔力感知としても便利でしょ?」
アルはそう言うと私の隣に並んだ。
「俺も微力ながら協力させてほしい。光魔法でもいいし、教会建設の力仕事でも構わない。」
フブキほどの力があれば教会建設は助かりそうだ。
「ボクはヒサメ様に従います。」
「ヒメはアル殿と共に器の修復だ。」
「了解です。」
ヒメが頷くと、ヒサメが口を開く。
「オレは結界魔法の準備を始める。神々の頂にある魔光石を使い、山の一部に堕ちた悪魔が出られない結界を施す。そのために四方に鉱石を設置する、だったな。」
「はい。神々の頂にソラとドウシュさんがいます。彼らと合流して鉱石の準備をお願いします。」
「ああ。とはいえ、オレもあの山は内部までは入れないが。」
「そのことなのですが、封印する結界を施す区域のみ毒の植物を除去する許可を長のドラゴンから貰っています。今、ドウシュさんとソラが封印の場所を整えてくれています。」
狼獣人ですら神々の頂を登るのが辛いのは植物の毒のせいだ。
封印の場にはヒカルも必要だから、植物の毒はなんとかしなければならない問題だった。
だから、ソラとドウシュには神々の頂に残ってもらうという役割分担をしたわけだ。
植物の判別ができるドウシュとソラならば環境破壊せずに場を整えてくれるだろう。
「鉱石の加工も必要になるので水魔法の誰かに協力を頼みましょう。魔獣の暴走を止めつつ、協力者を増やす。同時進行で行きましょう。」
私がそう言えば、ヒサメはふっ、と小さく笑う。
「同時進行というのは、いつものことながら懐かしくも思えるな。要塞の鉱石浄化のときを思い出す。」
「あのときも長い道のりではありましたが、みんなの協力で成功しました。今回も問題は違えどみんなの協力が必要不可欠です。堕ちた悪魔に負けるわけにはいきません。」
「無論だ。あの頃とは何もかもが違う。オレは恐れられているだけの狼獣人ではなくなった。」
「私も弱音を吐いてばかりの名もない人間ではなくなりました。白銀の国王の騎士になったなんて、昔の私に言っても信じられないでしょうね。」
私はそう言いつつまわりを見渡した。
今まで出会ってきた彼らは種族も年齢も生き方も全く違う。
ここにいない友人たちだって、そうだ。
そんな彼らがいなければ、今私はここに立っていないだろう。
「それじゃあ、魔獣の暴走を止めつつ、堕ちた悪魔を引きつける囮作戦を決行します。よろしくお願いします!」
頼もしい表情で頷いてくれた皆は、先にウミたちの背中に乗り始めていた。
ベルへがヒサメやモナに話しかけているのが見える。
「あの話、皆にはしないの?」
隣にいるアシャレラはそんなことを囁く。
あの話とは、太陽の神の話だ。
私が魂を取られており、堕ちた悪魔の封印の後、私のみならず全員の記憶が奪われるかもしれない話。
でも、今は堕ちた悪魔の封印で皆精一杯だ。
太陽の神の話は、封印の準備が整ってからでも十分時間はある。
「あの話とは?」
ベルへとの話が終わったヒサメがこちらに歩いてくるのが見える。
「まさか国王様聞こえちゃった?」
「オレに聞かれて困る話か?」
ヒサメの瞳が鋭く光る。
「実はさ…」
アシャレラが話してしまうのではと一瞬思った。
「俺が1000年飢餓に耐え抜いたのは一人の愛した恋人のためなんだよね。その恋人との約束を果たすために俺は魂が必要なんだ。愛したあの人を一人になんてしておけない。きっと、生まれ変わるたび虚しさを感じさせているだろうから。」
そんなアシャレラの言葉にヒサメは瞳を鎮めた。
「そのロマンティックな話を皆に聞いて欲しかったのか?」
「そう。だって上界にいる悪魔は俺の恋物語聞いてくれないし。国王様も興味ないかもしれないけどさ。」
「移動の間なら聞いてやろう。」
「え、ほんと?国王様やさしいね!!じゃあまずは出会いからなんだけど…!」
アシャレラとヒサメの背を目で追いながら、私も歩き始める。
生まれ変わったら結婚しよう。
そんな約束で魂が欲しいなんて嘘だと思ってたけど、本当だったのか。
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