【完結】異世界転移した私がドラゴンの魔女と呼ばれるまでの話

yuzuku

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反撃開始

黒を纏う

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ドラゴンの上、ヒカルは何故か寝そべっていた。
「ドラゴンに乗れるなんて夢みたいです!もふもふだし!」
そう言って頬ずりをしているのだ。
そういえば、ドラゴンに乗ってるというのは実は凄いことだよな、と感覚が麻痺していることに気付かされる。
『聖女さんよ、くすぐったいから大人しく座ってくれ。』
「あっ、失礼しました。リビさんの魔法、周りにも言語が分かるようになったんですね。」
ウミは比較的優しい声だ、聖女だからか?
ヒカルは座り直すとドラゴンの言葉に驚きもしない。
「ヴィントさんから何か聞きました?」
「いえ、リビさんが呼んでるからドラゴンに乗ってと言われたので来ました。」
「…それだけ?」
「はい!」
こんな大きなドラゴンに臆することなく、何も知らないのにとりあえず乗る度胸が凄い。
ヒカルは若いとはいえ肝が据わっている。
「実はヒカルさんに協力してほしいことがありまして。」
「やります!!」
「いや、まだ説明もしてないのに承諾しちゃだめですよ。今回は危険を伴うことですし。」
私の言葉にヒカルは真っ直ぐにこちらを見た。
「私は今までは危険とは無縁でした。聖女になるために勉強し、国の外にだって出ていません。それは、私を他の国に行かせないため、そして太陽の神殿で務めを果たさせるため。リビさんがこの世界の理解を深め救おうとしている中、私は安全な学園の中で過ごしていただけ。でも、ようやく私も役に立てるんでしょう?」

ヒカルも不安だったのだろうか。
何故この世界に来てしまったのか。
聖女になって皆の安寧を守るためだと自分を納得させていたのだろう。
しかし私が太陽の国の闇を暴いてしまったことにより、またこの世界に来た理由を見失ってしまったはすだ。
太陽の神の影響を強く受け、生前の記憶を失ってしまったはずなのにヒカルはこんなにも前を向いている。
私たちは均衡を保つための材料としてここに来たわけだが、私たちがここで生きて得たものは誰の指示でもない。
ヒカルの勇気は、ヒカルだけのものだ。

「ヒカルさん、あなたの力が必要です。命をかけることになるかもしれません。」
私の差し出した手を迷うことなくヒカルは掴む。
「私にできることは全てやります。この命をかけなければならないほど重要な役割なんて断るはずがありません。」

そんな主人公らしいヒカルのおかげで光の加護はなんとかなりそうだ。
ヒカルには堕ちた悪魔のことから誓約のことまでなるべく話すことにした。
命をかけてもらうのだ、きちんとした説明が必要だろう。
ヒカルは時折驚き戸惑い頭を悩ませてはいたが、最後まできっちりと聞いてくれた。

「本当に、この世界は私たちの手にかかっていると言っても過言ではない状況なのですね。魔獣の暴走もそれに伴い混乱する人々もリビさんたちは守ってきたのですね。」
「確かに魔獣は対処してますが、それぞれの国には優秀な王や騎士・兵士がいます。戦う勇気のある人、守る勇気のある人がいます。彼らがいてくれることで、私たちは封印のことも同時に考えることが出来ているんです。」
「リビさんは凄いですね。色んな国に行って知り合って助け合って。私が自由だったとしても、そんな風に行動できたか分かりません。」
ヒカルが少しだけ羨ましそうな視線を向けた気がした。
私がヒカルを羨ましがっていたこともあったなと懐かしく思える。
「ヒカルさんはどんな国に行っても馴染めますよ。コミュニケーション能力高いし、明るいし、優しいから。」

見た目も華やかで可愛いから、と言うのは虚しいので口には出さないが。
太陽の国にヒカルがいてくれたからこそ私はスムーズに言語の勉強が出来たのだ。
そうでなければ最初の意思疎通で躓いていたことだろう。

「ところで、さっきから気になっていたのですが。この黒いオーラを纏った人は誰ですか?」
ヒカルはそう言ってアシャレラを指差した。
「聖女様だから黒く見えるのかもね、俺はリビちゃんだけの悪魔だよ。協力関係にあるから心配ご無用。」
「ああ、なるほど。だからリビさんにも黒いオーラがあるのですね。」
私はヒカルの言葉にとっさに自分の体を見る。
「私にも何か見えるんですか。」
「はい、幽かではありますがぼんやりと黒いものを纏っているように見えます。」
「ヒメ、アルさん、見えますか?」
二人に聞いてみたが、ヒメとアルは首を横に振った。
「いや、リビ嬢にもアシャレラにも黒いものは見えてないよ。」
「同じく。同じ光魔法とはいえ聖女は何かが違うんじゃない?」
聖女が他と違う点は強い光魔法を持っていることだが、魔法が強くなることによって悪魔を見分けることが出来るってことか?
「ヒカルさん、私たち以外に黒いものを纏っている人間を見たことは?」
「ありません。私の生活は太陽の国の中で完結していましたし、よく出入りしていたのは学園と太陽の神殿だけですから。もし、私が見えているこの黒いオーラが悪魔という証拠であるなら見えていたらまずいですよね。」

ヒカルの言う通り、今までに見えていたら太陽の国に入り込んでいるということになる。
見たことがないというのは少しの安心材料になる。

「もしヒカルさんのその力が堕ちた悪魔にも適用されるなら奴らを見つけやすくなります。神々の頂にいるドウシュさんに会ってもらうのが手っ取り早いですが、今は魔獣の暴走をできるだけ止めましょう。」
「リビさんが負の魔力を吸収して、光魔法で器を修復するんでしたよね。私もお手伝いします!」
ヒカルが加わったことで魔獣対処はよりスムーズになるだろう。

教会建設は火森の村が着々と進めてくれているはずだ。
残ってくれたハルとフブキ、モナがいれば安心だ。
棟梁のクッカも知り合ってから間もないといえど、信頼できそうだと感じた。
神々の頂にいるソラとドウシュは封印する場所を整えている。
そこにヒサメも合流しているはずだ。
封印に使用する魔光石を探していることだろう。
この鉱石に魔法を入れ込みやすくするために鉱石加工が必要だ。
今から泉の谷に向かい、加工の職人を借りれればいいのだが。

「そういえばヒカルさんは、光の加護のやり方はご存知ですか?」
今回の封印に際して一番重要なことを聞いておかなければならない。
「手順は学んでいます。ですが、実際にやったことはないですね。光の加護は一番最初の加護を賜る儀式と、その加護を継続する儀式の二つがあります。継続は1年に一度ありますが、賜るのは一番初めか、加護が消えた場合にしかしないものですから実際に目にしたことはないんです。」
「今回の封印は加護を賜る儀式が必要です。教会は建設中ですが、他に必要なものはありませんか?」

加護のため施す魔法陣は教会の中に描く予定だ。

「加護の魔法陣を描く条件を聞いたことはありますか?」
ヒカルの問いに私は、ヒサメに以前聞いたことがあるなと思い出す。
「儀式を行える神殿や教会を建設できる整った国が必要なんですよね。今回は大工さんたちに直接お願いして教会建設は問題ないかと思います。加護を賜る際に、どこかに許可を得る必要があるならばまずいですが。」
「加護を与える国は、神官を招待することができる条件の整った大きな国、であることが多いです。太陽の神殿にいる神官様たちは話し合い、それから国の状況を確認して加護を施すことを決定します。今回は国ではなく山に施すことになるので話し合いと国の状況確認は割愛でいいと思います。」
ヒカルの臨機応変な対応に感謝していると、ヒカルは難しい顔をした。
「加護を施すのに必要な条件のもう一つは、領域を特定する魔法陣を正確に施せることです。領域を正確に把握するためには最低でも四方に自然魔法を使える人間がいて、その魔法を打ち上げてもらう必要があります。」

魔法を打ち上げてもらうことによって距離を測る。
そのために4人の自然魔法持ちが必要ということか。

「打ち上げられた魔法が強ければ強いほど魔法陣が範囲を把握しやすくなります。私はそれを読み取りながら面積を割り出すんです。そうすることで範囲が指定でき魔法陣を完成させることができます。」
「面積を割り出すって、数学ですか?」
「そういうことになりますね。計算が合わなければ加護を施すことが出来ないんです。魔法の世界なのにこういうところはアナログというかシステム的というか。便利になりきれないところがありますよね。」
「ちなみにヒカルさん、できそうですか?」
「数字さえ分かればなんとかなります。生前も今も、学園では数学も勉強していますから。」

今回の封印の場所は正方形寄りになりそうだから、計算としてはそこまで難しくはならないはずだが。

「問題は、魔法を打ち上げるのを誰にするかというところですね。強い自然魔法を持っている且つ、危険を承知で協力してくれる人。この打ち上げる魔法は、別にそれぞれ5種類の自然魔法が揃ってなくてもいいんですよね?」
「かまいません、魔法陣が位置を把握するためのものですから。大きな国では人手があるので、それこそ数人で位置を知らせる魔法を打ち上げることも普通だそうです。」

ヒカルの言葉にとても安心した。
私の知り合いは水魔法が多い、頼めるとしたら彼らしかいない。
まずはその一人目を確保する。


上空から見える精霊の森。
『おい、どういうことだ?』
ウミが声をあげたのも無理はない。
そこには既に凍り付いた魔獣が動けなくなっていたのだ。
その中心に立っていたのは赤い髪の女性。
その女性は白い冷たい息を吐くと、こちらを見上げていた。
「リビ!!元気だったかい!?」
その溌剌とした姿は健在で、私は空から大きく手を振った。
「はい!!アイル先生も元気そうで何よりです!」
私たちは泉の谷の手前にある精霊の森に下りたった。

「白銀の国の鉱石浄化以来じゃないかい?噂も聞いてはいたけど、その様子じゃあ色々と大変だったみたいだね。」
アイルはそう言うと一瞬で私を水の膜で覆った。
ヒメとアルとヒカルはあまりの速い魔法に驚いている。
「治癒できないタイプの傷みたいだね。光魔法が揃っているのに治してないんだから、分かってはいたけどね。」
アイルはそう言うと水の膜を解除した。
「ヒカルと翼のエルフ二人、さらには怪しげな男とドラゴン4頭。面白い組み合わせだね。今度は何をするつもりなんだい?」
心なしかわくわくしているように見えるアイル。
そんなアイルにウミが話しかけた。
『その前に、あの魔獣を凍らせたのはあんたか?』
「ああ、そうさ。ブルームーンドラゴンは水魔法使いだ。つまり、あたしにも同じことが出来る。さすがに国を凍らせることは出来ないが、魔獣を一か所に集めて凍らせるなら問題ないさね。」
『いや、水魔法とはいえ高度な性質変化の魔法なはずだ。簡単にできるようなものでは。』
「エルフは長生きでね、習得に時間をかければいいだけさ。」
一体、どれだけの月日をかけたのだろうか。
アイル先生は元々魔法の才能がずばぬけてありそうだから数年か?
とりあえず、凍っている魔獣から負の魔力を取り出して器を元に戻しておいた。

「と、いうわけで鉱石の加工と打ち上げる魔法の協力を頼みたいんですけど。」
「ああ、もちろんさ。それじゃああたしは神々の頂に行けばいいんだね?」
二つ返事のアイルはさっそく山へと向かおうとするので呼び止める。
「いや、待ってください。自然魔法は最低4人必要でアイル先生以外あと3人。ですが、それぞれの自国の対応に追われているはずですからまだ人数は揃わないかと思います。それに堕ちた悪魔に出くわすかもしれない危険な役目です。もう少し、やるかやらないか検討したほうが。」
「長年生きてきたんだ、今がどれだけ緊急事態なのか理解しているつもりさ。本当ならあんたたちのような若人に命をかけて欲しくはないけれど、必要不可欠な存在なのだとしたら仕方がない。そんなリビたちに協力を惜しまない程度には良い年の取り方をしたと思っているよ。あたしの魔法は使えるよ、上手く使うことさね。」
「ありがとうございます、アイル先生。」


アイルの協力を取りつけた私たちはまた移動を始めた。
ひとまず打ち上げ魔法の人数を揃える必要がある。
アイルには引き続き泉の谷を守ってもらいつつ、時が来たら神々の頂に一緒に行ってもらうことにした。

着々と封印のための準備が進んでいく。
このまま邪魔が入らなければ教会が完成し、魔光石に結界の魔法を入れることが出来る。
神々の頂に堕ちた悪魔たちを呼び寄せて光の加護を発動し閉じ込める。
そんなに上手くいくだろうか。
そんな不安を抱えながら白銀の国へと向かっていた。
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