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最終章
泉の谷
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森の精霊の守り人に守られたエルフの住む場所、泉の谷。
一人の少女が勇気を持って外の世界へと飛び出したことでこの世界は大きく変わることになった。
「その女性は人間の男性に恋をしたの。そうしてその二人の子供は、エルフの病気を治療する方法を見つけた先生になったのよ。とても素敵でしょう?」
一人の老婆の周りにはエルフの子供たちが集まっていた。
子供たちは、色んな話を聞かせてくれるのをいつも楽しみにしているのだ。
「ビル族長様、その話この前も聞いたよ。その話、本当に好きなんだね。」
「ええ、だって泉の谷のエルフが外の世界に出ようと思えたのは、彼女の、アイル先生の治療発見のおかげだもの。そのおかげで私は、たくさん世界を見て回ることが出来たわ。」
ビルは30年前、泉の谷に戻ってきた。
そろそろ体力も落ちて、動き回ることが難しくなったからだ。
そうして今は族長になって、子供たちに世界のことを教えているのだ。
「ビル族長様は、魔力制御の難しい子供たちを助けるために色んな国を回ってたんでしょ?そのあとは、学校も作ったってほんと?」
「ええ、本当よ。子供たちを助ける活動をしている最中に、協力してくれていたドラゴンの騎士様が竜人族との交流会を成功させたの。だからね、魔法に詳しい竜人族の方々と協力すればもっと、子供たちを救えるって話になったの。その学校では、竜人族の方々が魔法の制御について教えてくれたの。そして私と騎士様は彼らに共通言語を教えるようにしたのよ。」
それぞれの知識や学び方を共有し、交流を深めていった。
今や竜人族は得体の知れない一族ではなくなったのだ。
「ドラゴンの騎士様は竜人族の方々だけではなく、魔獣やモンスターが平穏に暮らせるようにと行動し続けているのよ。暮らしている人々と、暮らしている魔獣、暮らしているモンスターがそれぞれの場所で生きていけるように、夜明けの国や太陽の神殿の神官様の協力を得て保護区間を作り続けているわ。私は途中までしかお手伝いできなかったけど、彼女と出会わなければ私はきっと、こんなに広い世界を見られなかった。」
ビルはそう言って、古い地図を取り出した。
「ドラゴンの騎士様とはいろんな場所を巡ったわ。子供を救うことだけではなく、私にたくさんの素晴らしい景色を見せてくれた。どうしてかしら彼女は、私のしたかったことを誰よりも応援してくれたのよ。勿論兄も応援してくれたけど、身内以外では一番ってことね。とても心強かった。とても、感謝してるの。」
「ねぇ、ビル族長様。ドラゴンの騎士様ってだれ?」
ビルは、はっとして、それから微笑んだ。
「ああ、そうだったわね。ドラゴンの騎士は昔の呼び名なの。彼女は白銀のヒサメ国王という方のみに忠誠を捧げていたのよ。だから、ヒサメ様が亡くなって、彼女が騎士と呼ばれることは無くなったのよね。今ではもう、彼女が騎士だったことを覚えている人が少ないから。」
ビルはそう呟いて、それから水魔法でブルームーンドラゴンと、そのドラゴンに乗る女性を形作った。
「彼女はドラゴンと会話することが出来る魔法の持ち主で、そのドラゴンと共に各国を回って皆を守っているの。100年前に起こった大地震を再び起こさせないように、この世界が平和であり続けるように行動し続けているのよ。」
子供たちは顔を見合わせると、口々に言いだした。
「分かった!仮面のお姉ちゃんでしょ?お顔絶対見せてくれないの。」
「ママが人間なのに長生きねって言ってたよ?なんでだろう。」
「ローブから見えた腕が傷だらけだったの。ちょっと、怖かった。」
そんな子供たちにビルは穏やかな笑顔を見せた。
「彼女は確かに不思議な人よね。でも、どうか怖がらないで。彼女は私のことも、皆のことも守ってくれているのよ。」
「じゃあどうして、あんな呼び名なの?絵本では怖い話が多いの。」
「誰が付けたのかは分からないけど、その方が目立って見つけやすいから気に入ってるって言ってたわ。」
だから彼女は、そう呼ばれることを選んだ。
すると、家の玄関の扉を開けてトゥアが入ってきた。
「ビル、彼女が見回りに来てくれた。さぁ子供たち、挨拶しに行こう。ドラゴン様もいるぞ。」
どれだけ年月が経過しようが、彼女は行動をやめない。
そうすれば、いつか見つけてくれるから。
だからその日まで待ち続ければいい。
どこにいても見つけられるように、彼女は彼女であり続けるために。
そんな彼女は今、ドラゴンの魔女と呼ばれている。
一人の少女が勇気を持って外の世界へと飛び出したことでこの世界は大きく変わることになった。
「その女性は人間の男性に恋をしたの。そうしてその二人の子供は、エルフの病気を治療する方法を見つけた先生になったのよ。とても素敵でしょう?」
一人の老婆の周りにはエルフの子供たちが集まっていた。
子供たちは、色んな話を聞かせてくれるのをいつも楽しみにしているのだ。
「ビル族長様、その話この前も聞いたよ。その話、本当に好きなんだね。」
「ええ、だって泉の谷のエルフが外の世界に出ようと思えたのは、彼女の、アイル先生の治療発見のおかげだもの。そのおかげで私は、たくさん世界を見て回ることが出来たわ。」
ビルは30年前、泉の谷に戻ってきた。
そろそろ体力も落ちて、動き回ることが難しくなったからだ。
そうして今は族長になって、子供たちに世界のことを教えているのだ。
「ビル族長様は、魔力制御の難しい子供たちを助けるために色んな国を回ってたんでしょ?そのあとは、学校も作ったってほんと?」
「ええ、本当よ。子供たちを助ける活動をしている最中に、協力してくれていたドラゴンの騎士様が竜人族との交流会を成功させたの。だからね、魔法に詳しい竜人族の方々と協力すればもっと、子供たちを救えるって話になったの。その学校では、竜人族の方々が魔法の制御について教えてくれたの。そして私と騎士様は彼らに共通言語を教えるようにしたのよ。」
それぞれの知識や学び方を共有し、交流を深めていった。
今や竜人族は得体の知れない一族ではなくなったのだ。
「ドラゴンの騎士様は竜人族の方々だけではなく、魔獣やモンスターが平穏に暮らせるようにと行動し続けているのよ。暮らしている人々と、暮らしている魔獣、暮らしているモンスターがそれぞれの場所で生きていけるように、夜明けの国や太陽の神殿の神官様の協力を得て保護区間を作り続けているわ。私は途中までしかお手伝いできなかったけど、彼女と出会わなければ私はきっと、こんなに広い世界を見られなかった。」
ビルはそう言って、古い地図を取り出した。
「ドラゴンの騎士様とはいろんな場所を巡ったわ。子供を救うことだけではなく、私にたくさんの素晴らしい景色を見せてくれた。どうしてかしら彼女は、私のしたかったことを誰よりも応援してくれたのよ。勿論兄も応援してくれたけど、身内以外では一番ってことね。とても心強かった。とても、感謝してるの。」
「ねぇ、ビル族長様。ドラゴンの騎士様ってだれ?」
ビルは、はっとして、それから微笑んだ。
「ああ、そうだったわね。ドラゴンの騎士は昔の呼び名なの。彼女は白銀のヒサメ国王という方のみに忠誠を捧げていたのよ。だから、ヒサメ様が亡くなって、彼女が騎士と呼ばれることは無くなったのよね。今ではもう、彼女が騎士だったことを覚えている人が少ないから。」
ビルはそう呟いて、それから水魔法でブルームーンドラゴンと、そのドラゴンに乗る女性を形作った。
「彼女はドラゴンと会話することが出来る魔法の持ち主で、そのドラゴンと共に各国を回って皆を守っているの。100年前に起こった大地震を再び起こさせないように、この世界が平和であり続けるように行動し続けているのよ。」
子供たちは顔を見合わせると、口々に言いだした。
「分かった!仮面のお姉ちゃんでしょ?お顔絶対見せてくれないの。」
「ママが人間なのに長生きねって言ってたよ?なんでだろう。」
「ローブから見えた腕が傷だらけだったの。ちょっと、怖かった。」
そんな子供たちにビルは穏やかな笑顔を見せた。
「彼女は確かに不思議な人よね。でも、どうか怖がらないで。彼女は私のことも、皆のことも守ってくれているのよ。」
「じゃあどうして、あんな呼び名なの?絵本では怖い話が多いの。」
「誰が付けたのかは分からないけど、その方が目立って見つけやすいから気に入ってるって言ってたわ。」
だから彼女は、そう呼ばれることを選んだ。
すると、家の玄関の扉を開けてトゥアが入ってきた。
「ビル、彼女が見回りに来てくれた。さぁ子供たち、挨拶しに行こう。ドラゴン様もいるぞ。」
どれだけ年月が経過しようが、彼女は行動をやめない。
そうすれば、いつか見つけてくれるから。
だからその日まで待ち続ければいい。
どこにいても見つけられるように、彼女は彼女であり続けるために。
そんな彼女は今、ドラゴンの魔女と呼ばれている。
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