虐殺者の称号を持つ戦士が元公爵令嬢に雇われました

オオノギ

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南国編 一章:マシラ共和国

エリク対アリア

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 次の日。
 アリアとエリクは、港町の外で生い茂る森に訪れていた。
 同行者にはケイルが遠巻きに監視と観察をしつつ、そこでアリアはエリクと模擬戦を行った。

「エリク。まずは本気の私と戦ってみて」

「本気、か」

「本気と言っても、殺すつもりではしない。貴方が重傷を負ってしまったら元も子も無いから。それにお互いに、船旅で体が鈍ってるでしょ?」

「確かに、そうだな」

「樹海の時みたいに瞬殺は無しよ。私の動きを見て対処してみせて。そして貴方は、私の戦い方に関する悪い点を見ながら、終わったら教えて」

「ああ」

「――……『冷然の水を纏いし剣ウォーターソード』。じゃあ、行くわ!」

 アリアは短杖を右手に持ち、ユグナリス戦で見せた水の剣を作り出す。
 そしてアリアは駆け出し、エリクに水の剣を振った。
 それをエリクは容易く避ける中で、アリアは更に魔法を唱えた。

「『激流なる水の監獄スプラッシュ・プリズン』!!」

「むっ」

 避けた瞬間にアリアの水の剣が解除され、その水がエリクを覆う球形状の檻へと化す。
 エリクは完全に覆われる前に背中に大剣を振り、水の檻を破壊して中から飛び出した。
 その瞬間にアリアが待っていたと言わんばかりに微笑み、続けて魔法を唱えた。

「『薄氷たる氷の空間アイスフィールド』!!」

「!」

 水を被ったエリクの体を拘束するように氷の膜がその場に張られ、エリクの体を覆った。
 夏場に近い時期に関わらず、エリクとアリアの周囲が氷の空間へと変化し、白い息が互いに吐かれた。
 エリクはその薄く張られた氷さえ腕力と脚力で引き剥がすが、停止したエリクの隙を狙い、アリアが更なる魔法を唱えて追撃した。

「これで終わり!――……『天上から降り注ぐ雷撃ライトニング』!!」

「!!」

 短杖を空に向けたアリアが唱えると、上空から電撃が降り注ぎ、エリクに纏わり付く氷を襲った。
 電撃が氷を伝ってエリクを襲うと、エリクの髪と毛を逆立たせて歯を食い縛らせた。
 しかしエリクはそのまま強引に氷を割り、飛び退いて電撃から脱出した。

「嘘、気絶しないの!?」

「……危なかった」

「なら、もう一度。――『冷然の水を纏いし剣ウォーターソード』!!」

「……」

「そして、『水に纏いし氷の剣アイスソード』!!」

「!」

 エリクが気絶しない事に驚くアリアは新たに水の剣を作り出した上で、その水を氷の剣へ変化させた。
 地面に着いた氷の刃先で地面が凍る様子を見て、あの剣に接触してはいけないとエリクは察すると、アリアが突きの構えを見せて走り出した。

「――……今よ、『電撃サンダー』!!」

「!」

 突きに見えたアリアが持つ氷の剣先から、魔玉を伝ってエリクに向けて電撃が放たれた。
 それをエリクは見てから避けたが、待ち構える体勢を崩したエリクにアリアは氷の剣を振って飛び掛かった。

「もらった!!」

「……」

 アリアは氷の剣を振った瞬間、迎撃したエリクの大剣が氷の剣と衝突した。

「キャアッ!!」

 僅かにエリクの大剣を凍らせる事に成功しながらも、アリアの氷の剣は折れ、その衝撃でアリアは倒れた。

「ク……ッ」

「俺の勝ちだな」

「……ええ。私の負けね」

 起き上がろうとするアリアの前に、エリクは大剣の矛先をアリアに向けた。
 大剣を向けたエリクは勝利を伝え、刃を突き付けられたアリアは敗北を認めた。

 戦いを終えて立ち上がったアリアは、エリクに感想を求めた。

「私の戦い、どうだった?」

「強いと思う」

「そう。その割には、ほとんど回避されたし、電撃も効いてなかったみたいだけど?」

「光を浴びた時は、少し痺れた」

「電撃を喰らって痺れた程度で済むのは、エリクだけよ。それで、私の悪い点は何だったか分かる?」

 そう聞くアリアの言葉に、エリクは少し考えてから答えた。

「君の攻撃は大振りだ。だから見極める事も、迎撃するのも簡単だった」

「そうね、確かに大振りだわ。だから魔法でそれを補ってる」

「君は、パールやログウェルほど素早くない。しかし、魔法の連携は素早い。後は決め手となる攻撃で、トドメを刺せるか刺せないかだと思う」

「トドメを、刺せるか刺せないか……」

「……君が戦っていた赤毛の男との戦いを見ていた。君は、あの男を殺すつもりで攻撃していなかった」

「!」

「あの時の敗因は、決め手を欠いて持久戦になり、体力の劣る君が押し負けたから。そう見えた」

「エリク、貴方。あの戦いの時に、私の戦いまで見てたの……?」

「ああ。君を守れるようにしたかったが、あの老人を相手にしながらでは、上手く出来なかった」

 ログウェルと戦いながら自分を助けようと考えていたエリクに、アリアは驚きながら内心で悔しがった。
 自分の参戦がエリクの意識に負担を掛け、ログウェルに押された原因にもなっていたのだと、そうアリアは考え至った。

「エリク、もう少しだけ模擬戦に付き合って。まだいける?」

「ああ」

「なら、行くわよ!」

 こうしてエリクとアリアは、朝から昼近くまで模擬線を続けた。
 そしてアリアが精神力と体力を一定に消耗し、疲れたところで模擬戦は終了した。
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