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南国編 三章:マシラの秘術
それぞれの対峙
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マシラ王を目的に侵入したアリアとケイルは、
闘士である第二席エアハルトと、
魔法師の第五席テクラノスの待ち伏せを受けた。
その窮地に現れたのは、
同じ闘士であり序列三位の少年闘士、マギルスだった。
「お姉さん達、待った?」
そのマギルスがアリアとケイルに向け、
笑いながら尋ねて聞くと、
文句を漏らすようにアリアが答えた。
「待ったわよ。いつまで高見の見物してるのかと思ったじゃない」
「ごめんごめん。でも危ない時に助けに登場した方が、女の人は嬉しいんでしょ。その相手に惚れちゃったりさ」
「頭がお花畑ならね」
「えー」
辛辣なアリアの言葉に苦笑いするマギルスは、
笑いながら改めてエアハルトとテクラノスを見た。
ケイルと一旦離れたエアハルトは、
マギルスを見ながら呟くように聞いた。
「……どういうことだ、マギルス」
「僕、アリアお姉さん達に味方するよ。その方が楽しそうだから」
「ゴズヴァールを裏切るのか」
「違うよ。ゴズヴァールおじさんは大好きだけど、アリアお姉さんの事も気に入ったんだ。だから助けるの」
「……」
そう笑って告げるマギルスに、
エアハルトは眉間に皺を見せるほど眉を吊り上げ、
怒りに近い形相を見せた。
そんなエアハルトを見据えて笑いながら前へ歩き、
マギルスは笑って後ろに居るアリアに話し掛けた。
「アリアお姉さん、さっさと結界を解除して進んだ方がいいよ。エアハルトお兄さん、本気で怒っちゃった」
「とっくにやってるわよ」
「四番目の人。エアハルトお兄さんは任せちゃっていいんだよね?」
「ええ」
ケイルの居る場所に並び立ったマギルスが、
同じく並び立つエアハルトとテクラノスを見た。
闘士序列二席と五席を相手に、
序列三位と四席が相対する事となった現在、
その情勢がどちらに好転するか分からない中、
アリアは玉座の扉を覆う結界を解除した。
「ケイル、マギルス。後はお願い!」
「頑張ってねー」
「頼みます」
玉座の扉を押し開けたアリアを背中で見送りながら、
ケイルとマギルスは短い言葉を送った。
扉の中に入り、扉が閉じた音が響いた後に、
エアハルトが敵対したケイルとマギルスに告げた。
「……こうなった以上、手加減はしない」
エアハルトが自身の体内にある魔力を開放し、
人の姿から人狼の姿へ変貌した。
狼獣族の姿となったエアハルトは凄まじい魔力圧を放ち、
目の前のマギルスとケイルに向けて敵意を発する。
テクラノスも光の輪を十個ほど展開し、
周囲に漂わせながらマギルスを見ていた。
五席から二席までの闘士の上位者達が集う中で、
マギルスが笑いながら話した。
「そういえば、初めてだね。五番目から二番目の人達がこうして揃うのって」
「……」
「六番目から十番目、そしてゴズヴァールおじさんは単純な力量差で席順されてるけど、僕達は強さ順じゃなくて、適当に並んでるだけだもんね」
「……」
「テクラノスお爺さんは、その数字が好きだから五番目。僕は三番目の人が抜けたから三番目。エアハルトお兄さんは誰もやりたがらないから、二番目になったんだよね。あれ、四番目の人はなんだっけ?」
「元老院が差し挟み、入り込んだ席順ですね」
「そっか。じゃあ単純な力比べって、二番目から五番目の僕等は一度だってしたことないワケだ」
そう思い出しながら話すマギルスは、
自身の大鎌の柄先を地面へ着け、
少年らしい悪戯心を含む笑みで、
大鎌を構えながら告げた。
「さっ、やろうか。みんな」
その声と共に飛び出したマギルスが、
テクラノスを大鎌を斬りかかる。
それを光の輪で迎撃したテクラノスだったが、
一瞬で光の輪を大鎌で切り裂き消失させたマギルスが、
テクラノス自身に斬りかかった。
しかしテクラノスは瞬時に結界を周囲に張り巡らせ、
更に別の光の輪を左右に飛ばしてマギルスを襲わせた。
それを払うように大鎌を切り裂いたマギルスは、
更にテクラノスが生み出し放つ光の輪を舞うように斬り続けた。
しかし光の輪は切断された後に瞬時に接着し、
光の輪はマギルスの周囲を囲みながら襲い続けた。
「アハハ!輪投げ遊びが大好きなの、テクラノスお爺さん?」
「何度切り裂こうと、貴様の鎌では、我の叡智の輪は切れぬ」
「そっか。じゃあ、こうするね!」
「!?」
マギルスは瞬時に光の輪の中に大鎌の柄先を入り込ませ、
全ての輪を束ねると同時に、柄先を床に突き刺して止めた。
それを見たテクラノスは驚きながらも、
瞬時に意識を切り替え、
光の輪を消失させて新たな輪を作り出した。
「また輪っか遊び?そんなのつまらないし、すぐ飽きちゃうよ。他のはないの?」
「……今、なんと言った?」
「え?だから、つまらないって」
「……我が手掛けた魔法が、つまらんだと……」
「だって、ただ輪っかを飛ばしてぶつけるだけでしょ。大したことないよ。お姉さんの魔法の方がずっと強かったし、不思議で格好良かった」
「……餓鬼め。我の魔法が如何に素晴らしいモノか理解もせずに……」
素直な感想を告げるマギルスに、
今まで冷静だったテクラノスが、
初めて怒りの感情を見せた。
長杖を掲げたテクラノスが光の輪を剣に切り替え、
明確な殺気を持ってマギルスと相対した。
「理解の足らぬ餓鬼に見せてくれよう。我の魔法の真髄を」
「そうそう、もっと僕を楽しませてよ」
一方でマギルスがテクラノスを自然に煽る中、
一方のケイルとエアハルトは互いに静かに見据えていた。
ケイルは腰溜めに足を広げ身を僅かに低くし、
長剣の柄に右手を覆うように付け、
全身を脱力させ静かにエアハルトを見据えている。
対するエアハルトも両手の爪の形状を伸ばし、
腰を落とし身体の力を極限まで抜いた。
「……」
「……」
王宮内の通路を破壊し、
外に飛び出たマギルスとテクラノスを他所に、
土埃が空間内を満たす中で互いの視界が遮られた瞬間、
エアハルトとケイルが同時に動き出した。
そしてケイルの右手に握る長剣が、
エアハルトの右爪に直撃する。
それと同時に左手に持つ小剣をケイルが振り、
エアハルトの胴を薙いだ瞬間にエアハルトが上に飛び、
蹴り足を飛ばしてケイルの顔面を狙った。
互いの剣と爪が身体を掠める中で、
エアハルトは右腿を、ケイルは左肩に裂傷が生み出される。
互いに互いの傷を見ようとはせず、
そのまま剣を引き抜いたケイルが駆け出し、
右手の長剣で突きながらエアハルトに追撃する。
それを回避するエアハルトは左右に身体をブレさせ、
剣の突きに合わせて蹴りのカウンターをケイルに浴びせた。
しかしそれを小剣で受けたケイルは、
飛び退きながら再び腰溜めに構え、
仮面を付けたまま息を整えた。
「ハァ……」
「……ケイティル。貴様、何者だ」
「……」
「貴様がどのような経歴を辿り、元老院と接触し、闘士の中に入り込んだかを調べた。だが、何も分からない。……貴様は、マシラ王にどんな執着を持っている」
「……貴方には関係のない事です」
「貴様の事で分かった事と言えば、王宮の近衛剣士として仕えていた僅かな間、とある女官と接触があったという、未確認の情報だけだ」
「……」
「そしてその女官こそ、アレキサンドル王子を産み落とした、マシラ王の恋人だった」
「……」
「マシラ王はその女官とは正式な結婚をせず、愛妾とし傍に置いていただけだった。……貴様とその女官、どういう関係だった」
「……」
「それが今回、貴様が裏切った理由か」
「……」
ケイルはエアハルトの述べる事に何も言わず、
再び構え迎撃に備えただけだった。
エアハルトは人狼の姿のまま鋭い眼光を向け、
再びケイルとの激戦に戻っていく。
こうして闘士同士の同士討ちに事態に発展する中。
玉座の扉を開け玉座の間に侵入したアリアの目の前に、
阻むように玉座の間にある段差で座っていた男が居た。
その男の姿を見たアリアは、
緊張にも似た戦慄を抱きつつ、静かに男の名前を呟いた。
「――……ゴズヴァール……」
「……来たか。魔法師アリア」
闘士の長であるゴズヴァールが玉座の間で、
アリアが来る事を予期していたかのように待ち、
二人は再び対峙するのだった。
闘士である第二席エアハルトと、
魔法師の第五席テクラノスの待ち伏せを受けた。
その窮地に現れたのは、
同じ闘士であり序列三位の少年闘士、マギルスだった。
「お姉さん達、待った?」
そのマギルスがアリアとケイルに向け、
笑いながら尋ねて聞くと、
文句を漏らすようにアリアが答えた。
「待ったわよ。いつまで高見の見物してるのかと思ったじゃない」
「ごめんごめん。でも危ない時に助けに登場した方が、女の人は嬉しいんでしょ。その相手に惚れちゃったりさ」
「頭がお花畑ならね」
「えー」
辛辣なアリアの言葉に苦笑いするマギルスは、
笑いながら改めてエアハルトとテクラノスを見た。
ケイルと一旦離れたエアハルトは、
マギルスを見ながら呟くように聞いた。
「……どういうことだ、マギルス」
「僕、アリアお姉さん達に味方するよ。その方が楽しそうだから」
「ゴズヴァールを裏切るのか」
「違うよ。ゴズヴァールおじさんは大好きだけど、アリアお姉さんの事も気に入ったんだ。だから助けるの」
「……」
そう笑って告げるマギルスに、
エアハルトは眉間に皺を見せるほど眉を吊り上げ、
怒りに近い形相を見せた。
そんなエアハルトを見据えて笑いながら前へ歩き、
マギルスは笑って後ろに居るアリアに話し掛けた。
「アリアお姉さん、さっさと結界を解除して進んだ方がいいよ。エアハルトお兄さん、本気で怒っちゃった」
「とっくにやってるわよ」
「四番目の人。エアハルトお兄さんは任せちゃっていいんだよね?」
「ええ」
ケイルの居る場所に並び立ったマギルスが、
同じく並び立つエアハルトとテクラノスを見た。
闘士序列二席と五席を相手に、
序列三位と四席が相対する事となった現在、
その情勢がどちらに好転するか分からない中、
アリアは玉座の扉を覆う結界を解除した。
「ケイル、マギルス。後はお願い!」
「頑張ってねー」
「頼みます」
玉座の扉を押し開けたアリアを背中で見送りながら、
ケイルとマギルスは短い言葉を送った。
扉の中に入り、扉が閉じた音が響いた後に、
エアハルトが敵対したケイルとマギルスに告げた。
「……こうなった以上、手加減はしない」
エアハルトが自身の体内にある魔力を開放し、
人の姿から人狼の姿へ変貌した。
狼獣族の姿となったエアハルトは凄まじい魔力圧を放ち、
目の前のマギルスとケイルに向けて敵意を発する。
テクラノスも光の輪を十個ほど展開し、
周囲に漂わせながらマギルスを見ていた。
五席から二席までの闘士の上位者達が集う中で、
マギルスが笑いながら話した。
「そういえば、初めてだね。五番目から二番目の人達がこうして揃うのって」
「……」
「六番目から十番目、そしてゴズヴァールおじさんは単純な力量差で席順されてるけど、僕達は強さ順じゃなくて、適当に並んでるだけだもんね」
「……」
「テクラノスお爺さんは、その数字が好きだから五番目。僕は三番目の人が抜けたから三番目。エアハルトお兄さんは誰もやりたがらないから、二番目になったんだよね。あれ、四番目の人はなんだっけ?」
「元老院が差し挟み、入り込んだ席順ですね」
「そっか。じゃあ単純な力比べって、二番目から五番目の僕等は一度だってしたことないワケだ」
そう思い出しながら話すマギルスは、
自身の大鎌の柄先を地面へ着け、
少年らしい悪戯心を含む笑みで、
大鎌を構えながら告げた。
「さっ、やろうか。みんな」
その声と共に飛び出したマギルスが、
テクラノスを大鎌を斬りかかる。
それを光の輪で迎撃したテクラノスだったが、
一瞬で光の輪を大鎌で切り裂き消失させたマギルスが、
テクラノス自身に斬りかかった。
しかしテクラノスは瞬時に結界を周囲に張り巡らせ、
更に別の光の輪を左右に飛ばしてマギルスを襲わせた。
それを払うように大鎌を切り裂いたマギルスは、
更にテクラノスが生み出し放つ光の輪を舞うように斬り続けた。
しかし光の輪は切断された後に瞬時に接着し、
光の輪はマギルスの周囲を囲みながら襲い続けた。
「アハハ!輪投げ遊びが大好きなの、テクラノスお爺さん?」
「何度切り裂こうと、貴様の鎌では、我の叡智の輪は切れぬ」
「そっか。じゃあ、こうするね!」
「!?」
マギルスは瞬時に光の輪の中に大鎌の柄先を入り込ませ、
全ての輪を束ねると同時に、柄先を床に突き刺して止めた。
それを見たテクラノスは驚きながらも、
瞬時に意識を切り替え、
光の輪を消失させて新たな輪を作り出した。
「また輪っか遊び?そんなのつまらないし、すぐ飽きちゃうよ。他のはないの?」
「……今、なんと言った?」
「え?だから、つまらないって」
「……我が手掛けた魔法が、つまらんだと……」
「だって、ただ輪っかを飛ばしてぶつけるだけでしょ。大したことないよ。お姉さんの魔法の方がずっと強かったし、不思議で格好良かった」
「……餓鬼め。我の魔法が如何に素晴らしいモノか理解もせずに……」
素直な感想を告げるマギルスに、
今まで冷静だったテクラノスが、
初めて怒りの感情を見せた。
長杖を掲げたテクラノスが光の輪を剣に切り替え、
明確な殺気を持ってマギルスと相対した。
「理解の足らぬ餓鬼に見せてくれよう。我の魔法の真髄を」
「そうそう、もっと僕を楽しませてよ」
一方でマギルスがテクラノスを自然に煽る中、
一方のケイルとエアハルトは互いに静かに見据えていた。
ケイルは腰溜めに足を広げ身を僅かに低くし、
長剣の柄に右手を覆うように付け、
全身を脱力させ静かにエアハルトを見据えている。
対するエアハルトも両手の爪の形状を伸ばし、
腰を落とし身体の力を極限まで抜いた。
「……」
「……」
王宮内の通路を破壊し、
外に飛び出たマギルスとテクラノスを他所に、
土埃が空間内を満たす中で互いの視界が遮られた瞬間、
エアハルトとケイルが同時に動き出した。
そしてケイルの右手に握る長剣が、
エアハルトの右爪に直撃する。
それと同時に左手に持つ小剣をケイルが振り、
エアハルトの胴を薙いだ瞬間にエアハルトが上に飛び、
蹴り足を飛ばしてケイルの顔面を狙った。
互いの剣と爪が身体を掠める中で、
エアハルトは右腿を、ケイルは左肩に裂傷が生み出される。
互いに互いの傷を見ようとはせず、
そのまま剣を引き抜いたケイルが駆け出し、
右手の長剣で突きながらエアハルトに追撃する。
それを回避するエアハルトは左右に身体をブレさせ、
剣の突きに合わせて蹴りのカウンターをケイルに浴びせた。
しかしそれを小剣で受けたケイルは、
飛び退きながら再び腰溜めに構え、
仮面を付けたまま息を整えた。
「ハァ……」
「……ケイティル。貴様、何者だ」
「……」
「貴様がどのような経歴を辿り、元老院と接触し、闘士の中に入り込んだかを調べた。だが、何も分からない。……貴様は、マシラ王にどんな執着を持っている」
「……貴方には関係のない事です」
「貴様の事で分かった事と言えば、王宮の近衛剣士として仕えていた僅かな間、とある女官と接触があったという、未確認の情報だけだ」
「……」
「そしてその女官こそ、アレキサンドル王子を産み落とした、マシラ王の恋人だった」
「……」
「マシラ王はその女官とは正式な結婚をせず、愛妾とし傍に置いていただけだった。……貴様とその女官、どういう関係だった」
「……」
「それが今回、貴様が裏切った理由か」
「……」
ケイルはエアハルトの述べる事に何も言わず、
再び構え迎撃に備えただけだった。
エアハルトは人狼の姿のまま鋭い眼光を向け、
再びケイルとの激戦に戻っていく。
こうして闘士同士の同士討ちに事態に発展する中。
玉座の扉を開け玉座の間に侵入したアリアの目の前に、
阻むように玉座の間にある段差で座っていた男が居た。
その男の姿を見たアリアは、
緊張にも似た戦慄を抱きつつ、静かに男の名前を呟いた。
「――……ゴズヴァール……」
「……来たか。魔法師アリア」
闘士の長であるゴズヴァールが玉座の間で、
アリアが来る事を予期していたかのように待ち、
二人は再び対峙するのだった。
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