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革命編 三章:オラクル共和王国
砂の制圧
しおりを挟む銃声と共に動き出す【特級】傭兵スネイクが率いる『砂の嵐』は、ついに村へ強行突入を開始する。
そして迎撃に向かうクラウスやワーグナー達は、武器庫の周辺に築いた建物や防波堤を盾にし、三十名余りの数が小銃を持ちながら待ち構えていた。
クラウスに肩を貸していたワーグナーは、クラウスを正面の迎撃位置にある防波堤に座らせる。
そして後から続いて来た少年達に対して、クラウスは助言するように伝えた。
「――……君達はシスターに鍛えられたと聞く。可能ならば、敵が投げられた爆弾を敵側へ投げ返してほしい。猶予は三秒以内。それまでに拾い投げられないと判断したら、躊躇せず他の者達と共に爆弾から離れてくれ。それと負傷者を下げる役目だ。出来るか?」
「分かった!」
「ワーグナー。お前は味方側に穴が出来た際、優先して補助に向かってくれ」
「了解。アンタは?」
「私は、敵を揺さぶってみる」
「ミネルヴァの件か?」
「ああ。もし『砂の嵐』がその事実を知らなければ、一時的に休戦が望めるかもしれん。上手く行けば、『砂の嵐』を味方側へ引き込める可能性もある」
「……分かった。アンタに任せるぜ」
クラウスはミネルヴァから得た情報を下に、『砂の嵐』の説得を試みる事を明かす。
それを聞いたワーグナーは険しい表情を見せながらも頷き、少年達と共に各方向へ散らばった。
それから数分間、待ち構える一同は息を飲みながら照準金具の向こうに見える景色を覗き見る。
ワーグナーは武器庫の左に位置する建物の影に身を潜め、耳を澄ませながら外周側を窺っていた。
「……!!」
その際、ワーグナーの耳に金属が擦れる高い音が聞こえる。
それが複数に重なって聞こえた時、ワーグナーは怒鳴りながら味方側に伝えた。
「下がれッ!!」
「!!」
ワーグナーはそう叫びながら建物の影から飛び出し、敷かれている防波堤の更に内側へ走る。
それと同時にワーグナーが隠れていた建物の向こう側から、円を描くように複数の小さな球体が投げ放たれた。
それを見た村の者達も目を見開き、遅れながらもワーグナーを追うように走る。
それから二秒にも満たない時間で、最前線とも言うべき防波堤に敵の爆弾が降り注ぎ、地面へ着いた。
敵の爆弾については村の者達にも情報共有されていたが、初めて見る爆弾が赤く光る様子で爆発の兆しを一目で理解できる。
投げ込まれた十数個の爆弾から全員が五メートル以上も離れ、それぞれが防波堤の内側に転がるように飛び込んだ。
とても投げ返せる数と量ではない為、少年達も躊躇せずに退避する。
すると五秒経過した爆弾達が、一気に赤い光を強めて爆発を起こした。
「うわっ!!」
「グッ!!」
再び爆発を見せた爆弾は、凄まじい爆風を全員に浴びせる。
辛うじて離れている防波堤は、爆風で揺れ動きながらも耐えられていた。
しかし間近に築かれていた建物や防波堤は爆発に巻き込まれ、その破片が爆風と共に襲い掛かる。
ほとんどは防波堤に阻まれる形で弾かれるか刺さるかに留まるが、即興で作った荒い防波堤では破片がすり抜けて来る。
幾人かに破片が刺さり、更に爆風で揺らぎ崩れた防波堤の素材が村人達に当たっていた。
ワーグナーやクラウスも爆風に耐えきり、共に舞う土埃に視界を遮られる。
それに合わせて二人は大声を放ち、村人達に声を向けた。
「……敵が来るぞッ!!」
「構えろッ!!」
「!」
二人は大声で状況を伝え、すぐに迎撃態勢を戻そうとする。
その声を聞いた村人達は小銃を再び持ち、防波堤越しに構え直そうとした。
しかし全員が迎撃態勢を戻す前に、各方角から銃声が鳴り響き始める。
それが敵からの発砲音だと思ったクラウス達だったが、思った以上に近い距離から聞こえる音ですぐに違うと判明できた。
鳴り響いているのは敵の発砲音ではなく、味方である村人達の発砲音。
クラウス達の声に反応した一部の村人が恐慌状態のまま銃を構え、敵がいると思しき場所へ発砲を開始し始めたのだ。
その銃声が呼び水となり、他の村人達も各方角へ発砲を開始し始める。
まだ土埃が晴れない中で味方のみが発砲するという状況に、クラウスは危うさを感じて再び叫んだ。
「発砲を止めろッ!!」
「えっ!?」
「敵は発砲をしていない! 恐らく、また――……!!」
クラウスは敵が発砲していない状況が何を意味するか察し、必死になって周囲の村人達の発砲音を止めさせようとする。
しかしその推測は悪い方向に当たり、味方の発砲音と土煙に紛れた中で小さな金属音が落下した事を、クラウスだけが気付いた。
「全員、もっと下がれッ!!」
「!?」
クラウスは負傷している右足に構わず、痛みを堪えながら立ち上がる。
そして全員に声を向けながら更に内側へ走り出し、今の位置から更に下がった。
それを聞いた幾人かはクラウスと共に下がったが、発砲音で聞き取れなかったり気付けなかった者達はその場に留まってしまう。
ワーグナーは微かに見えたクラウスの声と少年達の移動する様子を視界に捉え、彼等と同じように周囲の者達へ呼び掛けながら内側へ走った。
しかし今度は、避難も間に合わない。
クラウスが走り始めてから十秒後には、再び炸裂音と爆発が巻き起こる。
しかも一度目の退避で下がっていた防波堤が爆発で吹き飛び、その場に留まっていた者達はまともにその衝撃を受けてしまった。
「ぐわぁあああっ!!」
「うわぁっ!!」
ある者は起きた爆発を受けて様々な破片を浴びながら重度の火傷を負い、またある者は爆風で吹き飛んだ防波堤の大きな破片が身体の各所に刺さる。
クラウスと共に下がった村人達や少年達は辛うじて爆発からは免れたが、爆風の衝撃を受けて身体を倒し、地面に伏せながら必死に堪えた。
ワーグナーもまた強い爆風を受け、その背中に幾つかの破片が突き刺さる。
それによって地面へ倒れ、背中に感じる熱さと周囲の悲鳴を聞きながら表情を強張らせた。
そして爆風が治《おさ》まり、土煙が残る周囲の状況を見回すクラウスを上体を起こす。
僅かに見える光景には村人達が倒れる姿ばかりで、いずれも大なり小なり血を流す負傷を受けていた。
ワーグナーも背中に刺さる小さな破片をそのままに上体を起こし、痛みを我慢しながら立ち上がる。
そして地面に置いていた小銃を握り締め、クラウスが走っていた方向を見ながら呼び掛けた。
「……クソッ。クラウス、無事かっ!?」
「……ああっ!!」
「まずいよな、こりゃ……!?」
「……無事な者は、負傷した者達と共に下がれッ!!」
「!?」
「今度こそ、来るぞ……!!」
クラウスは起き上がりながら周囲に呼び掛け、次に起こる事も予測する。
既に村人達が築いた防波堤の最前列は決壊し、更に三十名余りいた村人達も半数以上が爆発の影響で死傷していた。
最初の爆発後では、すぐに村人達も迎撃の準備を行えて射撃さえも行って見せている。
しかし二回目の爆発で村人達の防衛網は崩れ、まともに銃を撃つ事も出来ない状況となってしまった。
これこそ、『砂の嵐』が作り出した状況。
村人達が迎撃不可能な状態へ追い込んでから、圧倒的な質量で踏み込み制圧する。
それを証明するように、土埃が舞う正面の空間から幾数十という軍靴を鳴らす音が、クラウスとワーグナーには聞こえていた。
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