虐殺者の称号を持つ戦士が元公爵令嬢に雇われました

オオノギ

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革命編 六章:創造神の権能

人形達の戦い

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 天界エデンで繰り広げられる戦いにおいて、ウォーリスの側近を務めている機械人間サイボーグアルフレッドとの戦いに変化が生じる。

 ケイルの師である武玄ブゲンから切り替わり、忍者シノビトモエがアルフレッドと対峙する。
 巧みに忍術と鍛え抜かれた体術で肉薄を可能としたトモエは、アルフレッドの高すぎる膂力を逆に利用し、右腕と両足の関節を外して魅せた。

 動きを封じられ背中を地面へ着けさせられたアルフレッドは、人工皮膚で覆われた右顔の表情を唖然とさせる。
 その顔を見下ろしながら左手の袖口から細長い鉄串を左手で取り出したトモエは、それをアルフレッドの左顔に突き向けながら告げた。

「これでしまいだ」

「……ふっ」

 トモエ気力オーラを纏わせた細い鉄串を左の義眼球に突き立て、その奥にあるだろう脳部分を破壊する。
 人体を正確に模倣された義体からだの急所を的確に、そして躊躇いも無くとどめを刺すトモエの行動は、忍者シノビとして完璧な所作と言ってもいい。

 しかし次の瞬間、トモエは仮面の隙間から見える瞳を僅かに見開く。
 それに対して表情を変化させたアルフレッドの右顔は、口を微笑ませた。

「これは……」

「……御見事、と言うべきでしょうね」

「!」

「私の義体からだをここまで破壊し追い詰めたのは、貴方が初めてだ。――……しかしこの義体からだは、私にとって義体からだの一つに過ぎない」

「……これも貴様にとっては、分身か」

「あぁ、それと――……離れなくてよろしいので?」

「!!」

 トモエは鉄串を突き立てたまま、対峙していたアルフレッドの違和感に気付く。
 そして唖然とした表情から突如として余裕を見せるアルフレッドの警告に、トモエは初めて悪寒を走らせた。

 左手を鉄串から離したトモエだったが、突如としてアルフレッドの身体が赤い輝きを放ち始める。
 それからコンマ五秒も経たない内に、アルフレッドの周囲にある空間が震えた。

 そして次の瞬間、アルフレッドの義体からだが巨大な赤い輝きを放って収束爆発せんこうを起こす。
 それは義体を中心とした半径百メートル以上を覆い、トモエ本人とその周囲に存在した黒い人形や影分身達が飲み込まれた。

ともえっ!!」

「なんだっ!?」

「シルエスカ様、御下がりをっ!!」

「ぐぬっ!?」

 黒い人形達と対峙していた武玄ブゲンを始め、元七大聖人のシルエスカとバリス、そして魔人ゴズヴァールが突如として起こった赤い爆発ひかりに気付く。
 そしてそれぞれに巻き起こる爆風に耐えながら黒い人形達を退け、一定の距離を離れながら状況を窺った。

 すると赤い爆発ひかりは五秒程で消失し、そこにある光景が明かされる。
 そこには爆発源であるアルフレッドの義体からだ魔鋼マナメタル部分だけ残され、巻き込まれた黒い人形達は倒れている姿が確認できた。
 
 しかし爆発源アルフレッドに最も近かったトモエや影分身の姿は無く、武玄ブゲンは目を見張りながら周囲を探る。
 そしてトモエを探すように、武玄ブゲンが僅かに焦りを見せながら呼び掛けた。

ともえ、何処だっ!? ……返事をせんかっ!!」

「……まさか、あの閃光に……?」

「これは……」

「……ッ」

 トモエを探す武玄ブゲンの荒々しい声を聞き、それぞれが状況を辛うじて察する。
 先程の爆発ひかりトモエを排除する為の攻撃であり、その試みが成功しているという可能性を全員が脳裏によぎらせたのだ。

 それでも生存の可能性を信じて呼び掛ける武玄ブゲンは、トモエを呼び続ける。
 しかしその可能性おもいを否定するように、傍に存在する黒い塔からある声が発せられた。

『――……どうやら、私の懸念は正しかったようだ』

「!」

天界ここまで私達を追って来た貴方達が、弱いはずがない。だからこそここの中から義体からだを操り、貴方達の戦力を見極めさせてもらった』

「……その声は……!!」

 塔から響き渡る声を聞き、武玄ブゲンは爆発を起こしたアルフレッドの義体からだに鋭い視線を向ける。
 そして黒い塔と交互に視線を交わした後、武玄ブゲントモエが気付いた事実に自身でも辿り着いた。

「……本体きさまは、そこか……!!」

『あの忍者ものが操っていた分身体が、数的に不利なお前達の現状を支えていた。……だがそれが居なくなった今、こちらは数で押し潰せばいい』

 武玄ブゲンはアルフレッドの本体が敵拠点とうの内部に居る事に気付き、憤りに近い感情を露にする。
 そうした感情すらも弄ぶように、現状で最も厄介だったトモエを排除したアルフレッドの本体は周囲を包囲させる黒い人形達を動かした。

 今まで数の不利をトモエの影分身で援護サポートされていた各々は、それ等の消失によって圧倒的な数の不利に至る。
 個人の能力ちからは圧倒的しながらも、破壊できない魔鋼マナメタルの人形と数百体に及ぶ包囲網は、疲弊しつつある全員を確実に追い詰めていた。

『何も成し得ぬまま、死ね』

「ッ!!」

「クッ!!」

 黒い人形達は大多数で包囲しながら、それぞれの者達に一斉に襲い掛かる。

 肝心のアルフレッド本体ほんにんが塔内部で隠れ潜み、それを討つ事が叶わぬ現状では、状況を逆転させるのは難しい。
 それを理解しながらも押し寄せる黒い人形達を退けるしかないすべがない彼等は、圧倒的に不利な状況で戦い続けるしか手段は無かった。

 そうして各々が勝利と敗北の思考を脳裏に濃厚とさせた瞬間、状況が再び変化する。
 それは黒い人形を上下左右に吹き飛ばしながら、襲われそうになる彼等を守るように周辺へ突き立てられた。

「ッ!?」

「な……っ!!」

「これは……魔法の岩石いわ!」

 武玄ブゲンやシルエスカ達が見たのは、白い地面や上空から降り注ぐ巨大な岩石いわの嵐。
 それ等が軽い魔鋼マナメタルの人形を吹き飛ばしながら四散させ、彼等を包囲していた態勢を再び狂わせた。

 それを見て驚く者達とは異なり、大岩の嵐を見ながら落ち着いた様子で見せる者もいる。
 それは魔人ゴズヴァールであり、その岩石いわの嵐を起こせる人物をよく知っていた為に、そうした呟きを見せながら上空うえを見上げた。

「やっと来たか。――……遅いぞッ!!」

「!」

『……奴等は……』

 ゴズヴァールは上空を見上げながらそう叫び、他の者達も上空に視線を向ける。
 すると自分達の上空に浮かぶ三つの人影を目にし、それぞれが驚きの表情を浮かべた。

 特に武玄ブゲンは安堵した表情を浮かべ、逆にシルエスカは複雑な感情を顔に浮かべながら睨む。
 そして塔内部から上空そこに浮かぶ者達を捉えたアルフレッドは、改めてその三人の姿を確認した。

 その中で最も目立つのは、青い法衣ローブと深々とした帽子を被った青髪の青年。
 彼は右手には青い魔石が嵌め込まれた長い錫杖つえを持ち、逆の左腕には黒い忍者シノビ装束を纏っていたトモエを抱えていた。 

 そしてもう一人は、黄色の法衣ローブを身に着けた白髪の老人。
 その右手には黄色い魔石が嵌め込まれた錫杖つえが握られ、それを黄金色に光らせながら宙に浮かぶ姿が見えた。
 
 そうして対象的な色合いを持つ法衣ローブを纏った二人は、互いに言葉を交える。

「――……テクラノス、やれるか?」

「問題ない、師父よ」

「ならば、我は向こうへ行く。――……頼んだぞ」

 黄色い法衣ローブを纏ったテクラノスに、青い法衣を纏った『青』が気を失っているトモエを託すように渡す。
 そして細い両腕に抱えられたトモエと共に、テクラノスは白い地面へ緩やかに降下した。

「――……ともえっ!!」

「無事だ。……お前達は、少し休んでいろ」

 すると武玄ブゲンが居る場に着地し、気を失っているトモエを引き渡す。
 安堵した様子を向ける武玄ブゲンに対して、テクラノスはそう呼び掛けながら錫杖の先で地面を突き、岩石の嵐を止めた。

 そして黒い塔に視線を向けながら、その内部に居るであろうアルフレッドに対して告げる。

「お前の相手は、儂がしよう」

『――……奴は確か、テクラノス……。……老いぼれた魔法師が、今更になって何が出来る?』

「儂は魔法師ではない。――……儂は大魔導師を師とする、魔導師の一人だ」

『!』

 煽るような口調で言葉を向けるアルフレッドに対して、テクラノスはそう言いながら再び錫杖の先で地面を叩く。
 するとその周囲に数多の魔法陣が形成され、そこから銀色の表面をした魔導人形ゴーレム達が転移してきたかのように召喚された。

 その数は百体近くにも及び、武玄ブゲンを始めとした者達は驚愕の表情を強める。
 そしてテクラノスはそれ等の魔導人形を操るように、錫杖つえを振りながら告げた。

「貴様の人形遊びも、ここまでだ」

『……奴等を殺せっ!!』

 テクラノスの言葉に対して、アルフレッドは再び黒い人形達に命令を飛ばす。
 そして散らばっていた者達がテクラノスの周囲へ集まるように移動し、銀色の魔導人形ゴーレムと共に態勢を整え直した。

 こうして機械人間サイボーグアルフレッドとの戦いは、次の段階へ移行する。
 魔導師テクラノスと彼が操る魔導人形ゴーレム達が戦線に加わり、戦力の『数』と『質』においての不利な状況を脱しようとしていた。
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