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革命編 七章:黒を継ぎし者
地獄の始まり
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ウォーリス=フロイス=フォン=ゲルガルド。
彼がルクソード皇国の女皇ナルヴァニア=フォン=ルクソードと、ゲルガルド伯爵家当主の間に生まれた息子であると知る者は、一定数は存在するだろう。
しかし彼自身の境遇や、その中で抱き続けた思想や感情を知る者は、かなり限られている。
そんなウォーリスの事を最も知るだろう唯一の人物達が、彼の真実について語り伝える。
それは絶望の環境に身を置き続けたウォーリスという人物が、父親へ反逆する為の道筋を自ら選び築いた物語でもあった。
『――……ウォーリス。貴方は私にとって、大事な……大事な宝物よ』
幼い頃のウォーリスが覚えているのは、そう囁きながら抱き締める母親の言葉と温もり。
その記憶だけが、これから先に起こる彼の絶望を支える希望になっていたと言ってもいい。
ウォーリスは幼さに見合わぬ程に優秀な子供であり、見目も母親に似て美しく清廉された少年だった。
それは皇族として育てられた優秀な母親によって教育されていたからでもあるが、それ以上に彼女から注がれる母親としての愛情が子供としての意欲を高めていたからでもある。
しかし相反するように、ウォーリスは父親であるゲルガルド伯爵を苦手としていた。
母親と違い好意的な言葉や愛情表現が乏しい父親は、自分がどのような事をしても喜ぶ様子を見せなかったからでもある。
母親はそんな父親の事について、不器用な人だからだとウォーリスに伝えていた。
そして父親にも、自分は愛されているのだと優しく語り掛けてくれる。
だからウォーリスは不愛想な父親に対しても尊敬を抱き、母の血を継ぐルクソード皇族として、そして伯爵家の息子として恥じぬようにと教育を受け続けた。
そしていつの日か、父親に認められ自分の成し得た事で喜ばれたいとも、子供心に漠然とした夢も抱いていた。
しかしウォーリスが五歳になった時に、その淡い夢は打ち砕かれる。
ある日、母親と過ごしていたウォーリスが、誕生日の祝宴で披露するを受けていた時。
珍しく父親の方から訪れ、ウォーリスを見下ろしながらこう告げたのだ。
『――……ウォーリス、私に付いて来なさい』
『あなた、どうしましたの? 今はこの子に、舞踏会の為の練習を……』
『舞踊の練習は後だ、ナルヴァニアよ。……これは、我が伯爵家に伝わる習わしでもある』
『習わし……?』
『そしてこれは、ルクソード皇族の秘術にも纏わる事でもあるのだ。皇族のお前にとっても、無関係な話ではない』
『まぁ……。では、私もウォーリスと一緒に』
『いや、これは男児にだけ伝えるモノだ。我が家に伝わる古い習わし故に、お前はここで待っていてくれ』
『そうですか。……分かりました。ウォーリス、着替えてから御父様に付いて行きなさい』
『は、はい』
母親と父親がそうした会話を行った後、ウォーリスは舞踊の練習を止めて練習用の衣服から普段着の礼服に着替える。
そして父親に付いて行きながら広間を出ると、そのまま執事達や侍女達も伴わぬまま屋敷の外へと出て行った。
従者も無く屋敷から出る事になったウォーリスは、何も語らない父親に対して奇妙な感覚を抱く。
しかし普段からそうした様子だった為に、特に問い掛けるような言葉もなく黙って付いて行った。
すると屋敷の敷地内にある庭園の中に、二人は入室する。
そこには母親が植え育てた薄紅色の雛菊も咲いており、それを視線に止めた父親が足を止めて疑問を零した。
『……この花は、誰か植えたのだ?』
『あっ。それは母上が御捜しになり、御育てになっている花です』
『ナルヴァニアが? ……何故、この花を?』
「なんでも、母上の御母親……御婆様の遺品に刻まれていた、刺繍の花だと聞いています』
『……なるほど、遺品とはな。……実の家族を処刑した負い目でも感じていたようだな、あの皇王は』
『え?』
そう呟きながら口元を微笑ませる父親の言葉に、ウォーリスは意味を理解できずに首を傾ける。
しかし雛菊から興味を失くすように視線を逸らしたゲルガルドはそのまま奥へと足を進め、ウォーリスはその疑問も解消されないまま付いて行った。
そして庭園の奥に存在する生垣の前に立ったゲルガルドは、そこである言葉を口遊む。
それはウォーリスの知る言語に当て嵌まらぬ言葉であり、それと同時に生垣が振動も無く間を避けながら開かれた。
更に地面の下からは、鉄の大扉が出現する。
それが左右に開かれながら地下に続く階段が出現すると、流石のウォーリスも動揺しながら言葉を零した。
『こ、これって……父上っ!?』
『黙って、付いて来なさい』
『!』
厳かな声と表情でそう命じる父親は、そのまま開かれた地下の潜るように降りていく。
未知の技術と知らぬ場所へ導かれる事を察したウォーリスは、幼心に恐怖心を抱きながらも、見知った父親が共にいるという僅かな安堵が自身の足を地下へ進めさせた。
それから二人が地下の入り口を通った後、出入り口だった鉄扉は自動的に閉じられる。
不安気に閉まる鉄扉を見上げていたウォーリスだったが、更に下へ続く階段の周囲に明かりが灯り、降りるのに不便が無い明度を保っていた。
そして何も言わずに先導する父親の背中を追い、ウォーリスも階段を慎重に降りていく。
それから五分ほど階段を降り続けた後、二人は薄暗くも広い空間へ歩み出て来た。
すると暗い空間へ訪れた父親は、誰かに呼び掛けるように声を向ける。
『アルフレッド。照明を点けろ』
『――……はい、ゲルガルド様』
『!』
薄暗い周囲から響く奇妙な声に、ウォーリスは驚きを浮かべる。
そして薄暗かった周囲から照明が付き、その全容を全て照らしながら地下空間の全容をウォーリスの視界に明かした。
そこは現代の人間大陸において、そして帝国の文明においても、決して見られぬ景色。
数々の科学技術によって建設された地下施設と、その施設内部に収められた巨大な試験管に詰められたホルマリン漬けの生物達。
その悍ましい光景に流石のウォーリスも血の気を引かせながら後退り、父親に対して再び呼び掛けた。
『ち、父上! ここは、いったい何なんですかっ!?』
『黙っていろ』
『!?』
『お前はただ、私の命令に従えばいい。……それ以外の事を、許すつもりは無い』
『……!!』
『付いて来い。……それもできなければ、お前も実験動物のように扱うだけだ』
今まで厳かなだけだったはずの父親の声が、突如として冷淡さを宿した事をウォーリスは察する。
そして自分に向けられている視線が、まるで所有物を見下すような表情である事を理解した。
そんな表情の変化を機敏に感じ取った後、父親は振り返りながら歩み始める。
するとウォーリスは父親に対する恐怖心を増大させながらも、自らの意思でその背中を追った。
そして更に奥へ進んだ二人は、ある巨大な試験管が安置された部屋に辿り着く。
そこには人間と思しき脳髄の形を模した黒い金属が青い薬液の中に漬けられている光景が、幼いウォーリスにも見えた。
するとその試験管の周囲から赤い光が灯りながら、再びあの声が聞こえて来る。
『――……再び、御子息を御連れになったのですね。ゲルガルド様』
『そうだ。だがコレは、ただの容れ物ではない。世界の鍵と成り得る、肉体かもしれん』
『……え?』
脳髄を収めた試験管から発せられる声と、父親の言葉を聞いた時、ウォーリスはその言葉の意味を理解できぬまま、表情を強張らせる。
しかしそんなウォーリスを見ながら微笑む父親は、今までに見せた事の無い邪悪な笑みで息子に声を向けた。
『紹介しよう。彼はアルフレッド、私に仕える忠実な駒だ』
『!』
『そして今からお前に、ある実験を行う。――……もしそれが成功した暁には、今日からお前が私になるのだ。ウォーリス』
『……僕が、父上になる……?』
『お前の母親は、創造神の血族に連なる者。それを手に入れる為に、少々回りくどいやり方もしたが。……こうして私の血と創造神の血が交わったお前が生まれた事は、まさに奇跡だと言ってもいい』
『……何を、言ってるんですか……。父上……!』
父親の言葉を理解できないウォーリスは、首を横に振りながら足を後退らせる。
そんなウォーリスの様子に鋭い視線を向けたゲルガルドは、アルフレッドに呼び掛けた。
『アルフレッド。始めてくれ』
『はい。――……ウォーリス様、暫しの御辛抱を』
『い、嫌だ……。――……な、なんだ……これっ!!』
父親の言葉に応じるアルフレッドは、周囲の施設から複数の黒い人形達を生み出す。
それが幼いウォーリスを取り囲むように動き、背後の退路を断ちながらその幼い身体を抑え込んだ。
取り押さえられたウォーリスは幼く未熟な身体では抗えず、悲痛な声を父親に向ける。
『は、離せっ!! ……父上、なんでこんなっ!?』
『これも、私が世界を手に入れる為だ』
『……世界を、手に入れる……!?』
『その鍵に、お前は成り得るかもしれない。――……さぁ、連れて行け』
『はい』
『は、離せっ!! ――……母上! 母上ぇえっ!!』
唖然とするウォーリスを拘束する人形達は、そのままある地下施設までウォーリスを連行する。
そして父親が述べる目的も実験の意味も分からぬまま、ウォーリスはそこで数年の日々を過ごす事になった。
その間、父親は屋敷に戻り、ウォーリスの母親であるナルヴァニアを屋敷から追い出す。
その理由は、ルクソード血族の秘術をウォーリスが継げなかったと伝え、ナルヴァニアがルクソード皇族ではないという真実を突いたモノであった。
それから母親と引き離されたウォーリスには、地獄の日々が始まる。
創造神の血族として天界を開く『鍵』となれるかという実験により、僅か五歳のウォーリスは語るも恐ろしい実験を繰り返され続けた。
彼がルクソード皇国の女皇ナルヴァニア=フォン=ルクソードと、ゲルガルド伯爵家当主の間に生まれた息子であると知る者は、一定数は存在するだろう。
しかし彼自身の境遇や、その中で抱き続けた思想や感情を知る者は、かなり限られている。
そんなウォーリスの事を最も知るだろう唯一の人物達が、彼の真実について語り伝える。
それは絶望の環境に身を置き続けたウォーリスという人物が、父親へ反逆する為の道筋を自ら選び築いた物語でもあった。
『――……ウォーリス。貴方は私にとって、大事な……大事な宝物よ』
幼い頃のウォーリスが覚えているのは、そう囁きながら抱き締める母親の言葉と温もり。
その記憶だけが、これから先に起こる彼の絶望を支える希望になっていたと言ってもいい。
ウォーリスは幼さに見合わぬ程に優秀な子供であり、見目も母親に似て美しく清廉された少年だった。
それは皇族として育てられた優秀な母親によって教育されていたからでもあるが、それ以上に彼女から注がれる母親としての愛情が子供としての意欲を高めていたからでもある。
しかし相反するように、ウォーリスは父親であるゲルガルド伯爵を苦手としていた。
母親と違い好意的な言葉や愛情表現が乏しい父親は、自分がどのような事をしても喜ぶ様子を見せなかったからでもある。
母親はそんな父親の事について、不器用な人だからだとウォーリスに伝えていた。
そして父親にも、自分は愛されているのだと優しく語り掛けてくれる。
だからウォーリスは不愛想な父親に対しても尊敬を抱き、母の血を継ぐルクソード皇族として、そして伯爵家の息子として恥じぬようにと教育を受け続けた。
そしていつの日か、父親に認められ自分の成し得た事で喜ばれたいとも、子供心に漠然とした夢も抱いていた。
しかしウォーリスが五歳になった時に、その淡い夢は打ち砕かれる。
ある日、母親と過ごしていたウォーリスが、誕生日の祝宴で披露するを受けていた時。
珍しく父親の方から訪れ、ウォーリスを見下ろしながらこう告げたのだ。
『――……ウォーリス、私に付いて来なさい』
『あなた、どうしましたの? 今はこの子に、舞踏会の為の練習を……』
『舞踊の練習は後だ、ナルヴァニアよ。……これは、我が伯爵家に伝わる習わしでもある』
『習わし……?』
『そしてこれは、ルクソード皇族の秘術にも纏わる事でもあるのだ。皇族のお前にとっても、無関係な話ではない』
『まぁ……。では、私もウォーリスと一緒に』
『いや、これは男児にだけ伝えるモノだ。我が家に伝わる古い習わし故に、お前はここで待っていてくれ』
『そうですか。……分かりました。ウォーリス、着替えてから御父様に付いて行きなさい』
『は、はい』
母親と父親がそうした会話を行った後、ウォーリスは舞踊の練習を止めて練習用の衣服から普段着の礼服に着替える。
そして父親に付いて行きながら広間を出ると、そのまま執事達や侍女達も伴わぬまま屋敷の外へと出て行った。
従者も無く屋敷から出る事になったウォーリスは、何も語らない父親に対して奇妙な感覚を抱く。
しかし普段からそうした様子だった為に、特に問い掛けるような言葉もなく黙って付いて行った。
すると屋敷の敷地内にある庭園の中に、二人は入室する。
そこには母親が植え育てた薄紅色の雛菊も咲いており、それを視線に止めた父親が足を止めて疑問を零した。
『……この花は、誰か植えたのだ?』
『あっ。それは母上が御捜しになり、御育てになっている花です』
『ナルヴァニアが? ……何故、この花を?』
「なんでも、母上の御母親……御婆様の遺品に刻まれていた、刺繍の花だと聞いています』
『……なるほど、遺品とはな。……実の家族を処刑した負い目でも感じていたようだな、あの皇王は』
『え?』
そう呟きながら口元を微笑ませる父親の言葉に、ウォーリスは意味を理解できずに首を傾ける。
しかし雛菊から興味を失くすように視線を逸らしたゲルガルドはそのまま奥へと足を進め、ウォーリスはその疑問も解消されないまま付いて行った。
そして庭園の奥に存在する生垣の前に立ったゲルガルドは、そこである言葉を口遊む。
それはウォーリスの知る言語に当て嵌まらぬ言葉であり、それと同時に生垣が振動も無く間を避けながら開かれた。
更に地面の下からは、鉄の大扉が出現する。
それが左右に開かれながら地下に続く階段が出現すると、流石のウォーリスも動揺しながら言葉を零した。
『こ、これって……父上っ!?』
『黙って、付いて来なさい』
『!』
厳かな声と表情でそう命じる父親は、そのまま開かれた地下の潜るように降りていく。
未知の技術と知らぬ場所へ導かれる事を察したウォーリスは、幼心に恐怖心を抱きながらも、見知った父親が共にいるという僅かな安堵が自身の足を地下へ進めさせた。
それから二人が地下の入り口を通った後、出入り口だった鉄扉は自動的に閉じられる。
不安気に閉まる鉄扉を見上げていたウォーリスだったが、更に下へ続く階段の周囲に明かりが灯り、降りるのに不便が無い明度を保っていた。
そして何も言わずに先導する父親の背中を追い、ウォーリスも階段を慎重に降りていく。
それから五分ほど階段を降り続けた後、二人は薄暗くも広い空間へ歩み出て来た。
すると暗い空間へ訪れた父親は、誰かに呼び掛けるように声を向ける。
『アルフレッド。照明を点けろ』
『――……はい、ゲルガルド様』
『!』
薄暗い周囲から響く奇妙な声に、ウォーリスは驚きを浮かべる。
そして薄暗かった周囲から照明が付き、その全容を全て照らしながら地下空間の全容をウォーリスの視界に明かした。
そこは現代の人間大陸において、そして帝国の文明においても、決して見られぬ景色。
数々の科学技術によって建設された地下施設と、その施設内部に収められた巨大な試験管に詰められたホルマリン漬けの生物達。
その悍ましい光景に流石のウォーリスも血の気を引かせながら後退り、父親に対して再び呼び掛けた。
『ち、父上! ここは、いったい何なんですかっ!?』
『黙っていろ』
『!?』
『お前はただ、私の命令に従えばいい。……それ以外の事を、許すつもりは無い』
『……!!』
『付いて来い。……それもできなければ、お前も実験動物のように扱うだけだ』
今まで厳かなだけだったはずの父親の声が、突如として冷淡さを宿した事をウォーリスは察する。
そして自分に向けられている視線が、まるで所有物を見下すような表情である事を理解した。
そんな表情の変化を機敏に感じ取った後、父親は振り返りながら歩み始める。
するとウォーリスは父親に対する恐怖心を増大させながらも、自らの意思でその背中を追った。
そして更に奥へ進んだ二人は、ある巨大な試験管が安置された部屋に辿り着く。
そこには人間と思しき脳髄の形を模した黒い金属が青い薬液の中に漬けられている光景が、幼いウォーリスにも見えた。
するとその試験管の周囲から赤い光が灯りながら、再びあの声が聞こえて来る。
『――……再び、御子息を御連れになったのですね。ゲルガルド様』
『そうだ。だがコレは、ただの容れ物ではない。世界の鍵と成り得る、肉体かもしれん』
『……え?』
脳髄を収めた試験管から発せられる声と、父親の言葉を聞いた時、ウォーリスはその言葉の意味を理解できぬまま、表情を強張らせる。
しかしそんなウォーリスを見ながら微笑む父親は、今までに見せた事の無い邪悪な笑みで息子に声を向けた。
『紹介しよう。彼はアルフレッド、私に仕える忠実な駒だ』
『!』
『そして今からお前に、ある実験を行う。――……もしそれが成功した暁には、今日からお前が私になるのだ。ウォーリス』
『……僕が、父上になる……?』
『お前の母親は、創造神の血族に連なる者。それを手に入れる為に、少々回りくどいやり方もしたが。……こうして私の血と創造神の血が交わったお前が生まれた事は、まさに奇跡だと言ってもいい』
『……何を、言ってるんですか……。父上……!』
父親の言葉を理解できないウォーリスは、首を横に振りながら足を後退らせる。
そんなウォーリスの様子に鋭い視線を向けたゲルガルドは、アルフレッドに呼び掛けた。
『アルフレッド。始めてくれ』
『はい。――……ウォーリス様、暫しの御辛抱を』
『い、嫌だ……。――……な、なんだ……これっ!!』
父親の言葉に応じるアルフレッドは、周囲の施設から複数の黒い人形達を生み出す。
それが幼いウォーリスを取り囲むように動き、背後の退路を断ちながらその幼い身体を抑え込んだ。
取り押さえられたウォーリスは幼く未熟な身体では抗えず、悲痛な声を父親に向ける。
『は、離せっ!! ……父上、なんでこんなっ!?』
『これも、私が世界を手に入れる為だ』
『……世界を、手に入れる……!?』
『その鍵に、お前は成り得るかもしれない。――……さぁ、連れて行け』
『はい』
『は、離せっ!! ――……母上! 母上ぇえっ!!』
唖然とするウォーリスを拘束する人形達は、そのままある地下施設までウォーリスを連行する。
そして父親が述べる目的も実験の意味も分からぬまま、ウォーリスはそこで数年の日々を過ごす事になった。
その間、父親は屋敷に戻り、ウォーリスの母親であるナルヴァニアを屋敷から追い出す。
その理由は、ルクソード血族の秘術をウォーリスが継げなかったと伝え、ナルヴァニアがルクソード皇族ではないという真実を突いたモノであった。
それから母親と引き離されたウォーリスには、地獄の日々が始まる。
創造神の血族として天界を開く『鍵』となれるかという実験により、僅か五歳のウォーリスは語るも恐ろしい実験を繰り返され続けた。
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