虐殺者の称号を持つ戦士が元公爵令嬢に雇われました

オオノギ

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終章:エピローグ

選択の道

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 アルトリアが新造した船内を案内されるエリク達は、ある程度まで居住区を見回り終える。
 すると来た時とは別の場所に設けられた昇降口エレベーターに乗り、三階に訪れた。

 開かれた自動扉の先へ赴いた三人に対して、アルトリアは改めて説明を始める。

「――……ここが三階の、艦橋ブリッジよ」

「……ここも外か……? いや、違うな……」

「全方位を映し出す全周囲映像モニターよ。そしてあそこが操縦席。ただ操縦系統はほとんど魔導人形ゴーレムに命令を出せば自動的に飛んでくれるから、操縦席ここに座る場合は緊急時に操縦を行う為になるわね」

「……向こうの扉は?」

「一階に戻るのが億劫な場合の仮眠室よ。あと非常用階段もあるし、色々と飲み物や食べ物が入ってる冷蔵庫もあるわ。あっ、家にも冷蔵庫や冷凍庫はあるから安心しなさい」

「そこまで聞いてねぇよ」

「他にも機能はあるんだけど、貴方達が使いそうな場所は大体こんな感じね。どう、私が作った船内ふねの感想は?」

 自信満々な様子を浮かべながら感想を求めるアルトリアに、全員が顔を見合わせる。
 すると改めて口を開いたケイルが、自身の感想を述べた。

「一階に、無駄なモンしかねぇ」

「無駄じゃないでしょ!」

「畑とか家畜とか、アタシ等で育てるのかよ?」

「それも魔導人形ゴーレムがやってくれるわ。種蒔きから収穫、家畜の世話は全部やってくれるから。安心なさい」

「……お前、やってる事が別未来みらいの時と大差ねぇぞ」

「しょうがないでしょ、人を雇って船員クルーにするわけにもいかないし。緊急時には私達が自力で対処するしかないんだから、船内ふねの事は魔導人形ゴーレムに任せるしかないわ。それとも、貴方が整備も操縦も全部やってみる?」

「いや、まぁ。確かにそうなんだが……」

 船内の状況を見て納得し切れないケイルは、微妙な面持ちを浮かべて悩む。
 そして代わるようにマギルスが手を上げ、アルトリアに問い掛けた。

「ねぇねぇ、遊ぶ場所とかないの?」

「遊ぶ場所? あぁ、訓練用の場所ってこと?」

「うん!」

「それだったら一階部分を拡張すれば作れるから。少し待ちなさい」

「わーい! じゃあ、後で探検していい?」

「いいけど、機械類には触るんじゃないわよ。あと魔導人形ゴーレムを壊したり作業の邪魔しないようにね」

「はーい」

 マギルスの質問に答えると、アルトリアは改めてエリクに視線を向ける。
 そして自身から質問し、エリクに何かしらの要望が無いか聞いた。
 
「エリクはどう? 何か足りないモノとかある?」

「……いや、大丈夫だ。……ただ、聞いていいか?」

「なに?」

「この飛行船ふねで、どこまで魔大陸を行けると思う?」

 そう尋ねるエリクの言葉に、それぞれの表情に僅かながらも緊張が走る。
 すると解答を求められたアルトリアは、僅かに息を零しながら伝えた。

「……そうね。良くて、目的地の半分までかしら」

「!」

私の母親メディアからは聞いてると思うけど。アイツの実力ちからでさえ、魔大陸では何度も死んでる。今のアイツ以上の強さを持った魔族……その実力者達が、確かにいるのよ」

「……っ」

「この飛行船ふねも、どちらかと言えば戦闘用としてより隠密性に秀でた設計と性能にしてるわ。可能な限り魔大陸の怪物達や魔族達との対立を避けながら、目的地を目指すつもり」

「目的地……ヴェルズ村という場所か」

「ええ。メディアアイツの話だと、そこにアイリという少女が匿われてるはず。――……私達の目的は、その少女アイリが眠り続けている原因を調査すること。もう一つは、その少女アイリが眠り続けている原因かもしれない『世界の歪み』の正体を探ること。この二つよ」

「ああ」

 改めてアルトリアは魔大陸に向かう理由と目的を説明し、他の三名はそれに応じるように頷く。
 そうした頷きを見た彼女は、僅かに渋る様子を強めながらある事を伝えた。

「でも一つだけ。その『世界の歪み』について、皆にも私の仮説を聞いて欲しいの」

「仮説……?」

「あくまで仮説よ、だから本当はそうじゃないかもしれない。それだけは頭に入れておいて欲しいんだけど……」

「なんだよ、言ってみろよ」

「……恐らくだけど。眠り続けている『少女アイリ』と『世界の歪み』は、同一の存在……あるいは、対となる存在なのかも」

「!」

「『少女アイリ』は自分という存在を代償として『世界の歪み』を消した。その結果、『少女』の記憶は世界から消えてしまった。そういう話だったわよね」

「確か、管理施設むこうの『白』がそんな事を言ってたな」

「でも、どうして『少女アイリ』は自分の存在を代償にしなければいけなかったの? そして何故、それが自分に関する記憶を世界から消し去ることだったの? ……私はそれが、ずっと疑問だった」

「……おい、まさか……!」

「そう。私が立てた仮説は、『少女アイリ』が『世界の歪み』そのものだったか。あるいは『歪みそれ』と対となる存在で、自分の存在そのものを世界から忘却させることで、対となる『歪み』そのものを世界から忘却させた。そのどちらかの可能性が高いと、私は考えてる」

「……それじゃあ、そのアイリって奴を起こしたら……」

「『世界の歪み』も、同時に起きるのかもしれない。……そうなったら、『黒』が予言していた世界の滅びが起こるかも」

「!!」

「私達は『世界の歪み』が何なのか、詳細が掴めていない。だからそれ以上の事を予測できない。正直、そんな事が起こるくらいなら『少女そいつ』なんて起こさない方がいいんだろうけど。……でも魔大陸では、私達が渡してしまった結晶クリスタルで、『少女アイリ』を思い出した連中が動き出してしまっている」

「……魔大陸の連中が、『少女そいつ』を起こしちまうかもしれないってことか」

「ええ。……あれから四年、特に人間大陸こちらに変化は無いわ。でも魔大陸側では各勢力に変動が起きていると、メディアから情報が有った」

「!」

「その主だった変動うごきの中心人物達は、魔大陸の王者達。しかも『少女アイリ』とは顔見知りだったみたいね。もしそいつ等の中に創造神オリジン権能ちからを知っている奴等がいて、『少女アイリ』を起こす手段として権能それを奪う為に人間大陸ここに攻め込んで来るかもしれない」

「おい……!!」

「これも確定ではなく、悪い予想でしかない。……でも、もしそれが的中した時。今の人間大陸に、魔大陸の王者達が乗り込んで来たら。誰も相手にならないわ」

「……ッ」

 アルトリアは自身の予測を伝えながら、メディアを通じて【始祖の魔王ジュリア】から得られた『少女アイリ』に纏わる情報を話す。
 それによって高まる緊張した場において、アルトリアはそうした未来を防ぐ為の新たな提案を伝えた。

「そうした状況にしない為にも、私から提案があるの」

「提案?」

「提案と言うより、これは選択ね。そして、どちらも無茶な選択になるわ」

「なんだよ、無茶な選択って……」

 渋る様子を強めるアルトリアに、全員が訝し気な様子を強める。
 すると小さな溜息を口から漏らした後、彼女は二つの選択肢を伝えた。

「一つ目の選択は、魔族達に保護されてる『少女アイリ』を奪うこと」

「!?」

「『少女アイリ』を起こさせないように攫って、別の場所に隠す。……そして、殺す」

「おいおい……!!」

「『少女アイリ』が死ねば、『世界の歪み』そのものも消滅するかもしれない。ただこの場合、もし人間わたしたちがそれに関与してるのがバレたら。『少女アイリ』を慕って起こそうとしてる魔族勢力と確実に敵対してしまう。そして下手をすれば、人間大陸を巻き込んだ第三次人魔大戦が始まってしまうかも」

「そんなことになっちまったら、本末転倒だろっ!?」

「ええ。だからこそ、第二の選択も考えたのよ。……でもそれは、もっと難しい手段かも」

「……なんだよ、その手段って?」

第二の選択それは……魔大陸の各王者達に協力を仰いで、『少女アイリ』と『世界の歪み』について解決すること」

「!」

「正直、これが無難な策なんだけど。……魔大陸は人間大陸と比べ物にならないくらい広大らしいし、各王者達も魔族の到達者エンドレスがほとんど。仮に交渉が決裂してしまったら、そいつ等と正面から争う事になってしまう」

「……魔族と、交渉か……」

「だから最初に、味方になってくれそうな魔族の王者達と接触する必要があるわ。……例えば、前に会った『魔神王デーモンキング』とかね」

「!」

「『魔神王デーモンキング』ジャッカスを基点にして、魔大陸の王者達と交渉できるようにする。それが一番、この状況では無難ベターな手段よ。……成功するかは、ともかくね」

 自身の話す選択に嘲笑を零すアルトリアは、僅かに伏せた顔を上げて目の前の三人に顔を向ける。
 すると背筋を伸ばし、改めて三人に問い掛けた。

一つ目の選択肢殺すのと、二つ目の選択肢交渉。貴方達は、どっちをやるべきだと思う?」

「……そんなの、決まってるだろ」

「ああ」

「そうだね」

「――……二つ目交渉だ」

「……分かったわ」

 三人が口を揃えて伝える回答に、アルトリアは安堵の微笑みを浮かべる。
 そして改めて、それぞれの顔に視線を向けながら言葉を続けた。

「それじゃあ、最初の目的に二つ目の選択肢それも加えるわ。私達は魔大陸に行って、まず最初にヴェルズ村に居る『魔神王デーモンキング』ジャッカスと会う。その協力を得て、『少女アイリ』を目覚めさせようとしている魔大陸の王者達と交渉する。それと並行して、『世界の歪み』についても調査して原因を突き止めて、なんとか解決する。それでいいわね?」

「ああ」

「了解」

「オッケー!」

「なら、今から出発するわ。みんな、準備は――……ッ!?」

「ッ!!」

「――……話し合いは、終わったみたいだね?」 

 出発する為に後ろの操縦席ざせきへ身体の正面を向けたアルトリアだったが、そこには既に一人の人物が座っている事に気付く。
 するとエリク達もそれに気付きながら驚き、そんな彼等に親し気な声が向けられた。

 操縦席そこに座っているのは、銀髪紅眼のメディア。
 そしてその床には、傷だらけのまま気絶している狼獣族エアハルトが寝かされていた。
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