腹黒薬師は復讐するために生きている

怜來

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隣国 アンリー

隣国 アンリー③

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「いただきます」

手を合わせパンを口の中に放り込む。ほのかな風味が口の中を漂う。

「美味しい~おばさん、このパン美味しいです!」

「ありがとよ。この店で一番人気のパンだからな」

「滅茶苦茶美味いです。最高」

「そこまで褒めてくれるなんてありがたいな」

おばさんは照れくさそうに言う。

いい匂いのする方へ歩くとパン屋があり、つい美味しそうで買って食べていた。

おばさんはシャリングに一つおまけでパンを渡した。

「これ友達にも食べさせてあげたいのであと二ついいですか?」

「ああ、いいよ。友達に買っていくなんて優しいな」

「色々とお世話になっているので」

お財布を取り出しながら話す。さっき気づいたがこの国の名前はアンリーでシャルバリーと同じ金銭を扱っている。

それはそれで良かったなとホッとしている。

「はいどうぞ。また一つオマケしておいたからね」

ウインクして言う。シャリングはお礼を言いながら店を出た。外はまだまだ明るい。集合時間まで時間がある。

ふらついて時間を潰そうと思い適当に街をぶらついた。人々は楽しそうに過ごしていた。

この国の本当の素顔を知らずに。時には知らない方がいい事もあるもんだなと一人関心している。

すると周りにいた人たちがざわつき始める。何か言っているがよく聞こえなかった。

その時後ろから馬の足音がする。振り向くと大勢の人を連れたものが現れた。

みんな腰には剣を指している。それを見てすぐに察した。これは騎士団だろう。先頭で走っていた男が馬から降りる。

人々は歓声を上げている。そして、どこからか聞いたことのある名前が聞こえた。

「サンザリカ様!お帰りなさいませ!」

「サンザリカ様!」

みんなその男に近づいていく。シャリングはその名を聞いた途端手に持っていたパンの袋を落とした。

今みんななんと言った?サンザリカ?もしかして…あのサンザリカなのか?

混乱していると背後から誰かが現れた。そこにはさっきのパン屋のおばさんが立っていた。

「ああ、サンザリカ様だ。今日お帰りになられたのね」

「あ、あの……あの人って英雄かなんかですか?」

「知らないのかい?最近の子は知らないか。十年くらい前に、この国にある二人の夫婦が来てな。その二人は急にこの国の王はとんでもないことをしていると言ってね。噂によるとこの国には大きな牢屋みたいなのがあってそこにはたくさんの人が囚われていると言ったらしいのさ。人々はそれを信じて混乱に陥ってしまったんだ。けどサンザリカ様が夫婦は嘘をついているといい二人を捕え人々を救ったんだとよ」

その話を聞きすぐに分かった。その夫婦もあの建物を見たんだと。そして危険を感じてみんなに言ったのだと。

けれど、結局それはあの建物のリーダーに見つかってしまったのだと。

カナリヤ達と同じようにあの建物を知った人達がいるのは初めてだった。
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