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第弐章──過去と真実──
死せる君と。陸話
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突然円谷の門を叩く者が現れた。舞子と再会した街の郵便局で働く青年である。女中の桃に連れられ執務室まで来た彼は少し息が荒れている。
「あら、此処まで来てくださって有難う。でも手紙なら彼処で受け取ったのに」
「本日此処に伺ったのは手紙の事ではございません!」
肩で息をする彼は慌てていたが、私は冷静を装って席へ案内する。開口一番彼はある事を告げた。
「舞子様が殺害されました」
「そうなのね…」
そう呟き俯く。彼はきっと妹の死を悼む憐れな姉とでも思っているのだろう。
私は円谷家の一人娘として生まれ育てられ、器量が良く何でも熟すが性格に難があった。其れは動物への嗜虐癖である。最初は蟻を潰すような些細な事だったが、次第に鼠や鳩、猫等を痛めつけて嫌がる姿を見たり、腹を切って内臓を引きずり出したり、手脚を捥いだりして殺すことに快感を覚えていた。
流石に危ないと思ったのか、遠い親戚から幼い舞子を養子として迎え入れ私の妹とした。両親はこれで私の嗜虐癖を抑えようとしたのだ。実際其の判断は正しかったと言える。六個年の離れた初めての妹は可愛くて仕方なく、何処に行く時も一緒で、私は本当の妹の様に思っていた。そして何時しか動物への嗜虐は無くなっていたが、嗜虐心は或る切欠で再び蘇る事になる。
円谷家を継ぐ私に代わって舞子が櫻桃家の御曹司と婚約する事になった。とある企業の社長で、父親の直属の上司であった彼は息子の朔夜の婚約者に舞子を推薦したのだ。舞子は泣いて嫌がったらしいが父親は断り切れなかった。そんな時事件が起こる。私が偶然家に居ない間、朔夜が舞子を襲いかけて殺そうとしたと言うのだ。其の話を母と桃から聞いた時、私の中である感情が沸き上がってきた。
人って死ぬ時何の様な顔をするのかしら
此の地に生ける者として有るまじき感情。だが、私の中で眠っていた本来の自分が目を醒まし、禍々しい渦を巻いて私の心を支配している。もう誰にも私を止めることは出来ないだろう。顔は辛うじて平生を保っていたが、裏は期待と好奇で充ちており、今直ぐにでも絶望と苦痛に滲む顔を見たくて堪らなかった。
「あら、此処まで来てくださって有難う。でも手紙なら彼処で受け取ったのに」
「本日此処に伺ったのは手紙の事ではございません!」
肩で息をする彼は慌てていたが、私は冷静を装って席へ案内する。開口一番彼はある事を告げた。
「舞子様が殺害されました」
「そうなのね…」
そう呟き俯く。彼はきっと妹の死を悼む憐れな姉とでも思っているのだろう。
私は円谷家の一人娘として生まれ育てられ、器量が良く何でも熟すが性格に難があった。其れは動物への嗜虐癖である。最初は蟻を潰すような些細な事だったが、次第に鼠や鳩、猫等を痛めつけて嫌がる姿を見たり、腹を切って内臓を引きずり出したり、手脚を捥いだりして殺すことに快感を覚えていた。
流石に危ないと思ったのか、遠い親戚から幼い舞子を養子として迎え入れ私の妹とした。両親はこれで私の嗜虐癖を抑えようとしたのだ。実際其の判断は正しかったと言える。六個年の離れた初めての妹は可愛くて仕方なく、何処に行く時も一緒で、私は本当の妹の様に思っていた。そして何時しか動物への嗜虐は無くなっていたが、嗜虐心は或る切欠で再び蘇る事になる。
円谷家を継ぐ私に代わって舞子が櫻桃家の御曹司と婚約する事になった。とある企業の社長で、父親の直属の上司であった彼は息子の朔夜の婚約者に舞子を推薦したのだ。舞子は泣いて嫌がったらしいが父親は断り切れなかった。そんな時事件が起こる。私が偶然家に居ない間、朔夜が舞子を襲いかけて殺そうとしたと言うのだ。其の話を母と桃から聞いた時、私の中である感情が沸き上がってきた。
人って死ぬ時何の様な顔をするのかしら
此の地に生ける者として有るまじき感情。だが、私の中で眠っていた本来の自分が目を醒まし、禍々しい渦を巻いて私の心を支配している。もう誰にも私を止めることは出来ないだろう。顔は辛うじて平生を保っていたが、裏は期待と好奇で充ちており、今直ぐにでも絶望と苦痛に滲む顔を見たくて堪らなかった。
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