異世界行っても喘息は治らなかった。

万雪 マリア

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閑話・カミチュリア家

閑話・カミチュリア家と枢機卿

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 んぎゃあ! んぎゃあ!
 豪華な部屋に、赤子の泣き声が響く。
 赤子の髪の色は、白色だった。



 魔子には色があり、この世界の一般的な人間の髪と目の色は、適正のある属性の魔子の色となる。
 魔法に適正がない場合、一般的に灰色となる。赤子の髪は白で、瞳は灰色だった。つまり、光魔法のみで混じりっ気ないという事になる。
 中央大陸では、光属性は、基本的に神が与え錫たとされ、白髪のものは、よっぽどの事がない限り聖女としてあがめられるのが普通だ。
 しかし、イザベラは違った。

 イザベラは、白髪だというのに、魔法の一切が使えなかった。

 イザベラは、カミチュリア侯爵家という、かなりいい家に生まれた。
 それゆえに家名にドロを塗る事を恐れた当主は、イザベラを引き取ってくれる者を探した。
 そして当たったのは、枢機卿の一人、「ルーシユー=ユグドラ」だ。
 元々は、カミチュリアの分家筋にあたるルーシユーは、喜んで彼女を引き取った。
 そして、教会のコネを全力で行使し、彼女を、「光の神に祝福された聖女」として仕立て上げたのだ。

 もし、聖女として成功したら、カミチュリアの分家筋の一つ__つまり、枢機卿ルーシユーの実家を立ててくれると約束してくれた。

 幼いながらに、自分の「役」を理解していたイザベラは、ルーシユーの言う通り、完璧な聖女を演じていた。



 全て、あの平民が悪いのだ。



 聖女計画は、イザベラ=ユグドラが魔法を使えないと知って、さらに彼女が本当は「イザベラ=ユグドラ」ではなく、「イザベラ=ユグドラ=カミチュリア」だと発覚した事により頓挫した。


 国に許可をとらない養子縁組は犯罪だ。
 ましてや、魔力の無い子をユグドラシル学院に通わせた事なんて、一族全員連座で処刑されても「仕方ないというか自業自得というか……」と面と向かって言えるほどの大罪である。
 怒ったカミチュリア当主が、ルーシユーの家の者を、使用人含めて自ら拷問して回った事はもはや伝説となりかけている。
 そしてイザベラはというと。


(最悪っ! 最悪ですわ!)
 聖樹教を破門されたのち、平民に身分を落とされた。
 当然、彼女には生きていく術など何もない。
 全てを失った者が何に動くか。
 一つに決まっている。
(復讐……復讐してやるっ!)
 鬼のような形相で、汚くて臭い平民街を歩く。
 ダン、ダン、と、六歳程の少女から発せられるにはいささか不釣り合いな音を立てて、彼女が向かうのは、
「………あったわ」
 イザベラは唇を、にんまりと三日月型に歪めた。





〈ステータス〉

 イザベラ=ユグドラ=カミチュリア 6歳 女
 HP:400/400
 MP:7/7
 筋力:9
 敏捷性:10
 耐久力:7
 運:190
 使用可能魔法
 魔法使用不可
 使用可能特技
 隠蔽 短剣術 針術
 称号 聖樹教の偽りの聖女 賊民
 説明
 カミチュリア家に生まれた少女。白髪灰目をしており、エルノアを憎んで(逆恨み)いる。
 ルーシユーを通しての裏の繋がりが結構多い。
 備考:成長すれば本人の努力次第で一応魔法は使えるようになる。




 ルーシユー=ユグドラ 34歳 男
 HP:1400/1400
 MP:700/700
 筋力:19
 敏捷性:20
 耐久力:3
 運:1
 使用可能魔法
 ホーリー ヒール アンチポイズン
 使用可能特技
 神術【使徒の再来】 剣術 算術 毒術 針術 祈り
 称号 枢機卿 故人
 説明
 怒った当主に殺された可哀想な枢機卿。出世欲が強く、いつか神殿長になると野望を抱えており、暗殺技術もゲットした。努力でなんとかなった。
 神術を扱える。



 神術【使徒の再来】
 消費MP:100(&寿命)
 説明:自らの寿命と引き換えに、浮遊島の神々を降臨させる。
 神々を使役する事はできない。そういうのはミシェルに任せている。




 サンクチュアリ
 消費MP:範囲に応じて
 説明:発動範囲内の、全ての魔子を消し去る。



 チェンジ
 消費MP:5
 説明:基本の基本の基本の転移魔法。短距離を移動できる。



 傀儡
 消費MP:500(魔石で代替え可)
 説明:かけた相手の生殺与奪権、自由、その他全ての権利を奪う。


 天空浮遊島〈ゲームクリア〉条件
 世界の終焉ラグナロクを一階層以上にもたらすこと。


 中央大陸〈ゲームクリア〉条件
 魔王の存在を〈消す〉事。手段は問わない。


 地底領〈ゲームクリア〉条件
 種族を一つ滅ぼし、新たな種族で埋め合わせること。


 地底領=地底界
 ユグドラシル学園=ユグドラシル学院

 正式な呼び方が左、通称が右。
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