『ラーメン屋の店主が異世界転生して最高の出汁探すってよ』

髙橋彼方

文字の大きさ
10 / 18
ギウマニールの豚骨ラーメン

『ギウマニールの豚骨ラーメン』6

しおりを挟む
 龍拓はギウマニールの汗を味わうように口の中で転がし、ゆっくりと飲み込む。
 その味は、まるで長時間丁寧に調理されたローストポークの肉汁みたいに優しくも、肉の味をしっかりと感じさせるものだった。
 龍拓はウットリとした表情で、ギウマニールたちを眺める。

 早く、こいつらを調理してぇな……。

 レッツォで吹っ飛ばされたギウマニールは腹を押さえてもだえ、うずくまっていた。
 その光景を見ていた他のギウマニールたちは、憎悪を込めた怒り顔になると、一斉に前傾姿勢へなった。
 シュリルは急いでリプイたちの方へ振り向く。

「二人とも、なるべく遠くへ俺から離れろ! 俺が何とかする!」

 楽しそうに笑みを浮かべるシュリルに頷くと、リプイと龍拓は走って避難を始めた。

「よしッ! 来い! 俺を満足させてくれ!」

 そう言うと、シュリルの筋肉が波打ちだして、体からは湯気が出た。

「新たなスキル、試させてもらうぜ!
 筋肉ヒゾック・強化シュリング!」

 体は二回り程大きくなり、まるで筋肉の鎧をまとっている様だった。
 シュリルはギウマニールたちの後方まで見ると、明らかに他よりも体が一回り大きい個体が居るのに気が付いた。

 アイツがボスだな!

≪ブゥギィィィィイァアア!≫

 雄叫びを上げながら一斉にギウマニールたちはシュリルに突撃して来た。
 そして、攻撃範囲に入ると四方八方に散らばり、あっという間にシュリルを取り囲んだ。

 ほう。俺を囲んだのか。では……。

 ギウマニールたちが、持っていた武器で一斉に攻撃をした瞬間だった。

「ラジーフ・サンクツィオォォォ!」

 シュリルは雄叫びと共に、円を描く様に回転すると、高速の連続パンチを炸裂させた。

『ババババババァ!』

 高速で繰り出される拳によって破裂音の様な音が辺りに響き渡った。
 そして、拳が当たったギウマニールたちは打撃音と共に、四方八方へ吹き飛んでいった。

「やったか!」

 龍拓がシュリルの圧倒的な勝利を確信してガッツポーズを上げているのに対して、リプイはシュリルの体から出る湯気を心配そうに見ていた。

 あんな戦い方したら、直ぐにタンパク質不足になるわ……。

「ハァハァ……」

 リプイの読み通り、シュリルは体にのしかかる疲労から呼吸を荒げていた。
 シュリルに四方八方へ吹き飛ばされたギウマニールたちは、すくっと立ち上がると、再び臨戦態勢に入った。

 流石、A級のモンスターだな!
 耐久力が段違いだ。こりゃ温存する戦い方じゃ倒しきれそうに無いな!

 シュリルは自分の二頭筋を眺める。

 信じてるぜ、相棒!

 ギウマニールたちが再びシュリルを取り囲むと、シュリルは両手を広げて前傾姿勢を取った。
 すると、後方に居るボスがシュリルを指さした。

≪ブギ……≫

 号令と共に、ギウマニールたちは飛び掛かった。

≪ブゥギィィィィイァアア!≫

 これが、今の俺が出せる最高出力だ!

「アツィーフ・レッツォォォォ!」

 シュリルが力いっぱい地面を蹴ると残像が残り、衝撃音が響き渡った。

『ザバァァァァァァンッ!』
 
 シュリルのラリアットに触れたギウマニールは体を一瞬で切断された。
 血しぶきが雨のように降り注ぐ中、シュリルは足の筋肉に集中しハムストリングスが波打つ。
 そして、後方に自身の体を回転させると再び両手でラリアットをした。
 攻撃は二体の腹部に命中し、ギウマニールたちは真っ二つになる。

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 雄叫びと共にシュリルは何度も残像を作りながらラリアットを繰り出し、次々と倒していった。
 体から出ていた湯気は、汽車の蒸気のように噴き出す。

 俺の体、持ってくれぇ!

 シュリルは渾身の力でボスに突っ込んだ。

『バコッ』

 後方に居たギウマニールの攻撃が頭部に当たり、シュリルは歯を食いしばりながらこらえる。

「俺のスピードに、もう慣れたか」

 シュリルの頭から血がダラダラと流れると、ギウマニールは口角を思いっきり上げて不気味な笑みを浮かべた。

『ビクゥッ!』

 いきなり止まった反動で、シュリルの全身に激しい痛みが走った。
 シュリルはバックステップで一旦下がり、残りのギウマニールを数えるとボスを合わせて五人になっていた。

「ギリギリ持つか……」

 シュリルはそう言うと、よろけながら再び前傾姿勢を取った。

「シッコフケービン!」

 杖を持ったリプイが呪文を唱えると、先端から美しい黄色の花が咲いて、緑色の光がシュリルに放射された。

「流石、一流の回復魔法だぜ!」

 頭の傷は直ぐに塞がり、全身を襲っていた痛みが引くと、シュリルは足に筋肉を集中させた。

「レッツォォォォォォォォオ!」

 シュリルが地面を蹴った瞬間に罅割ひびわれが起き、まばたきする間も無く二体の首をねた。
 すると、先ほどまで笑みを浮かべていたギウマニールたちの額から、脂汗が流れた。

『バシュゥゥゥン!』

 更に二体のギウマニールの首を刎ねると、シュリルはボスに向かって突っ込んだ。

「これで終わりだぁぁぁぁ!」

 一瞬で間合いを詰めると、ボスは涼しい顔でシュリルを眺める。

『バシッ!』

 ラリアットが当たる瞬間に両手で腕を掴むと、シュリルは静止した。

「馬鹿な!」

 煙と共にシュリルの体は一回り細くなっていた。
 唖然とするシュリルを軽々持ち上げると、思いっきりボスは地面に叩きつけた。

「ぐはぁ……」

 あまりの威力にシュリルは吐血する。

 畜生! 時間切れか……。

 龍拓雲行きが怪しくなったことに気付くと、リプイの肩を叩く。

「え?」
「急いでアイテムボックスから俺のリュックを出してくれ! 中に使える物があるかも」
「わかったわ!」

 リプイが直ぐにアイテムボックスからリュックサックを出すと、龍拓は急いで漁り始める。

「これだ!」

 リュックサックの底から、アルコール消毒液とライターを出して、シュリルの方を確認する。
 すると、シュリルはボスのギウマニールに馬乗りで殴られていた。

「まずい!」

 消毒液を口に含むと、龍拓はシュリルの方へ走る。

『ギロ……』

 ボスは龍拓の足音に気付いて振り返った。

≪フガァ!≫

 ギウマニールの威圧する眼は、龍拓に一瞬で死を覚悟させた。

『ガシッ』
 
 シュリルはボスの両腕を握った。

「何処を見てんだ?」

『ギュゥゥゥゥウ!』

 シュリルの握力は、ボスの気を反らすには十分すぎた。

≪ガァアァァァ!≫

 ボスの腕は一瞬で青黒く変色し、痛みで悶えた。
 その隙に龍拓はボスの近くまで行くと、ライターの火をつけて構える。

『ブゥオォォォォオア!』

 勢いよく噴き出されたアルコールはライターの火に触れ、火炎に変わるとボスに放射された。

≪ギアァァァ!≫

 断末魔と共にボスの体は燃え上がり、シュリルは自身に引火する前で突き飛ばした。

「これが本当の焼豚チャーシューだな」

 龍拓が見下ろすボスは直ぐに力尽きると、香ばしくて食欲を掻き立てる良い匂いを発した。


To Be Continued…
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!

mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの? ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。 力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる! ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。 読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。 誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。 流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。 現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇 此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。

【3章】GREATEST BOONS ~幼なじみのほのぼのバディがクリエイトスキルで異世界に偉大なる恩恵をもたらします!~

丹斗大巴
児童書・童話
 幼なじみの2人がグレイテストブーンズ(偉大なる恩恵)を生み出しつつ、異世界の7つの秘密を解き明かしながらほのぼの旅をする物語。  異世界に飛ばされて、小学生の年齢まで退行してしまった幼なじみの銀河と美怜。とつじょ不思議な力に目覚め、Greatest Boons(グレイテストブーンズ:偉大なる恩恵)をもたらす新しい生き物たちBoons(ブーンズ)とアイテムを生みだした! 彼らのおかげでサバイバルもトラブルもなんのその! クリエイト系の2人が旅するほのぼの異世界珍道中。  便利な「しおり」機能を使って読み進めることをお勧めします。さらに「お気に入り登録」して頂くと、最新更新のお知らせが届いて便利です! レーティング指定の描写はありませんが、万が一気になる方は、目次※マークをさけてご覧ください。

星降る夜に落ちた子

千東風子
児童書・童話
 あたしは、いらなかった?  ねえ、お父さん、お母さん。  ずっと心で泣いている女の子がいました。  名前は世羅。  いつもいつも弟ばかり。  何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。  ハイキングなんて、来たくなかった!  世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。  世羅は滑るように落ち、気を失いました。  そして、目が覚めたらそこは。  住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。  気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。  二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。  全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。  苦手な方は回れ右をお願いいたします。  よろしくお願いいたします。  私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。  石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!  こちらは他サイトにも掲載しています。

9日間

柏木みのり
児童書・童話
 サマーキャンプから友達の健太と一緒に隣の世界に迷い込んだ竜(リョウ)は文武両道の11歳。魔法との出会い。人々との出会い。初めて経験する様々な気持ち。そして究極の選択——夢か友情か。   (also @ なろう)

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

村から追い出された変わり者の僕は、なぜかみんなの人気者になりました~異種族わちゃわちゃ冒険ものがたり~

楓乃めーぷる
児童書・童話
グラム村で変わり者扱いされていた少年フィロは村長の家で小間使いとして、生まれてから10年間馬小屋で暮らしてきた。フィロには生き物たちの言葉が分かるという不思議な力があった。そのせいで同年代の子どもたちにも仲良くしてもらえず、友達は森で助けた赤い鳥のポイと馬小屋の馬と村で飼われている鶏くらいだ。 いつもと変わらない日々を送っていたフィロだったが、ある日村に黒くて大きなドラゴンがやってくる。ドラゴンは怒り村人たちでは歯が立たない。石を投げつけて何とか追い返そうとするが、必死に何かを訴えている. 気になったフィロが村長に申し出てドラゴンの話を聞くと、ドラゴンの巣を荒らした者が村にいることが分かる。ドラゴンは知らぬふりをする村人たちの態度に怒り、炎を噴いて暴れまわる。フィロの必死の説得に漸く耳を傾けて大人しくなるドラゴンだったが、フィロとドラゴンを見た村人たちは、フィロこそドラゴンを招き入れた張本人であり実は魔物の生まれ変わりだったのだと決めつけてフィロを村を追い出してしまう。 途方に暮れるフィロを見たドラゴンは、フィロに謝ってくるのだがその姿がみるみる美しい黒髪の女性へと変化して……。 「ドラゴンがお姉さんになった?」 「フィロ、これから私と一緒に旅をしよう」 変わり者の少年フィロと異種族の仲間たちが繰り広げる、自分探しと人助けの冒険ものがたり。 ・毎日7時投稿予定です。間に合わない場合は別の時間や次の日になる場合もあります。

ノースキャンプの見張り台

こいちろう
児童書・童話
 時代劇で見かけるような、古めかしい木づくりの橋。それを渡ると、向こう岸にノースキャンプがある。アーミーグリーンの北門と、その傍の監視塔。まるで映画村のセットだ。 進駐軍のキャンプ跡。周りを鉄さびた有刺鉄線に囲まれた、まるで要塞みたいな町だった。進駐軍が去ってからは住宅地になって、たくさんの子どもが暮らしていた。  赤茶色にさび付いた監視塔。その下に広がる広っぱは、子どもたちの最高の遊び場だ。見張っているのか、見守っているのか、鉄塔の、あのてっぺんから、いつも誰かに見られているんじゃないか?ユーイチはいつもそんな風に感じていた。

異世界子供会:呪われたお母さんを助ける!

克全
児童書・童話
常に生死と隣り合わせの危険魔境内にある貧しい村に住む少年は、村人を助けるために邪神の呪いを受けた母親を助けるために戦う。村の子供会で共に学び育った同級生と一緒にお母さん助けるための冒険をする。

処理中です...