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2.スイート・キング1

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「男の人は、いいですよね。お化粧もしなくていいし、むだ毛も、気にしなくていいし」
「メイクはともかく、むだ毛って。剃ってるの?」
「剃りますよ! 大変なんですよ……」
「両脇とか、いつも剃ってる?」
「うん……」
「永久脱毛する? したいんだったら、金は出すけど」
「えっ」
「興味ある?」
「ある……。したい。したいです!
 なんなら、全身したいくらいです!」
「全身する必要ある?」
「ないかもしれないけど。すね毛って、かなしいものですよ」
「うぶ毛だよ。女の人の、それは」
「じゃあ、それは、それでいいです。
 ……ほんとに、脱毛していいの? 脇だけでも、したい」
「いいよ」
「や、やった……。あの、あのね」
「うん?」
「ほんとは、……しっ、下も、したいの」
「……下?」
「Vライン……」
「ああ! いいよ。別に。したいんだったら、しても」
「う、うれしい……」
 ぽろっと、涙がでてきた。びっくりした。
「泣くほど嬉しかった?」
「うん……。でも、泣くつもりじゃ、なかったです」
「かわいい」
「かわいくないです」
「かわいいって。ずっと、気にしてたの?」
「うぅ……。下の毛が、多いような気が、してて」
「別に、多いとは思ってなかった」
「剃ってますから。あと、長いのは、切ってるんですよ……。はさみで」
「そうだったの?」
「う、うん……。いわなきゃ、よかった」
「それ、俺にやらせてくれない?」
「えっ。……えー?!」
「やりたい。やらせて」
「礼慈さんって、おかしいです……」
「うん。それは認める」
 まじめな顔でうなずいてから、何かを考えるような顔をした。
「どうしたの……?」
「生活に余裕がないから、したくでも、できなかった?」
「……そうです。ううん。何かを削れば、きっと、できたんでしょうけど。
 彼氏もいないのに、むだ毛を気にしてる自分が、ばかみたいに思えて……。
 パズルを買うのをやめて、脱毛サロンに通うべきだった?」
「それはまた、別の話だろう。
 しかし、あれだな。女の人っていうのは……。大変なんだな」
「そうですよ。大変なんです」
「好きな日に予約していいよ。支払いは、俺のカードを使ってくれれば」
「あ、ありがとう……」
「どういたしまして」

 二人で部屋を出て、カフェまで歩いた。
 礼慈さんの方から、手をつないでくれた。うれしかった。
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