93 / 206
8.トリッキー・ナイト3
2-2
しおりを挟む
かなり、作った。がんばりすぎたかもしれない。
まだ大学が始まってるわけじゃないから、平日に来て、作ってあげてもいいんだって、ようやく思いついた。遅かった。
スマホの時刻を見た。十一時七分だった。
四時間も作ってたのか……。
あら熱を取る間、座って、休ませてもらおう。
ソファーのところに行って、沢野さんの隣りに座った。少しだけ、距離をあけたのは、キスとか、そういうふうにならないようにしようと思ったからだった。
「大丈夫?」
「少し、疲れました。ここで、休んでていい?」
「いいよ。客間に行く? 寝てもいいよ」
「ううん。ここでいい」
「眠そうだね」
「朝、早く起きすぎました」
「僕に会いたかった?」
「うん」
「……自分で聞いておいて、あれなんだけど。嬉しいもんだね」
「ねむい。ねて、いい?」
「どうぞ」
「ほんとに、ねますよ」
「いいよ。大丈夫」
ふっと、目がさめた。
すぐ横に、沢野さんが座っていた。
体が、くっついていた。どきっとした。
「……あ」
「起きたんだね。おはよう」
右を向いて、ガラス窓の向こうを見た。明るい。まぶしかった。
「何時?」
「十二時十分くらい」
「一時間も寝てたんだ。ごめんなさい」
じっと見られてる。はずかしくなった。
「なんですか」
「キス、していい?」
「う、ん」
キスをされた。やさしいキスだった。
すごく、どきどきした。
そのまま、首の方に、唇が下りてきた。びっくりした。
「さ、さわのさ……」
「じっとしてて」
唇が、肌をかすめた。一瞬だけ。
熱い息が、首すじにかかる。体の奥に、熱がともる。
「あ、だめ」
胸じゃなくて、胸のすぐ下に、手を置かれた。ぞくっとした。
手が離れた。ほっとしたような、残念なような……。
やめちゃうんだ、と思った。
「ごめん。つい」
「……したいの?」
「ちがう。そうじゃない」
「そうですか。どきどきするから、やめてください」
「キスだけ。させて」
「どうぞ」
長いキスをした。
舌が、あたしの口の中に入ってくる。
舌で、あたしを探ろうとしてくる。ふれあったところが、びりっとして、電気が走ったみたいになった。
情熱的っていう言葉が、ぴったりだった。
わかった。この人、あたしのことが欲しいんだって。
それなのに、キスだけで終わらせようとしてる。
あたしの体を探ろうとする手が、その度に、動きを止める。何度も。
感じていた。これ以上進んだら、戻れなくなる……。
「……もう、だめ」
手で、沢野さんの胸を軽く押した。息があがっていた。
目が合った。色素のうすい目が、あたしを見ている。
うるうるしていた。興奮してるんだ、と思った。
「さわのさん」
「ごめんなさい。ここまで」
「はい……」
体から力が抜けて、ソファーの背もたれに沈んだ。
「苦しかった?」
「すこし、だけ」
顔を動かして、寝室のドアを見た。
「あの……」
「うん?」
「寝室って、入ったら、だめですか」
「えっ。なんで?」
「なんで、って……。興味があって」
「ごめんね。まだ、だめ」
「だめ?」
がっかりしてしまった。沢野さんが、困ったような顔になった。
「歌穂ちゃんが、どうとかじゃないよ。
寝室に歌穂ちゃんがいたら、僕が、我慢できなくなりそうだから……」
「わかりました」
入っちゃいけない理由は、きっと、それだけじゃないんだろうなと思った。
あたしに見られたくないものが、あるのかもしれない。
隠されると、余計に、気になってしまう。
あの部屋に、沢野さんの秘密が隠されている。そんな気がした。
まだ大学が始まってるわけじゃないから、平日に来て、作ってあげてもいいんだって、ようやく思いついた。遅かった。
スマホの時刻を見た。十一時七分だった。
四時間も作ってたのか……。
あら熱を取る間、座って、休ませてもらおう。
ソファーのところに行って、沢野さんの隣りに座った。少しだけ、距離をあけたのは、キスとか、そういうふうにならないようにしようと思ったからだった。
「大丈夫?」
「少し、疲れました。ここで、休んでていい?」
「いいよ。客間に行く? 寝てもいいよ」
「ううん。ここでいい」
「眠そうだね」
「朝、早く起きすぎました」
「僕に会いたかった?」
「うん」
「……自分で聞いておいて、あれなんだけど。嬉しいもんだね」
「ねむい。ねて、いい?」
「どうぞ」
「ほんとに、ねますよ」
「いいよ。大丈夫」
ふっと、目がさめた。
すぐ横に、沢野さんが座っていた。
体が、くっついていた。どきっとした。
「……あ」
「起きたんだね。おはよう」
右を向いて、ガラス窓の向こうを見た。明るい。まぶしかった。
「何時?」
「十二時十分くらい」
「一時間も寝てたんだ。ごめんなさい」
じっと見られてる。はずかしくなった。
「なんですか」
「キス、していい?」
「う、ん」
キスをされた。やさしいキスだった。
すごく、どきどきした。
そのまま、首の方に、唇が下りてきた。びっくりした。
「さ、さわのさ……」
「じっとしてて」
唇が、肌をかすめた。一瞬だけ。
熱い息が、首すじにかかる。体の奥に、熱がともる。
「あ、だめ」
胸じゃなくて、胸のすぐ下に、手を置かれた。ぞくっとした。
手が離れた。ほっとしたような、残念なような……。
やめちゃうんだ、と思った。
「ごめん。つい」
「……したいの?」
「ちがう。そうじゃない」
「そうですか。どきどきするから、やめてください」
「キスだけ。させて」
「どうぞ」
長いキスをした。
舌が、あたしの口の中に入ってくる。
舌で、あたしを探ろうとしてくる。ふれあったところが、びりっとして、電気が走ったみたいになった。
情熱的っていう言葉が、ぴったりだった。
わかった。この人、あたしのことが欲しいんだって。
それなのに、キスだけで終わらせようとしてる。
あたしの体を探ろうとする手が、その度に、動きを止める。何度も。
感じていた。これ以上進んだら、戻れなくなる……。
「……もう、だめ」
手で、沢野さんの胸を軽く押した。息があがっていた。
目が合った。色素のうすい目が、あたしを見ている。
うるうるしていた。興奮してるんだ、と思った。
「さわのさん」
「ごめんなさい。ここまで」
「はい……」
体から力が抜けて、ソファーの背もたれに沈んだ。
「苦しかった?」
「すこし、だけ」
顔を動かして、寝室のドアを見た。
「あの……」
「うん?」
「寝室って、入ったら、だめですか」
「えっ。なんで?」
「なんで、って……。興味があって」
「ごめんね。まだ、だめ」
「だめ?」
がっかりしてしまった。沢野さんが、困ったような顔になった。
「歌穂ちゃんが、どうとかじゃないよ。
寝室に歌穂ちゃんがいたら、僕が、我慢できなくなりそうだから……」
「わかりました」
入っちゃいけない理由は、きっと、それだけじゃないんだろうなと思った。
あたしに見られたくないものが、あるのかもしれない。
隠されると、余計に、気になってしまう。
あの部屋に、沢野さんの秘密が隠されている。そんな気がした。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
119
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる