バージン・クイーン -強面のイケメンのところに、性欲解消目的で呼ばれるデリヘル嬢の話-

福守りん

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17.バッド・サプライズ1

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 九月の最初の月曜日。
 午後四時になる頃には、マンションのエレベーターに乗っていた。
 今日は九月五日だ。祐奈とは去年の九月四日に出会っているので、ちょうど一年が経ったことになる。
 あの日のことは、今でも、鮮やかな記憶として残っている。
 祐奈の顔や声、仕草のひとつひとつが、俺の心にある。
 時を経ても、風化しなかった。いつでも、好きな時に思いだせる。
 こんなことが、自分にできるとは知らなかった。紘一のような異常な記憶力は、俺にはないはずだった。
 祐奈のことなら、祐奈がいない時にも、ありありと思いうかべることができる。
 俺のそばに祐奈がいてくれて、一緒に暮らせていることを、幸せだと感じていた。

「祐奈?」
 リビングにはいなかった。
 寝室に行ってみた。灯りがついていた。
 祐奈は、俺のベッドで寝ていた。
 藍色のタオルケットで、胸までを覆っている。
「ただいま」
「えっ。はやく、ないですか」
 祐奈の顔は、嬉しそうには見えなかった。慌てているように見えた。
「展示会。ごめん。連絡するのを忘れた」
「どうして?」
「早く、帰ってきたくて……」
「あっち。あっち、いって」
「出ていけってこと?」
「う、うん」
「ちょっとだけ、見せて」
「だめっ……」
 タオルケットをぺらっとめくってみた。
 上は薄手のパジャマを着ている。下は下着だけだった。
 脱げかけた下着を、白い指がぎゅっと掴んでいる。
 タオルケットを元に戻した。
「してた?」
「……うん」
「足りない? セックスの回数」
「ちがうの……。生理が終わると、したくなるの」
「そうなんだ」
 知らなかった。すごい情報を聞いてしまった。
「本当に?」
「うそなんか、つかないです……」

 スーツのままで、ベッドに上がった。
 タオルケットを捲った。祐奈が「えーっ?」と声を上げた。
「なに……。なんですか?」
「見せて」
「だめ。みちゃ、だめ……」
 いやいやと首を振った。かわいいなと思った。
「お願いだから」
「……うぅ。はい」
 祐奈の手から、力が抜けていった。
 下着の中に指を入れて、触れてみた。
 濡れていた。ぞくっとした。
「していい?」
「だめっ、だめ……」
「どうして?」
「は、はずかしい、から……」
「濡れてる」
「……いっちゃ、いや」
「したい。させて」
「う、うぅ。うん……」
 祐奈の顔が真っ赤になっている。俺の顔も、赤くなっているだろうなと思った。
 ふと見ると、俺のパジャマの上だけが、枕のそばに置いてあった。
「俺のパジャマがある」
「……うぅ」
 両手で顔を覆ってしまった。
「必要だった?」
「うん」
「どう使うの? これ」
「においとか……。かぐの」
「そんな使い道があるのか。知らなかった」
「あるんです」
 手を外して、俺をじっと見上げてくる。
「どうかした?」
「スーツ……。かっこいい」
「ありがとう」
「へんなかんじ。そんなかっこうで、ベッドの上に……」
「襲われてるみたいな感じがする?」
「うん? ううん……」
「このまま下だけ脱ぐと、ものすごくバカっぽい格好になるけど」
「それはね。ぜんぶ、ぬいだら……いいと思う」
「そうだな」
「しわになっちゃう。
 ぬがして、いいですか」
「いいよ」
「……だめです。手が、きたないの」
「汚くないよ」
「ウェットティッシュください」
「うん」

 丁寧に手を拭いた祐奈から、使ったウェットティッシュを受けとった。
 ごみ箱に捨てて、ベッドの方に戻った。
 スーツの上は、自分で脱いだ。祐奈のベッドに置かせてもらった。
 祐奈の手が、俺に向かって伸びる。
 ネクタイをほどかれた。
 Yシャツのボタンにも、白い指がかかる。大人しく、されるがままになっていた。
 Yシャツの襟元を、祐奈の両手に開かれた。
 息を詰めて見つめてくる。
 きれいな目だった。吸いこまれそうだなと思った。
 あどけなさだけではなく、高い知性を宿していると感じられる瞳が、俺だけに向けられている。それは嬉しいことではあったが、多少緊張することでもあった。
 全てを見られている。そんな気分だった。
「下は、いいよ」
「うん……」
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