季節が消える

華図

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1話 自殺

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物語は春が自殺するところから始まる。
「おい!何してんだ!降りて来なさい!!」 
教頭の声が聞こえる。
中庭を挟んで生徒用校舎からみんなが僕を見ている。

「え?あれ誰?え!夏!ヤバ!春って子じゃん!!」
「あぁ、小学校同じだっけ」
夏は目を細めながら屋上の春を見る。
「おい!夏!季節同士なんか言ってやれよ!」
「ごめん、喋ったことないし、ただのインキャでしょ」

「え?春が飛び降りようとしてんだけど!まじ笑える」
「それな」
「どうせ飛び降りる勇気なんてないに決まってるでしょ」
そう言いながら窓を開けた。
「おい!春!死ねば~!!」

「飛び降りてもいんだな?!」
僕は叫んだ。
「だめだ!君が死んだら君を産んだお母さんが悲しむぞ!」
教頭先生はメガホンを使って僕に呼びかける。
もう僕は後に引けない。僕は中3。受験生。こんな事件を起こしたら高校なんて行けない。いっそのこと、いや本当にもう飛び降りるしか、、死ぬしかないのだ。

「おい、どけクソ!」
タバコを捨てる。
「航平!タバコはやばい!マジで燃えるぞ!学校!」
「燃やしてやろうか?!」
航平は笑いながら言う。
「つか、なんでこんなにわちゃわちゃしてんだよ!邪魔だ!」
「え?春が飛び降りるって?!」
「へー、春が。。春?!!!」
航平たちは走り出した。
「おい!まち!教頭のメガホン奪え」
「オッケー」
"まち"こと町家は猫騙しを使って教頭のメガホンを奪い取り、航平に渡した。
「おい!春!」
春は航平を見る。
「こうちゃん!!」
「降りて、、」
メガホンの調子が悪い。音が途切れる。
「なんだこれ、こわれてんじゃねぇの、クソ死ねよ!」
メガホンのマイクは"クソ死ねよ"
だけを受け取り発信し、生き絶えた。
「こうちゃん、なんでそんなこと言うの?!」

僕は、幼馴染にあんなことを言われた。クソ死ねよ!だって。最悪だ。もう本気で死のう。ただ最後の言葉を言わなければ。言わなければ。
「な、、、、」
その言葉を言おうとした瞬間、僕は足を踏み外した。アスファルトに補正された地面に向かって体は浮き上がるように落ちていく。僕はあの子。夏に愛の言葉を言えないまま死ぬのか。死ぬのか。悲鳴が聞こえる。死にたく、、ない。
次の瞬間、地面が歪んだ。なぜだろう分からない。分からないけど、僕は目を覚ました。真っ白な空間で。
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