デキナイ男と病気の女3

Yachiyo

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1 旅立ち

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羽田空港出発ロビー

「本当に行くのね?」

弥生が葵(ひとみ)に言う

「うん」

葵(ひとみ)が頷く

「せっかく彼氏出来たばっかりなのに」

弥生が側にいた隆史(たかふみ)を見て言う

マッチングサイトで最後に出会ったあの隆史(たかふみ)だ

「葵(ひとみ)さん、連絡下さいね」

と隆史(たかふみ)も続けた

「世の中こんな事態になって銀座のお店も潰れちゃって、本当はラスベガスでカジノのディーラーやりたくてカジノスクールにも通ってたのに行けなくなっちゃったし、銀座のママが与論に飲み屋持っててそこ紹介してくれたから、そこで頑張ってみるよ。このまま弥生と和茂さんにも迷惑掛けられないしね」

いつもの様にペロッと舌を出して葵(ひとみ)が言う

「でも与論島なんて…」

寂しげに言う弥生

「今どきのトレンドは移住生活でしょ!」

相変わらずあっけらかんとしている葵(ひとみ)

「悪い男に引っ掛かるなよ。葵(ひとみ)ちゃん」

和茂が言うと

「大丈夫ですよ」

葵(ひとみ)が左手の親指を立てて元気に言った

「じゃあ私達は此処までで」

弥生が言った。目には涙が光っていた

それを見た葵(ひとみ)がすかさず自分のバッグからハンカチを取り出し弥生に渡す

「アナスイのだよ。上げるから涙拭きなよ。何よ、永遠の別れみたいな顔して」

言い残すとスタスタと搭乗口に歩いて言った

「じゃあねー!お互い元気でね!」

弥生が葵(ひとみ)に向かって叫ぶと、葵(ひとみ)は振り向きもせず左手を大きく振って消えていった

「本当に行っちゃったわね」

弥生が肩を落とすと和茂が弥生の肩をポンポンと叩いた

隣で隆史(たかふみ)が呆然と立ち尽くし涙ぐんでいた


和茂と弥生のマンション

和茂と弥生と隆史(たかふみ)

無言でエレベーターに乗り込み7階へ上がる

3人で一番奥の部屋迄行き弥生が鍵を開けて中に入る

和茂も後から部屋に上がる

「ちょっと待っててね」

隆史(たかふみ)に言う弥生

「はい」

隆史(たかふみ)が言い玄関に立っていた

2分程すると360°の入ったケージを持って弥生が玄関に現れケージごと隆史(たかふみ)に手渡す

「隆史(たかふみ)君、宜しく頼むわね」

弥生が言うと

「はい。この子を葵(ひとみ)さんだと思って大切に育てます」

隆史(たかふみ)は元気に言うと弥生からケージと360°を受け取った

「そうして」

弥生が言うと隆史(たかふみ)は360°の入ったケージを慣れない手つきでぶら下げながら自分の家へと帰って行った

「360°まで居なくなっちゃうなんて益々静かだな」

赤い水を口にしながら和茂が口火を切った

「まるで台風一過ね…」

弥生もリビングのベンチチェアに座りながら肩を落として静かに言う

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