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萌音の誤算
しおりを挟む長野県警
刑事部捜査一課
蘭子がコーヒーを飲みながら監視カメラのモニターを観ている
仲村も側に立ちながらモニターを観ている
「ちょっと、巻き戻して」
内藤咲と長谷部真理子が木曽の大橋から転落している画像
「あっ、ここ!」
モニターの中に、野次馬に紛れている萌音を見つける蘭子
モニターの中の萌音は真理子と咲が転落した直後に下流に向かって走り出している
蘭子、シャツの胸元を人差し指でパチンと弾く
長野県
松本市
カフェ SAKURAI
白いウッドテラスがある明るいカフェ
髪を一つに束ねた清楚な装いに黒いエプロン姿の内藤萌音(25歳)が働いている
蘭子と仲村が来る
「内藤萌音さんですね?」
蘭子が萌音に警察手帳を見せる
「ちょっと宜しいですか?」
蘭子が言う
「仕事中なので少しだけなら」
そう言って、蘭子と仲村をテラスへ案内する
「母の事ですよね?」
「そうです」
蘭子が言う
「もう、本当の事話してくれますね」
蘭子が言うと萌音が話し出す
「母が木曽の大橋から落ちた日、私は仕事からの帰宅途中でした」
「それで、お母様と真理子さんが橋から落下するのを見たんですね」
「はい」
「あなた、勘違いしましたね?お母様が真理子さんを突き落としたのだと」
「はい......母は真理子叔母様をとても憎んでいましたから」
「修斗君の事で、ですね」
「はい。修斗は元々母の子。自分で産んだ子供を真理子叔母様に取られたので、真理子叔母様に懐いていく修斗を見ていて、母は叔母様に強い嫉妬を抱いていました。だから、自分に返して欲しいと詰め寄っていました」
「当然、真理子さんはそれを断った。そうですね?」
と蘭子が言う
「はい。母は自分の思い通りにならないと、直ぐにカッとなるのであの日も、母が真理子叔母様を突き落としたと......私は思い込みました」
「監視カメラであなたが下流に駆け出していく姿を確認しています」
-回想-
川の下流に内藤咲が流れて来る
下流に全速力で萌音が走って来る
萌音、咲を見つけて助け出すと奈良井川、河川敷に運ぶ
びしょ濡れで意識がもうろうとしている咲に萌音が人口呼吸をする
咲、意識を取り戻し萌音に気付く
「私、私......」
気が動転している咲
「お母さん、逃げて!このままだとお母さんが殺人犯になっちゃうわ!」
と萌音が慌てふためいて言う
萌音は財布の中から有り金すべて、5万円を取り出し咲に渡す
咲はその金を握り締めて土手をよじ登り消えて行った
-元のカフェ-
「咲はその金で静岡まで行ってあのラブホテルの面接に行ったんスね」
仲村が納得したように言う
「あれ以来母とは連絡は取っていません」
「でも、萌音さん、偶然あのラブホテルでお母様と再会しましたよね?」
萌音、ハッとする
「皆様にお聞きしているのですが、事件当日の午後10時から午前0時の間どちらにいらっしゃいましたか?」
「酷い!私が母を殺す訳ないじゃないですか!」
萌音が声を荒げて言う
「一応、お聞きしているだけですので」
蘭子がなだめながら言う
「そ、その時間なら自宅にいました」
「証明してくれる人は?」
「あいにく一人暮らしなもので」
長野県警
刑事部捜査一課
蘭子と仲村それぞれのデスクに座っている
「内藤咲の身辺当たってみたけど、アリバイが有るのは看護師の荒井直樹と長谷部真理子の二人ね」
蘭子が言う
「荒井は患者の織田さんの点滴を午前0時に交換してます。長野県から静岡県までは車で片道2時間40分かかりますから、往復で約5時間半はかかります。犯行は無理ッスね。長谷部真理子も獄中でしたから、勿論犯行は無理ッス」
仲村が言う
「一応冨田にもアリバイがあるじゃない」
蘭子が言う
「確かに有りますけど、身内の証言だし、しかも子供ッスよ」
仲村が言う
「あら、子供の方が信憑性があるんじゃない」
蘭子が言う
「完璧にアリバイが無いのは内藤萌音ッスね。でも実の母親を殺しますかね?」
仲村が言う
「気になる事があるのよ」
蘭子、おもむろに出て行く
「ちょ、ちょっと待って下さいよ~」
仲村、蘭子の後を慌てて追いかける
荒井病院
産婦人科
受付
蘭子と仲村来る
「何かこういう所に女性と来るの恥ずかしいッスね」
仲村が言う
「何言ってんの。堂々としてなさい」
「ウィーッス」
蘭子が受付の女に声を掛ける
「こんにちはー、あのぉ、内藤萌音さんてこちらの患者さんにいますよねぇ?」
蘭子が聞く
「失礼ですけど、萌音さんと、どういうご関係ですか?」
受付の女が怪訝そうな顔で聞く
「わたしぃー、萌音の知り合いなんだけどぉー、妊娠がわかったのぉ」
蘭子がわざと高い声で言う
「それで、どういうご用件でしょうか?」
受付の女が言う
「高齢出産になるから心配だって、萌音に相談したらぁ、ここの病院紹介されてぇ」
蘭子、甘ったるい声で言う
「それで、ご主人様と?」
受付の女が仲村を見ながら言う
「ご、ご、ご主人!」
仲村が焦っていると、蘭子が仲村に目配せしながら小声で
「シー、シー」
と言っている
仲村、気付いて
「つ、妻はここで、出産させると決めたんだ」
と言う
「そう言えばぁ、萌音って、今、妊娠何ヵ月でしたっけぇ?」
蘭子が受付の女に聞くと
「2ヵ月ですよ」
つられて答える
「そう、そう、そうだったわ」
蘭子が言い
「行くわよ!」
と言って蘭子と仲村、走り去る
受付の女、呆気に取られる
廊下
仲村が蘭子に
「うわー、焦ったぁ。止めて下さいよ。急に小芝居し始めるの」
と言う
「だって、今、個人情報うるさいじゃない?」
蘭子が言う
「でも、何で萌音が荒井病院の産婦人科にかかってるって分かったんスか?」
仲村が蘭子に聞く
「真理子さん家で見た、中絶同意書よ。あれに荒井病院と書いてあったわ。これで、萌音が妊娠してる事が分かったわね」
「流石、蘭子さんっ」
長野県警
刑事部捜査一課
蘭子監視カメラのモニターを観ている
モニターには高速道路を走っている車
黒のワゴン車を見付けて何度も巻き戻して運転手を確認するが顔は確認出来ない
蘭子、イラついていると仲村が勢い良く入って来る
「蘭子さん、やっぱり荒井病院、保険料の水増し請求してましたよ!荒井病院で経理をしていた咲はその事を知ってたはずです!」
と言う
「流星君、お手柄よ」
蘭子がほくそ笑む
「繋がったわね」
胸元をパチンと弾く
カフェ SAKURAI
駐車場に松本ナンバーの黒のワゴン車が止まっている
カフェの窓際の席に荒井直樹が座っている
萌音がコーヒーを持ってきて荒井の前に置く
他の客は居ない
蘭子と仲村、入って来る
蘭子、荒井を見て
「やっぱり来てたわね」
と大きく頷きながら言う
「な、何ですか、刑事さん。こないだお話したはず......」
萌音が荒井を庇う様に言う
「あなた達、恋人同士ね」
蘭子が言う
「どうしてそれを?」
荒井が言う
「看護師学校の卒業式の写真に二人で映っているのを確認済みよ」
蘭子が言う
「それが何か?何のご用ですか!」
萌音が声をあらげて言う
「内藤咲さん殺しの犯人が分かったわ」
蘭子が言う
「もういいよ!萌音ちゃんっ!」
荒井が身体を震わせながら立ち上がって言う
「直ちゃん......」
萌音が荒井を見る
「すみません、刑事さん。僕が、僕が内藤咲さんを殺しました」
荒井が震えながら言う
「それは、自首と捉えて良いですね」
「はい」
うなだれる荒井
「ごめんなさい......」
萌音が泣き崩れる
「あなたも共犯ですね」
蘭子が萌音に言う
「はい......」
萌音が小声で言う
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