カトレアの香る時2【二度殺された女】

Yachiyo

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獄中への手紙

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長野県警

鑑識課

蘭子と仲村が来ている

鑑識官の沢野太郎(45歳)が静岡県警から送られてきた死体の映った写真を蘭子に渡しながら

「致命傷は首の動脈を鋭利な刃物でスパッと一撃。それによる失血死ですね」

と言う

蘭子

「いつもお世話になります」

と受けとる

「それにしても、お二人でラブホテルとは、お二人は一体どんなご関係で?」

沢野が言う

「沢野さんがご想像している関係ではございません」

蘭子がむきになって言う

「個人的見解を申せば、そちらもまた事件の様な気がしますが」

「だから、そういうんじゃないんだって」

仲村、小声で言う

蘭子、写真をじっくり見つめている

「この傷口は......」


長野県警

刑事部捜査一課

蘭子が資料を見ている

仲村が入って来て

「長谷部真理子、釈放されたそうッスよ」

と言う

「完全に誤認逮捕だったわね。署長にこっぴどく叱られるわね。マスコミも黙ってないだろうし」

蘭子が言う

「その時はその時ッス」

仲村が言う

「それより、内藤咲さん、どうして二度も殺されなきゃならなかったのかしら?」

蘭子が資料を見ながら言う

「相当、恨まれてたとか?」

「行きましょう」

「えっ、どこへッスか」


真理子のアパート

コーポ パールの看板

居間

質素な家具に整頓された部屋

蘭子と仲村、座卓の前に座っている

真理子が台所でお茶を淹れて
持ってきて蘭子と仲村の前に置いて座る

「この度は、警察の不祥事で大変ご迷惑をお掛け致しました」

蘭子が言い、仲村と深々とお辞儀をする

「良いんです。それより、姉さんが生きていたなんて」

「はい。私達も驚きました。お姉様、誰かに恨まれていたような事はありませんか?」

「そういう事はわかりませんが、実は獄中にこんな物が届きまして」

真理子、カラーボックスから一通の手紙を取り出す

「拝見しても宜しいですか?」

蘭子が言って手紙を開く

-真理子へ-

娘が結婚します。先日、彼と一緒に私の職場に来ました。私は反対しています。

      -姉より-

と書いた手紙と共に「中絶同意書」が一通入っている

「誰かのいたずらなのかと思っていました」

真理子が言う

「結婚に反対?それに中絶同意書?咲さんに娘さんがいらっしゃったんですか?」

蘭子が聞く

「はい。萌音といいます。最近まで看護師やってたって聞いてます」

「看護師さんですか」

蘭子が言う

「そうそう、姉が恨まれていた事ですよね?特に思い当りませんね。強いて言えば姉を一番恨んでいたのは私かもしれません」

と真理子が話を変える

「真理子さんが?それはまたどうして?」

蘭子が聞く

「息子の修斗は、実は私の子じゃないんです」

「えっ?」

蘭子が驚く

「前の夫が姉と浮気して出来た子です。姉の咲は早くに旦那を交通事故で亡くしてまして......。未亡人だった姉に、私の元旦那が手を出しました。当時は恨んでいましたが今となっては、子供が出来なかった私の為に残してくれた大事な息子です」

「会いに行かないんですか?息子さんに」

蘭子が言う

真理子は首を横に振りながら

「私が殺人犯になってしまって、元の旦那は私を許していませんし息子にも会わせてくれないでしょうね。息子には私は死んだと言ってある様です......」

「そうですか......無罪だと分かったのに辛い事思い出させちゃいましたね。申し訳ございませんでした」

蘭子が哀れむ様に言う

「いいんです。私はこれから一人でひっそりと暮らして行きますよ」

ため息混じりの笑顔を見せて真理子が言う

「お姉さんの娘さんの萌音さんとは連絡取ったりしてないんですか?」

「はい、姉と同様、私を恨んでいますから」

「どうしてですか?」

蘭子が聞く

「多分、姉から散々私の悪口聞かされて育ったのでその影響でしょう。小さい時は病弱だった私によく鶴を折ってくれた優しい子だったんですけどね......」

真理子が遠くを見つめて言う

「出来たら萌音さんのお写真を拝見出来ませんか?」

蘭子が聞く

「萌音の写真、有ったかしら」

真理子が押し入れの中をガサゴソと漁ってから古いアルバムを持って来て広げる

「看護師学校の卒業式の萌音です」

真理子が写真を見せる

蘭子写真を見る

卒業証書を持った萌音が同じ証書を持った男と腕を組んでいる

蘭子

「萌音さんは、こちらの男性とお付き合いを?」

蘭子が聞く

「はい。そのようですね」

真理子が答える

「ありがとうございました」

蘭子、アルバムを真理子に返す

「あのぉ、一応皆様にお聞きしているのですが、事件当日は......」

仲村が聞く

「勿論、刑務所の中に居ましたよ」

「ですよね。ありがとうございました」

仲村が言って蘭子と真理子のアパートを去る


帰り道

蘭子と仲村、並んで歩いている

「真理子さんにあんな過去があったなんて」

蘭子が言う

「酷い話ですよ。自分の旦那と姉ちゃんが出来ちゃうなんて」

仲村が憤慨しながら言う

「って事は、萌音さんと真理子さんが育てていた修斗君は異父姉弟って事になるわね」

蘭子が言う

「そういう事ッスね」

仲村が言う

「真理子さんの元旦那って人、気になるわね」



長野県

松本市

芝生の広い庭に龍があしらってある門

二階建ての一軒家

駐車場に黒の高級外車

松本ナンバー

「冨田」の表札

庭で修斗がサッカーボールで遊んでいる

蘭子と仲村、駐車場の車を見つつ、門の前に立っている

「黒の、松本ナンバーッスね」

仲村が言う

「確かに」

蘭子が言いながらインターホンを押す

「はい。どちら様ですか?」

インターホンから声がする

「長野県警の小白川蘭子と申します。少しお話聞かせて頂けませんか?」

インターホンのカメラに警察手帳を見せる

「はい。ちょっと待って」

ドアが開き冨田剛(41歳)が出て来て蘭子達を家に招き入れる

冨田家

リビング

甲冑数体と日本刀が飾られている

蘭子と仲村入って来る

ヒョウ柄のTシャツにヒョウ柄の短パンの冨田がいきなり

「いいでしょ?これ。あっ、勿論日本刀はレプリカだよ」

甲冑と日本刀を指さして言う

「えぇ」

蘭子、苦笑いする

冨田が蘭子と仲村に

「どうぞ、座って」

と言ったので、ソファーに座る

何とも軽いノリの冨田に圧倒される蘭子と仲村

「あの......」

蘭子が言うと

「義姉さんの事でしょ?」

と先回りされる

「はい」

蘭子が言う

「恨まれてるのは俺の方だよ。聞いてるだろ?修斗の事。義姉さんとの間に出来た子だよ。真理子と離婚して俺が引き取ったけど、義姉さん、俺の所にも良く来てたぜ。修斗を返せってね。義姉さんには萌音がいるんだし、修斗は絶対に渡さないって言ったら、義姉さん、私も絶対諦めないからね!って怒鳴って帰ってったよ。ああ見えて、凄く気が強い女(ひと)だったから、憎んでる人も結構居るんじゃない?最もあの女(ひと)の事一番恨んでたのは真理子だと思うけど。そう言えば真理子のヤツ釈放されたんだってね。で、真理子の次はオレってか」

高笑いする冨田

「何か私と同じキャラの匂いがする。やりづらいわね」

蘭子、小声で仲村に言い、仲村が笑いを堪える

「皆さんにお聞きしているのですが、事件当日の夜10時から午前0時位までどちらにいらっしゃいました?」

「あっ、アリバイってやつね。刑事ドラマみたい」

「は、はい」

蘭子が言う

「自分はその時間、この家に居たよ。証明出来る人?修斗だよ。修斗と一緒に寝てたんだから。大体さ、子供置いてきぼりで夜中に出歩けると思う?」

「恐れ入りますが、修斗君を呼んで頂けませんか?」

蘭子が言う

冨田が渋々窓を開けテラスから庭で遊んでいる修斗を呼ぶ

「修斗、ちょっと来い」

修斗、サッカーボールを持ってテラスからリビングに入って来る

「なあに?パパ」

「このオバチャンが修斗に話があるんだって」

「オバ、オバチャン?」

蘭子があたふたと仲村を見る

仲村、笑いを堪える

「修斗君、寝る時はいつもパパと一緒?」

蘭子が気を取り直して修斗に聴く

「うん。そうだよ」

「最近、夜、パパが居なかった日ってあるかな?」

「そんな日ないよ。パパが居なかったらボク直ぐ分かるもん」

「そっか。ありがとね」

蘭子、修斗の頭をポンポンと叩くと修斗はまた庭に出て行った

「ほらね。だから言ったっしょ?」

冨田が勝ち誇った様に言う

「お騒がせしました」

蘭子と仲村、冨田家を後にする








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