【完結】裏切りの刃 全10話

八千代 サラ

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9 · 確信犯

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まさのりの部屋


【リビング】

壁の時計は8時半を指していた

真理、時計を見て

「もう、こんな時間!」

慌てて部屋を出る



【あおぞら不動産】

真理がロッカーに荷物をしまっている

清水課長(30)が近づいて来た

真理が見上げる程の長身だ
爽やかな雰囲気で人気者

課長の方が年下だが真理も憧れの存在だ

「おはようございます」

「おはよっ。今日、吉川、休みだぞ」

「エッ、リッチャンお休みですか?」

「うん。身内に不幸があったって。朝、電話あって実家帰るって」

「リッチャンの実家ってどこですか?もしかして群馬ですか?」

「ううん。静岡。俺と一緒なの」

「そ、そうですか…」

胸を撫で下ろす真理



【リラックススペース】

真理、おにぎり1個とダイエットコーラ

ジリ~~ン ジリ~~ン

昼休みが終わる合図

席に着きへッドホンを着けて仕事を始める真理

「もしもし……また宜しくお願いします」

清水課長が書類を持って近付いて来た

「ちょっといい?」

真理、ヘッドホンを外して

「はい」

と言う

清水課長が書類を真理に見せて

「これさ、吉川の担当なんだけど、今、先方から電話が来て明日中に契約したいって言うんだよ。吉川、確認したら明日も休みでさ、今日、実家から日帰りで帰って来るって言ってたから夜でも吉川ん家言って印鑑もらって来てくんない?」

「電子書類じゃないんですか?」

「そうなんだよ。先方が結構高齢者で契約書は紙でないとダメってうるさくてさ」

困ったように言う清水課長

「分かりました。いいですよ」

4時になり真理が勝手に席を立つ

清水課長の側に行き

「お疲れ様でした」

と言う

「お疲れぃ。じゃ、例の件、宜しくぅ」

清水課長が立ち上がって真理の肩を軽く叩く

「分かりました」


【ロッカールーム】

真理、ロッカーからバッグを取り出し書類を入れる

出入口に行く



出入口

【自動扉】

指紋認証で開閉する扉

指紋認証がタイムカードと連動している

パートは時間になったら自由に帰って良いのだった

真理、認証をして自動扉から出る


廊下


真理、廊下を歩きながら腕時計を見る

4時半だ

「リッチャン、まだ帰って無いよね。一応電話してみるか」

真理、バッグからスマホを取り出すとそれを右手に持ったまま電話をするタイミングを見計らっていた

真っ直ぐ歩いて、突き当たりがエレベーターだ

エレベーターに着き「下」のボタンを押す

4階にエレベーターが上がって来て扉が開く

真理、エレベーターに乗り込み1階で降りる




真理、電話を掛ける

プルル…プルル…

「あっ、リッチャン」

「ま、真理さんっ」

「この度は御愁傷様でした」

「あ、ありがとうございます」

「今、どこ?」

「か、帰り道です」

「ちょっとね、リッチャンの顧客の件で清水課長から預かってる書類があって」

「はい!さっき清水課長から電話あって聞いてます!6時位には帰れると思います」

「じゃあ、その頃行くね」


帰り道


アイランド珈琲の前を通り掛かる

「ここで時間潰すか」

真理、中に入る



【アイランド珈琲】


席に座る真理

ロン毛のウエイターが来る

「いらっしゃいませ。今日はお一人ですか?」

「そうなの。いつものアイスコーヒーくれる?」

「畏まりました」

ウエイター去る

真理、スケジュール帳をバッグから取り出し記入し始める

ウエイターが

「お待たせしました」

アイスコーヒーを持って来


「ありがとう」

真理、ミルクを入れミルクが下に落ちていく様子を楽しそうに見ている

「この、マーブル模様が好きなのよね。飲むと所々味も違って美味しいの」

真理、マーブル模様が崩れないようにストローを差してアイスコーヒーを堪能した

腕時計を見ると5時半だった

「そろそろいっか」

真理、会計をして店を出る




梨津子のアパート


201号室


真理、書類を持って立っている

インターホンを押す

「はぁ~い」

タンクトップに短パン姿で梨津子が出て来た

「真理さん、すみません。暑いから上がって下さい。お茶でもどうぞ」

「そう、ありがとう」

真理、さっき、アイスコーヒーを飲んで来たにも関わらず上がり込む

ベッドの脇のソファーに座る

「ちょっとお待ち下さいね」

「うん」

真理、いつも、このベッドでまさのりと梨津子が情事を重ねているとは露知らず

「このベッド、存在感があって、カッコ良いね」

「私も、まー…」

思わず、マー君と言ってしまいそうになる梨津子

慌てて

「て、徹っちゃんも気に入ってるんです」

と言いながら梨津子がグラスに緑茶を入れて持って来る

ベッドの脇のサイドテーブルに置く

「ありがとう。いただきます」

真理、お茶を飲もうとして手を滑らせる

「あっ」

サイドテーブルの上にお茶を溢す

「ごめん、ごめん」

梨津子、タオルを持ってきて拭きながら

「ダイジョブですよ~」

となぜかご機嫌が宜しい

「それより、シャワー浴びて良いですか?出掛けてたから凄い汗で気持ち悪くて」

「気が付かなくてごめん。もちろんいいわよ。でも、その前に書類にハンコ押してくれる?」

「そうそう。そうですよね」

梨津子、TV台から印鑑を取り出して真理が持って来た書類にハンコを押す

「あの、大橋のおじいちゃん、いちいち煩いからやんなっちゃう」

「コラッ、お客様の事、そんな風に言わないの」

「はぁ~い」

「リッチャン薬用リップ持ってる?仕事中エアコン効き過ぎで唇荒れちゃって。今日、持ってくんの忘れちゃったの」

唇を舐めながら真理が言う

「有りますよ」

梨津子、自分のバッグから黒いシャネルの化粧ポーチを取り出す

「この中ですから勝手に使って下さい。シャワー行きますね」

「ありがとう」

真理、ポーチを開けてリップを探している

バスルームから『栞のテーマ』の鼻歌が聞こえる

「随分、ご機嫌ね」

真理が言う

すると

「エッ!」

真理、ある物を発見する

「何で!これが!」

そう、まさのりの車で見つけたあのコンパクトミラーだ

真理は恐る恐るコンパクトミラーを開ける

鏡に縦のヒビ

「確信犯だ!」

真理はそのミラーをこっそり自分のバッグにしまう

浮かれた様子の梨津子がシャワーから髪を拭きながら出て来た

「リ、リップ、ありがとう」

「いいえ」

真理は梨津子にポーチを返した

「私、帰るね」

「はぁ~い。お疲れ様でした。書類、宜しくお願いしま~す」

真理は書類を持って梨津子の家を後にした













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