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第二章 エウクラトア聖王国
55話 偵察⑤
しおりを挟む私のために怒ってくれたのはとても嬉しい。だけど、パーティー会場は突然の出来事にパニック状態。
「なんで突然大量の水が……?」
「それに砂まで……」
「しかも、教皇聖下と使徒様のところだけだそ?」
「これは神が怒っているのではありませんこと?」
「そうかもしれないわ……」
今度はザワザワと周りが騒がしくなる。
きっと精霊達がしたことだと気づかれないとは思うけど、一旦離れた方がいいかも……。
(みんな、私のために怒ってくれてありがとう。 でも、いきなり今みたいなことをしたら騒ぎになっちゃうよ)
もうなっているけどね。それこそ、リドとルフスが我慢してくれて良かった。風と火だからね。とても危ない……。
そう思うと精霊達なりに考えてのお仕置き?だったのかな……?
すると、精霊達は少し反省した態度を見せた。
(すみません……。 ついアマネ様のことを言われると……)
(今度からはもう少し規模の小さいお仕置きにします……)
(アマネ様ごめんなさい……)
(ごめんなさいなの……)
でも、お仕置きはするのね……。まあ、後で反省会をすることにしようと思う。
そう思っていると今まで黙っていたレイナードがぼそりとテレパシーを送ってきた。
(このくらいのお仕置きは当然です。 むしろこのくらいで済んだことをあの二人は感謝するべきことですね……)
あら、レイナードも意外と怒っていたのね……。
やっぱりクールダウンも兼ねてしばしここから離れよう。
会場の方も何やら動きがあった。
ギャーギャー騒いでいる教皇と偽者さんは枢機卿達の誘導により一時会場を後にするみたいだ。
ちなみにバルフォア公爵はこの会場にいる。教皇達にはついて行かなかったもよう。
会場は使用人さん達が急いで掃除をしていた。こんな状況でもお開きにはならないのね……。まあ、私の精霊達がこんな状況にしたのだけれどもね。
会場の者達は先程の出来事についての話で盛り上がっている。
どこからも『神の使徒様は本物なのか?』『神が怒っているのでは?』『本物は別にいるのではないか?』などといった声ばかり聞こえる。
なんか、みんな憶測に忙しいみたいだし、やはりここは私達もパーティー会場から離れることにする。
(みんなもう会場から出よう)
私がそう言うとレイナードも同意した。
(そうですね。 もう教皇達がいつ帰ってくるのか分からないですし)
それからリドが私に問いかけた。
(それではマーエル達と合流しますか?)
(うーん、どうしようかな? マーエル達、まだ会場にいるのかな?)
まだ、会場にいるのならちょっとめんどくさい。貴族令嬢もどきになるのはもう面倒……。
でも、あまりいないのもダメなのかな……。だけど、周りを見る限り話題は偽者さんだし……。
しばし考える。
もうちょっとこの混乱は続きそうだしな。それならいっそお城探検でも……、それは時間が無さ過ぎる。
どうしようか……と悩んでいると、シストが頭の中で声を上げた。
(アマネさま、おうじ、どこかにいくみたいだよ?)
シストの指す方へ視線を向けると混乱に紛れて何処かへと向かうようだった。
皇子は偽者さん達とは一緒に退場しなかったのね。それにしても、皇子が一人会場にいたら誰かは話しかけるでしょうに誰も気づかなかったのかな……?
……もしや、私と同じように魔法を使っている?じっと見ていなかったから気づかなかったかも。
これは気になる……。
よし!そうと決まれば……。
(皇子について行ってみよう)
精霊達は、はいキターというように頷く。レイナードは何故か微笑ましそうに頷く。
それで、私達は皇子の後をついて行った。
皇子の後をつけること数分。皇子はパーティー会場から離れた人気のないところへと向かっている。
(一体どこへ行くのでしょう?)
(随分、静かな場所へ来ているようですが……)
リドとルフスが不思議そうに言う。
(レイナードはどこへ向かうか分かったりする?)
私達より、この国のことはレイナードの方が知っていると思って聞いてみた。
すると、レイナードは思い出すようにして言う。
(……確か、こちらの方角には教皇一族とその婚約者だけが入れる庭園があったはずです。 定かではありませんけど)
(へぇ~、そうなんだ。 だけど、その庭園に向かっているのだとしたら何故今行くのかな……?)
私の言葉にみんなも確かになんで今なのだろうと疑問に思った顔をする。
今はまだ教皇達が退出したとしてもパーティーは続いている。そんな中で皇子がどうして庭園に向かっているのか疑問に思う。
例えば誰かと逢瀬をするみたいに……。
……その例えばじゃない?
自分で思ってハッとした。皇子の想い人はきっとマルヴィナちゃんだと私は思う。
今思うとマルヴィナちゃんパーティー会場のどこにいた?
一度気づいてしまったらもうそうだとしか思えない。これは二人の逢瀬を邪魔したらダメだ!という気持ちと、ちょっと見たいかも……という邪な思いが喧嘩をしている。
そんな私が葛藤している中、精霊達やレイナードはどうしたの?といった様子で私のことを見ている。
(アマネ様、急にどうしたのですか?)
(いやね、なんでもないんだけど……。 いや、あるかな……?)
私の曖昧な答えに精霊達も少し混乱している。そうこうしているうちに皇子は目的の場所へと着いたようだった。
そして、そこで待っていたのは……。
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