聖女によって婚約者を取られ追放された公爵令嬢は魔王に保護される

ラキレスト

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30話

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「魔王様! わたくしが会いに来ましてよ~」

 そう派手な赤いドレスの女性が言います。

「エリザ嬢……。何故ここへ?」

 ヴィンス様は私と話す時と違い、無表情で淡々と話しています。

「それは魔王様がこちらにいらっしゃると聞いて会いに来ましたの!」

「私は今連れがいるのだが? 邪魔しに来たのか?」

「えっ? 連れ?」

 心なしかヴィンス様怒っていらっしゃる?それに赤いドレスの女性、全く私に気づいて無かったわ……。私って存在感なかったかしら?

 そんな事を思っていると赤いドレスの女性と目が合った。

「……えっ?」

「??」

 何故か赤いドレスの女性は私の顔を見るなりびっくりした様な顔になり固まった。

 なに?私の顔に何かついてる?

 疑問に思って思わず首を傾げると更にびっくりされた。

「動いていますわ! 魔王様! アレクサンドラ様がいますわ!」

「エリザ嬢、この方はアレクサンドラ様ではないぞ」

「じゃあ! どなたですの!?」

「彼女はアレクシア・テネーブル。パンテル王国の公爵令嬢さ。今は訳あってここにいる」

「初めまして、アレクシア・テネーブルと申しますわ」

 私は赤いドレスの女性に挨拶をしました。

「アレクシア様と言うのね! わたくしはエリザ・デイビスと申しますわ! それと魔王様の未来の婚約者ですわ」

「ヴィンス様の……」

 そ、そうですわよね……。ヴィンス様に婚約者がいてもおかしくないですもの……。私は何故か胸が痛くなりました。

「エリザ嬢! 嘘を言うな! アレクシア、誤解しないでくれ、エリザ嬢とは婚約者ではない!」

 ヴィンス様は私に必死の顔で訴えてきます。

 エリザ様はヴィンス様の婚約者ではない?ヴィンス様が言ったことに少し安心する私がいます。

「アレクシア様は魔王様のこと愛称で呼んでいますの?」

「えっと、ヴィンス様そう呼んで欲しいと言われたので……」

「そうだ、私がそう呼んで欲しいと頼んだのだ」

「そ、そんなことって……」

 エリザ様はプルプル震え始めました。

「魔王様! あんまりですわー! だってわたくしは愛称で呼んでいいとおっしゃらなかったですわー!」

 エリザ様が突然泣きながら訴えて来ました。私は突然のことに固まってしまいました。チラッと隣を見るとヴィンス様は無表情でした……。

「なんでですかー! こんなに魔王様の事が好きなのにー! うわぁーん!!」

 もうエリザ様は号泣と言っていいほど泣き出しました……。あまりにも号泣するので可哀想になってきました。

 だから私はそっとエリザ様に近づきました。
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