29 / 39
最期
しおりを挟む
「どうなの。答えなさい」
「……持っています」
「やはり。おまえが逆鱗を奪ったせいで、竜神様は神通力が発揮できずに大変困っているのよ。私がお返しするから、渡しなさい」
逆鱗がないと雨雲を呼べないのだろうか。那岐はそのようなことは、ひとことも語っていなかった。それに那岐が本来の力を発揮できずに困っていたのは、私に逆鱗を授ける前からのことだ。
けれど、那岐を助けるためなら何でもしたい。
私は袂から逆鱗の入った香り袋を取り出した。
那岐が授けてくれた大切な宝物。私を花嫁にするという証。
サヤは手のひらを差し出しているが、渡すことを躊躇する。
逆鱗を渡してしまえば、私の心のよすがが何もなくなってしまうという心許なさを覚えた。
「どうしたの? 早くしなさい」
サヤは苛立たしげに紅鼻緒のついた草履で足踏みをした。私がすぐに逆鱗を渡さないので、焦っているように見える。
「あの……本当に那岐に渡してくれますよね?」
「当たり前でしょう。盗人が盗んだ物を返す心配などしなくてよい」
「盗んだわけじゃありません。これは那岐が婚姻の証にと、私に授けてくれたんです」
サヤは目を見開いた。彼女は大きな衝撃を受けたようだった。
「竜族は生涯を誓う相手に逆鱗を授けるということを、なぜおまえが知っているの?」
「那岐がそう言ってたんです」
逆鱗を授けるのは、竜族に伝わる風習らしい。サヤも村長のように、村に伝わるという書物を紐解いて知ったのだろうか。
「黙れ! おまえのような穢れた生贄が竜神様の花嫁になるなどと、決して許さぬ!」
激昂したサヤは蔵の中に踏み込むと、私の手から奪うように香り袋を攫った。
「あっ……」
突き飛ばされた勢いで尻餅をついてしまう。身を翻したサヤは蔵を出て、走り去っていく。見張っていた門番がすぐに扉を閉めた。
あとには、静寂が広がる。
私は尻餅をついた体勢のまま、茫然としていた。
サヤは那岐に好意を抱いている。それなのに、生贄の私が逆鱗を持っていることが許せなかったのだろう。
サヤは本当に逆鱗を那岐に返してくれるのだろうか。
那岐のことが好きなら、サヤだって那岐を救いたいはずだ。逆鱗が神通力の源だとしたら、那岐に渡してすぐに雨を降らせてくれるだろう。
けれど、彼女の態度には不審を覚える。那岐を助けたいというより、逆鱗を自分のものにしたいという執着のほうが勝っている気がしたのだ。
私は首を振った。疑念を抱いてはいけない。サヤの良心を信じるしかない。
白鳩が飛び去っていった格子窓を見上げた。
格子窓は高いところにあり、手を伸ばしてもとても届かない。
「ス」と書かれた、一文字だけの手紙。
たとえ那岐が見てくれても、なんのことかわからないだろう。血文字なので不気味に思われるかもしれない。でも、どうしても伝えたかった。
どうか、那岐に届きますように。
そしてもう一度だけ、鳩さんが来てくれますように。
あと一文字だけ、手紙に託したい。
「逆鱗も、手紙もきっと那岐のところに届くよね。鳩さんもまた来てくれるよね」
私は明るい声を出して、希望を胸に抱いた。
それから数度の昼と夜が過ぎた。
五平は日に一度だけ膳を運んでくれる。その度に彼に状況を窺うが、始めに聞いた話から改善は見られなかった。
相変わらず那岐は樫の木に縛りつけられ、食事も水も与えられずに衰弱しているということを聞かされて、私の胸は千切れそうに痛む。
そのような環境で雨を降らせることなどできるはずがない。五平は異議を唱えたくても、茂蔵の暴行を恐れて訴えかけることができないようだ。村長もまた静観の姿勢を崩していないという。
「サヤ様は、那岐の逆鱗を届けてくれたんじゃないんですか?」
あの日以来、サヤは蔵にやってこない。無事に逆鱗を那岐に返せたのかは不明だ。五平は首を捻った。
「わからんのう……。サヤ様は竜神の社に行こうとしていない。茂蔵が見張っていて、危ないからじゃろう」
「そうですか……」
まだ返せていないようだ。鳩も訪れていないので、那岐に手紙を届けられたのかわからない。そのことを五平に訊ねるわけにもいかなかった。
今日の五平はなぜか落ち着きがなく、しきりに背後を気にしているようだった。私の顔を直視しようとせず、視線を彷徨わせている。
「五平さん……? どうかしましたか?」
その瞬間、目を見開いて私の姿を眼に焼き付けた五平は、がばりと額ずいた。
「すまなんだ! 許してくだされ!」
「……え?」
体を起こした五平は逃げるように蔵から走り去った。扉が閉められる刹那、複数の男たちが蔵の外にいる姿を目撃する。彼らは薪や藁束のようなものを抱えていた。
なんだろう。
何が行われるのだろう。
不安を覚えた私は、膳に置かれた練り菓子を敷いた和紙を咄嗟に手にした。
あと一文字。
噛み痕の残る指先は未だじくじくと痛んでいたが、また歯で噛み千切る。
「うぅ……」
痛みに耐えながら、和紙に血の滴る指先を滑らせる。白い紙に、真紅の血でどうにか文字を綴った。
余計な血が付いて汚れないよう、左手に乗せた和紙を乾くまで掲げる。右手の人差し指を血止めのため唇に銜えれば、鈍い鉄錆の味が口の中に広がった。
格子窓から、外にいる複数の男たちの声が漏れてくる。「そっちだ」「もういい」など、短く作業の指示を出しているようだった。がさり、がさりと木が擦れるような音がする。
男たちが手にしていた、薪や藁の音だろう。蔵の外に積んでおくのだろうか。
物音は蔵を一周すると、やがて止んだ。
男たちはどこかへ行ってしまったようで、何の気配もしなくなった。
不気味な静寂が広がる蔵の中で、ぽつりと佇んだ私は左手に乗せた血文字に目を落とす。
留めの部分で溜まった血は凝固したようだ。慌てたので文字が歪んでしまったけれど、読めるだろうか。
和紙を畳もうとしたとき、パチパチと火花が弾けるような音が耳を突いた。
無機質なその音は次第に大きくなる。続いて鼻を突く、焦げ臭い匂い。
「え、なに?」
格子窓のむこうには漆黒の煙が上がっていた。外に置かれた薪と藁が燃えているのだ。
私は和紙を握りしめて、出口の扉へ駆けた。頑丈な扉は外から錠が掛けられたままで、押しても引いてもびくともしない。外に門番がいるはずだ。
「火事です! ここを開けてください!」
だが返答はない。
「……持っています」
「やはり。おまえが逆鱗を奪ったせいで、竜神様は神通力が発揮できずに大変困っているのよ。私がお返しするから、渡しなさい」
逆鱗がないと雨雲を呼べないのだろうか。那岐はそのようなことは、ひとことも語っていなかった。それに那岐が本来の力を発揮できずに困っていたのは、私に逆鱗を授ける前からのことだ。
けれど、那岐を助けるためなら何でもしたい。
私は袂から逆鱗の入った香り袋を取り出した。
那岐が授けてくれた大切な宝物。私を花嫁にするという証。
サヤは手のひらを差し出しているが、渡すことを躊躇する。
逆鱗を渡してしまえば、私の心のよすがが何もなくなってしまうという心許なさを覚えた。
「どうしたの? 早くしなさい」
サヤは苛立たしげに紅鼻緒のついた草履で足踏みをした。私がすぐに逆鱗を渡さないので、焦っているように見える。
「あの……本当に那岐に渡してくれますよね?」
「当たり前でしょう。盗人が盗んだ物を返す心配などしなくてよい」
「盗んだわけじゃありません。これは那岐が婚姻の証にと、私に授けてくれたんです」
サヤは目を見開いた。彼女は大きな衝撃を受けたようだった。
「竜族は生涯を誓う相手に逆鱗を授けるということを、なぜおまえが知っているの?」
「那岐がそう言ってたんです」
逆鱗を授けるのは、竜族に伝わる風習らしい。サヤも村長のように、村に伝わるという書物を紐解いて知ったのだろうか。
「黙れ! おまえのような穢れた生贄が竜神様の花嫁になるなどと、決して許さぬ!」
激昂したサヤは蔵の中に踏み込むと、私の手から奪うように香り袋を攫った。
「あっ……」
突き飛ばされた勢いで尻餅をついてしまう。身を翻したサヤは蔵を出て、走り去っていく。見張っていた門番がすぐに扉を閉めた。
あとには、静寂が広がる。
私は尻餅をついた体勢のまま、茫然としていた。
サヤは那岐に好意を抱いている。それなのに、生贄の私が逆鱗を持っていることが許せなかったのだろう。
サヤは本当に逆鱗を那岐に返してくれるのだろうか。
那岐のことが好きなら、サヤだって那岐を救いたいはずだ。逆鱗が神通力の源だとしたら、那岐に渡してすぐに雨を降らせてくれるだろう。
けれど、彼女の態度には不審を覚える。那岐を助けたいというより、逆鱗を自分のものにしたいという執着のほうが勝っている気がしたのだ。
私は首を振った。疑念を抱いてはいけない。サヤの良心を信じるしかない。
白鳩が飛び去っていった格子窓を見上げた。
格子窓は高いところにあり、手を伸ばしてもとても届かない。
「ス」と書かれた、一文字だけの手紙。
たとえ那岐が見てくれても、なんのことかわからないだろう。血文字なので不気味に思われるかもしれない。でも、どうしても伝えたかった。
どうか、那岐に届きますように。
そしてもう一度だけ、鳩さんが来てくれますように。
あと一文字だけ、手紙に託したい。
「逆鱗も、手紙もきっと那岐のところに届くよね。鳩さんもまた来てくれるよね」
私は明るい声を出して、希望を胸に抱いた。
それから数度の昼と夜が過ぎた。
五平は日に一度だけ膳を運んでくれる。その度に彼に状況を窺うが、始めに聞いた話から改善は見られなかった。
相変わらず那岐は樫の木に縛りつけられ、食事も水も与えられずに衰弱しているということを聞かされて、私の胸は千切れそうに痛む。
そのような環境で雨を降らせることなどできるはずがない。五平は異議を唱えたくても、茂蔵の暴行を恐れて訴えかけることができないようだ。村長もまた静観の姿勢を崩していないという。
「サヤ様は、那岐の逆鱗を届けてくれたんじゃないんですか?」
あの日以来、サヤは蔵にやってこない。無事に逆鱗を那岐に返せたのかは不明だ。五平は首を捻った。
「わからんのう……。サヤ様は竜神の社に行こうとしていない。茂蔵が見張っていて、危ないからじゃろう」
「そうですか……」
まだ返せていないようだ。鳩も訪れていないので、那岐に手紙を届けられたのかわからない。そのことを五平に訊ねるわけにもいかなかった。
今日の五平はなぜか落ち着きがなく、しきりに背後を気にしているようだった。私の顔を直視しようとせず、視線を彷徨わせている。
「五平さん……? どうかしましたか?」
その瞬間、目を見開いて私の姿を眼に焼き付けた五平は、がばりと額ずいた。
「すまなんだ! 許してくだされ!」
「……え?」
体を起こした五平は逃げるように蔵から走り去った。扉が閉められる刹那、複数の男たちが蔵の外にいる姿を目撃する。彼らは薪や藁束のようなものを抱えていた。
なんだろう。
何が行われるのだろう。
不安を覚えた私は、膳に置かれた練り菓子を敷いた和紙を咄嗟に手にした。
あと一文字。
噛み痕の残る指先は未だじくじくと痛んでいたが、また歯で噛み千切る。
「うぅ……」
痛みに耐えながら、和紙に血の滴る指先を滑らせる。白い紙に、真紅の血でどうにか文字を綴った。
余計な血が付いて汚れないよう、左手に乗せた和紙を乾くまで掲げる。右手の人差し指を血止めのため唇に銜えれば、鈍い鉄錆の味が口の中に広がった。
格子窓から、外にいる複数の男たちの声が漏れてくる。「そっちだ」「もういい」など、短く作業の指示を出しているようだった。がさり、がさりと木が擦れるような音がする。
男たちが手にしていた、薪や藁の音だろう。蔵の外に積んでおくのだろうか。
物音は蔵を一周すると、やがて止んだ。
男たちはどこかへ行ってしまったようで、何の気配もしなくなった。
不気味な静寂が広がる蔵の中で、ぽつりと佇んだ私は左手に乗せた血文字に目を落とす。
留めの部分で溜まった血は凝固したようだ。慌てたので文字が歪んでしまったけれど、読めるだろうか。
和紙を畳もうとしたとき、パチパチと火花が弾けるような音が耳を突いた。
無機質なその音は次第に大きくなる。続いて鼻を突く、焦げ臭い匂い。
「え、なに?」
格子窓のむこうには漆黒の煙が上がっていた。外に置かれた薪と藁が燃えているのだ。
私は和紙を握りしめて、出口の扉へ駆けた。頑丈な扉は外から錠が掛けられたままで、押しても引いてもびくともしない。外に門番がいるはずだ。
「火事です! ここを開けてください!」
だが返答はない。
0
あなたにおすすめの小説
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜
丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。
与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。
専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、
失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。
そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、
セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。
「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」
彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、
彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。
嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、
広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、
独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。
栄養と愛情を取り戻したセレナは、
誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、
社交界で注目される存在となる。
一方、セレナを失った伯爵家は、
彼女の能力なしでは立ち行かず、
ゆっくりと没落していくのだった――。
虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
【3月中――完結!】
積み上がった伏線の回収目前!!
夫にも子どもにも、私は選ばれなかった。
長年の裏切りを抱え、離縁状を置いて家を出た――。
待っていたのは、凍てつく絶望。
けれど同時に、それは残酷な運命の扉が開く瞬間でもあった。
「夫は愛人と生きればいい。
今さら縋られても、裏切ったあなたを許す力など残っていない」
それでも私は誓う――
「子どもたちの心だけは、必ず取り戻す」
歪で、完全な幸福――それとも、破滅。
“石”に翻弄された者たちの、狂おしい物語。
ため息ひとつ――王宮に散る花びらのように
柴田はつみ
恋愛
「離縁を、お願いしたいのです」
笑顔で、震えずに、エレナはそう言った。
夫は言葉を失った。泣いてくれれば、怒ってくれれば、まだ受け止め方があった。しかしあの静けさは、エレナがもう十分に泣き終わった後の顔だと、ヴィクトルにはわかった。
幼なじみと結ばれた三年間。すれ違いは静かに始まり、深紅のドレスの令嬢によって加速した。ため息を飲み込み、完璧な微笑みを保ち続けた公爵夫人が、最後に選んだのは――。
王宮に散る花びらのような、夫婦の崩壊と再生の物語。
辺境伯夫人は領地を紡ぐ
やまだごんた
恋愛
王命によりヴァルデン辺境伯に嫁ぐことになった、前ベルンシュタイン公爵令嬢のマルグリット。
しかし、彼女を待っていたのは60年にも及ぶ戦争で荒廃し、冬を越す薪すら足りない現実だった。
物資も人手も足りない中、マルグリットは領地の立て直しに乗り出す。
戦しか知らなかったと自省する夫と向き合いながら、少しずつ築かれていく夫婦の距離。
これは、1人の女性が領地を紡ぎ、夫と共に未来を作る「内政×溺愛」の物語です。
全50話の予定です
※表紙はイメージです
※アルファポリス先行公開(なろうにも転載予定です)
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
【完結】冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない
くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、
軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。
言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。
――そして初めて、夫は気づく。
自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。
一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、
「必要とされる存在」として歩き始めていた。
去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。
これは、失ってから愛に気づいた男と、
二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。
――今さら、遅いのです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる