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王の夜伽 1
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黄金の扉を開けてくれた召使いはラシードとセナが室内に足を踏み入れると、音も立てずに扉を閉じた。
セナはふと首を傾げる。
ラシードはいつ、庭や王宮の掃除をしろと命じてくれるのだろうか。王様が直接命令を下さず召使いの長に預けられるのかもしれないとも思ったが、王の私室と思われる室内には誰もいない。ここには今、ラシードとセナのふたりきりだ。
静寂に包まれた部屋の手前には金の装飾が施されたテーブルや椅子が置かれ、奥は薄布のカーテンが下ろされている。ラシードがカーテンをさらりと払い除けると、そこには豪奢な寝台が鎮座していた。
「ここに寝るのだ」
「……はい?」
突然の命令に眸を瞬かせる。この寝台は、王が休む場所ではないのだろうか。
ラシードは腕を伸ばしてセナの手首を掴んだ。有無を言わせぬ力強さに、びくりと体を竦ませる。
「眠れと命じているわけではない。そなたの体をよく見せるのだ。特にその下腹の紋様を」
はらりとマントは体から剥がれ落ちた。床に落ちれば、一糸纏わぬセナの裸身が晒される。ラシードは鋭い双眸でセナの翡翠の色をした眸を見つめていた。
「は、はい。ご主人様」
主人の命令には何であっても従わなければならない。セナはおずおずと柔らかな寝台に膝から乗り上げる。
「ご主人様というのは、やめろ。私のことは名で呼べ」
「かしこまりました。ラシードさま」
ラシードにゆっくりと肩を押されて、仰向けに横たわる。ふわりとしたリネンに体を包まれた。こんなにも柔らかい寝具に包まれるのは初めてのことだが、心地良さよりも戸惑いがセナの心を占める。
奴隷市場でもラシードは下腹の紋様に着目していたようだった。セナを買ってくれたことと、何か関係があるのだろうか。
セナのすべては王に見下ろされている。
胸の飾りも、淡い茂みも、花芯すらも。
羞恥に身を震わせていると、すっと手を伸ばしたラシードは下腹の紋様に触れた。
「んっ……」
なぜかそこを触られると、微かな疼きを覚えてしまう。
身を捩るセナに、ラシードは感嘆の息を零した。
「やはりそうだ。これは淫神の紋様だ」
「……え」
淫神とは、イルハーム神の別名だ。
トルキア国の守護神であるイルハームは豊穣と繁栄、そして快楽を司る。
神代でイルハームは様々な神と交わり、神の子を産んで大地に恵みをもたらしたという神話が語り継がれている。それゆえ快楽は命の源であり、豊穣と繁栄の親であるとされてきた。一説によれば、イルハームが産んだ神の子の末裔がトルキア国の祖であるといわれている。
「これが……ですか? 生まれたときからある痣だと思っていました」
母や兄を捜すための唯一の手がかりだと思っていたが、まさか淫神の紋様だとは知らなかった。確かにイルハーム神の右手には紋様が刻まれているが、セナの下腹とは形状がまるで異なるのだが。
「今のところは紋様の欠片だがな。私の精を受けることによって、淫紋は完成する」
精を受けるとは、どういう意味なのか。セナは眸を瞬かせた。
「あ……何かを、かけるのですか?」
無垢な疑問に、ラシードは優雅な微笑みを返す。それは気品に満ちているのに、どこか雄の嗜虐を滲ませていた。
「そのとおりだ。私に抱かれて、淫神の贄となれ」
「淫神の、贄……?」
セナの頭をゆっくりと撫でたラシードの大きな手のひらが、頬に滑り落ちる。
頬を包まれて、その温かな感触に思わず眸を閉じると、唇を柔らかいもので塞がれた。
「ん……」
ふわりと唇に押し当てられて、陶然とした息を零す。
やわらかい。あたたかい。こんなにも心地良いものに触れたのは、生まれて初めてだ。
薄らと瞼を開けば、ラシードの漆黒の眸が眇められて、間近からセナを見据えていた。
「あ……」
王に、接吻されている。
初めて口づけを交わしたセナは驚きのあまり、慌てて身を起こそうとした。
けれどラシードにきつく抱きしめられて叶わない。
ラシードの体の重みを受けながら、セナはシーツに縫い止められる。
「んん……、ぁ、ふ、ラシー……ん、ん」
口づけは深いものになり、角度を変えて貪られた。上唇と下唇を交互に食まれ、唇の合わせを舌でなぞられて、未知の快感が湧き上がる。
「あぁ……」
セナはふと首を傾げる。
ラシードはいつ、庭や王宮の掃除をしろと命じてくれるのだろうか。王様が直接命令を下さず召使いの長に預けられるのかもしれないとも思ったが、王の私室と思われる室内には誰もいない。ここには今、ラシードとセナのふたりきりだ。
静寂に包まれた部屋の手前には金の装飾が施されたテーブルや椅子が置かれ、奥は薄布のカーテンが下ろされている。ラシードがカーテンをさらりと払い除けると、そこには豪奢な寝台が鎮座していた。
「ここに寝るのだ」
「……はい?」
突然の命令に眸を瞬かせる。この寝台は、王が休む場所ではないのだろうか。
ラシードは腕を伸ばしてセナの手首を掴んだ。有無を言わせぬ力強さに、びくりと体を竦ませる。
「眠れと命じているわけではない。そなたの体をよく見せるのだ。特にその下腹の紋様を」
はらりとマントは体から剥がれ落ちた。床に落ちれば、一糸纏わぬセナの裸身が晒される。ラシードは鋭い双眸でセナの翡翠の色をした眸を見つめていた。
「は、はい。ご主人様」
主人の命令には何であっても従わなければならない。セナはおずおずと柔らかな寝台に膝から乗り上げる。
「ご主人様というのは、やめろ。私のことは名で呼べ」
「かしこまりました。ラシードさま」
ラシードにゆっくりと肩を押されて、仰向けに横たわる。ふわりとしたリネンに体を包まれた。こんなにも柔らかい寝具に包まれるのは初めてのことだが、心地良さよりも戸惑いがセナの心を占める。
奴隷市場でもラシードは下腹の紋様に着目していたようだった。セナを買ってくれたことと、何か関係があるのだろうか。
セナのすべては王に見下ろされている。
胸の飾りも、淡い茂みも、花芯すらも。
羞恥に身を震わせていると、すっと手を伸ばしたラシードは下腹の紋様に触れた。
「んっ……」
なぜかそこを触られると、微かな疼きを覚えてしまう。
身を捩るセナに、ラシードは感嘆の息を零した。
「やはりそうだ。これは淫神の紋様だ」
「……え」
淫神とは、イルハーム神の別名だ。
トルキア国の守護神であるイルハームは豊穣と繁栄、そして快楽を司る。
神代でイルハームは様々な神と交わり、神の子を産んで大地に恵みをもたらしたという神話が語り継がれている。それゆえ快楽は命の源であり、豊穣と繁栄の親であるとされてきた。一説によれば、イルハームが産んだ神の子の末裔がトルキア国の祖であるといわれている。
「これが……ですか? 生まれたときからある痣だと思っていました」
母や兄を捜すための唯一の手がかりだと思っていたが、まさか淫神の紋様だとは知らなかった。確かにイルハーム神の右手には紋様が刻まれているが、セナの下腹とは形状がまるで異なるのだが。
「今のところは紋様の欠片だがな。私の精を受けることによって、淫紋は完成する」
精を受けるとは、どういう意味なのか。セナは眸を瞬かせた。
「あ……何かを、かけるのですか?」
無垢な疑問に、ラシードは優雅な微笑みを返す。それは気品に満ちているのに、どこか雄の嗜虐を滲ませていた。
「そのとおりだ。私に抱かれて、淫神の贄となれ」
「淫神の、贄……?」
セナの頭をゆっくりと撫でたラシードの大きな手のひらが、頬に滑り落ちる。
頬を包まれて、その温かな感触に思わず眸を閉じると、唇を柔らかいもので塞がれた。
「ん……」
ふわりと唇に押し当てられて、陶然とした息を零す。
やわらかい。あたたかい。こんなにも心地良いものに触れたのは、生まれて初めてだ。
薄らと瞼を開けば、ラシードの漆黒の眸が眇められて、間近からセナを見据えていた。
「あ……」
王に、接吻されている。
初めて口づけを交わしたセナは驚きのあまり、慌てて身を起こそうとした。
けれどラシードにきつく抱きしめられて叶わない。
ラシードの体の重みを受けながら、セナはシーツに縫い止められる。
「んん……、ぁ、ふ、ラシー……ん、ん」
口づけは深いものになり、角度を変えて貪られた。上唇と下唇を交互に食まれ、唇の合わせを舌でなぞられて、未知の快感が湧き上がる。
「あぁ……」
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