20 / 153
神の子 2
しおりを挟む
はっとしてセナは背筋を正す。
まだ終わったわけではないのだ。また、あのように大勢の男たちに貫かれて精を注がれるのだろうか。
ぶるりと身を震わせるセナの不安を見越したかのように、ラシードは優しい微笑みをむけた。
「安心せよ。奉納の儀は一度きりだ。あの儀式はイルハームへ快楽を捧げるためのもので、いわば神へ伺いを立てる意味合いを持つ」
「そうなんですね」
もう男たちに嬲られることはないのだ。それにやはりラシードは先日の行為を神聖な儀式として捉えているので、他の男たちに抱かれたセナを穢らわしいと思う考えはないようだ。
ほっとしたセナは肩の力を抜く。けれど次のラシードの言葉に、胸がざわめいた。
「本格的な儀式はこれからだ。次は受胎の儀だからな」
「受胎……ですか」
受胎とは、胎児を授かるという意味ではないだろうか。まさかという思いが脳裏を掠める。
ラシードは立ち上がり、セナに手のひらを差し出した。
「詳しいことは後ほど説明しよう。まずは医師の診察を受けてもらう。おいで」
彼の温かい手のひらに自らの手を重ね合わせる。手をつながれて誘われた先は、王宮の奥にあるラシードの寝室だった。以前抱かれたことのあるその部屋には老齢の医師が控えていた。現れたラシードに医師は頭を下げる。
「……あ」
それに、ハリルも同席していた。彼は憮然とした表情で腕を組み、柱に凭れている。
儀式をすべて見られた後なので顔を合わせるのは気まずかった。俯いたセナはラシードに導かれて、王の寝台に寝そべる。丁寧にセナの体を診察した医師は、最後に脱がせたローブを裸身のセナにかけて頭を垂れる。
「どうだ」
なぜかラシードは緊張を滲ませて医師に訊ねた。医師は慇懃に返答する。
「贄さまにおかれましては、発情期の兆候が見られます。現在のところ、妊娠は致しておりません」
セナはローブの前を掻き合わせながら身を起こした。
発情期になればオメガは妊娠する確率が高まる。これまでの儀式では妊娠しなかったようだが、今後の性交では孕む可能性が大いにあるということだ。
そうか、とラシードは笑みを浮かべて鷹揚に頷く。どうやら彼の希望どおりの診断結果が出されたようだ。
「僕……発情期なんですか? 初めてなんですけど、まさか、今まで来なかったのに」
もう二十歳になるが、今まで発情期は訪れていなかった。それがここにきて発症してしまったのだろうか。
動揺して訊ねると、医師は噛み砕くように解説してくれる。
「発情期が訪れる年齢は個人差がございます。発情の程度も人によります。贄さまは特にゆっくりと発情なさる体質なのでございましょう」
オメガは発情すれば、性交することしか考えられなくなるという。セナも発情期に入ったオメガを幾人も見てきたが、アルファを求めて精をねだるさまは、それは可哀想なものだった。けれど自分も既に、そのように変貌してしまったのだ。奉納の儀で淫らに雄を銜え込み、乱れたのだから。
あれは淫紋のせいなのだろうと思っていたが、自分の中にあるオメガの本性だったのだろうか。
「淫紋は関係ないのか? 快楽を感じると下腹の淫紋がうねるんだ」
セナの疑問をハリルが代弁してくれる。医師は首を横に振った。
「神の伝承についてはわたくしは管轄外ですから分かりかねます。ただ淫紋により快楽を得る体質に変化したと考えれば、発情期との複合ということになりましょう」
オメガとして発情期が訪れたばかりか、淫紋により快楽も得てしまうという。確かに男たちに体を嬲られたとき、下腹が熱くなって紋様が蠢くほど快楽は増幅された。最後には心地良さに我を失ってしまった。
今後も、あんな風に淫らな男娼のように乱れてしまうのだろうか。
怖れを抱いたセナの背を支えながら、ラシードは医師に問う。
「発情期が訪れたということは、孕むということだな」
「そのとおりでございます」
ラシードが安堵したことが、彼の手のひらから伝わる。医師を退室させると、ラシードはセナを導いてソファに座らせた。向かいにハリルも腰を下ろす。
「受胎の儀だが、今夜から執り行おう」
力強いラシードの言葉はハリルに告げられたものらしい。
「了解した。早いほうがいい。俺も我慢の限界だからな」
ハリルは即座に同意した。どうやら受胎の儀には、王の従兄弟であるハリルも参加するようだ。
受胎。そして発情期。そこから導かれる結論はひとつしかない。
「あの……僕が、子を孕むための儀式でしょうか?」
決意が秘められたふたりの顔を交互に見遣る。ハリルは可笑しそうに鼻で嗤った。
「当たり前だろう。神の末裔である俺たちふたりに、交互に抱かれてもらうぞ。今夜からな」
「こ、交互に……!?」
まだ終わったわけではないのだ。また、あのように大勢の男たちに貫かれて精を注がれるのだろうか。
ぶるりと身を震わせるセナの不安を見越したかのように、ラシードは優しい微笑みをむけた。
「安心せよ。奉納の儀は一度きりだ。あの儀式はイルハームへ快楽を捧げるためのもので、いわば神へ伺いを立てる意味合いを持つ」
「そうなんですね」
もう男たちに嬲られることはないのだ。それにやはりラシードは先日の行為を神聖な儀式として捉えているので、他の男たちに抱かれたセナを穢らわしいと思う考えはないようだ。
ほっとしたセナは肩の力を抜く。けれど次のラシードの言葉に、胸がざわめいた。
「本格的な儀式はこれからだ。次は受胎の儀だからな」
「受胎……ですか」
受胎とは、胎児を授かるという意味ではないだろうか。まさかという思いが脳裏を掠める。
ラシードは立ち上がり、セナに手のひらを差し出した。
「詳しいことは後ほど説明しよう。まずは医師の診察を受けてもらう。おいで」
彼の温かい手のひらに自らの手を重ね合わせる。手をつながれて誘われた先は、王宮の奥にあるラシードの寝室だった。以前抱かれたことのあるその部屋には老齢の医師が控えていた。現れたラシードに医師は頭を下げる。
「……あ」
それに、ハリルも同席していた。彼は憮然とした表情で腕を組み、柱に凭れている。
儀式をすべて見られた後なので顔を合わせるのは気まずかった。俯いたセナはラシードに導かれて、王の寝台に寝そべる。丁寧にセナの体を診察した医師は、最後に脱がせたローブを裸身のセナにかけて頭を垂れる。
「どうだ」
なぜかラシードは緊張を滲ませて医師に訊ねた。医師は慇懃に返答する。
「贄さまにおかれましては、発情期の兆候が見られます。現在のところ、妊娠は致しておりません」
セナはローブの前を掻き合わせながら身を起こした。
発情期になればオメガは妊娠する確率が高まる。これまでの儀式では妊娠しなかったようだが、今後の性交では孕む可能性が大いにあるということだ。
そうか、とラシードは笑みを浮かべて鷹揚に頷く。どうやら彼の希望どおりの診断結果が出されたようだ。
「僕……発情期なんですか? 初めてなんですけど、まさか、今まで来なかったのに」
もう二十歳になるが、今まで発情期は訪れていなかった。それがここにきて発症してしまったのだろうか。
動揺して訊ねると、医師は噛み砕くように解説してくれる。
「発情期が訪れる年齢は個人差がございます。発情の程度も人によります。贄さまは特にゆっくりと発情なさる体質なのでございましょう」
オメガは発情すれば、性交することしか考えられなくなるという。セナも発情期に入ったオメガを幾人も見てきたが、アルファを求めて精をねだるさまは、それは可哀想なものだった。けれど自分も既に、そのように変貌してしまったのだ。奉納の儀で淫らに雄を銜え込み、乱れたのだから。
あれは淫紋のせいなのだろうと思っていたが、自分の中にあるオメガの本性だったのだろうか。
「淫紋は関係ないのか? 快楽を感じると下腹の淫紋がうねるんだ」
セナの疑問をハリルが代弁してくれる。医師は首を横に振った。
「神の伝承についてはわたくしは管轄外ですから分かりかねます。ただ淫紋により快楽を得る体質に変化したと考えれば、発情期との複合ということになりましょう」
オメガとして発情期が訪れたばかりか、淫紋により快楽も得てしまうという。確かに男たちに体を嬲られたとき、下腹が熱くなって紋様が蠢くほど快楽は増幅された。最後には心地良さに我を失ってしまった。
今後も、あんな風に淫らな男娼のように乱れてしまうのだろうか。
怖れを抱いたセナの背を支えながら、ラシードは医師に問う。
「発情期が訪れたということは、孕むということだな」
「そのとおりでございます」
ラシードが安堵したことが、彼の手のひらから伝わる。医師を退室させると、ラシードはセナを導いてソファに座らせた。向かいにハリルも腰を下ろす。
「受胎の儀だが、今夜から執り行おう」
力強いラシードの言葉はハリルに告げられたものらしい。
「了解した。早いほうがいい。俺も我慢の限界だからな」
ハリルは即座に同意した。どうやら受胎の儀には、王の従兄弟であるハリルも参加するようだ。
受胎。そして発情期。そこから導かれる結論はひとつしかない。
「あの……僕が、子を孕むための儀式でしょうか?」
決意が秘められたふたりの顔を交互に見遣る。ハリルは可笑しそうに鼻で嗤った。
「当たり前だろう。神の末裔である俺たちふたりに、交互に抱かれてもらうぞ。今夜からな」
「こ、交互に……!?」
50
あなたにおすすめの小説
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
オメガ修道院〜破戒の繁殖城〜
トマトふぁ之助
BL
某国の最北端に位置する陸の孤島、エゼキエラ修道院。
そこは迫害を受けやすいオメガ性を持つ修道士を保護するための施設であった。修道士たちは互いに助け合いながら厳しい冬越えを行っていたが、ある夜の訪問者によってその平穏な生活は終焉を迎える。
聖なる家で嬲られる哀れな修道士たち。アルファ性の兵士のみで構成された王家の私設部隊が逃げ場のない極寒の城を蹂躙し尽くしていく。その裏に棲まうものの正体とは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる