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脱出 2
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床に秘密の地図が映し出されるのかと思ったが、そういうわけではなさそうだ。アミュレット自体が光り輝くといった現象も起こらない。
単なるお守りだったのだろうか。
セナは目を凝らしてペンダントトップを覗き込む。
すると、漆黒のアミュレットが光に透けていた。どうやら中は空洞のようだ。針金のような細い物体の影が見て取れる。
「中に何か入ってる……。もしかして、取り出せるのかな?」
振っても音はしないので、中身があるだなんて全く知らずにいた。
角を押してみたが、長方形のペンダントトップは蓋を開ける構造ではないらしく、びくともしない。
まさか、壊さないと取り出せないのだろうか。
できれば割りたくはない。
セナが苦慮しながらあちらこちらの面を押したり摘まんだりしていると、ふいに片面がくるりと回転した。
「あっ! ここをちょっと押してから回せばいいんだ」
無事にアミュレットを開けることができた。
中に入っていたのは真鍮製と思しき、小さな鍵のようなものだった。それが内部の突起に嵌め込まれているので、振っても動かない構造なのである。
これは偶然に入ったものではない。
このアミュレットは、鍵を隠しておくために作られたのだ。
「兄さまが僕を守ると言って渡してくれたのは、この鍵……え、でも、これって鍵なのかな?」
取り出してみると、鍵と称するには複雑すぎる形状だ。
短い棒からは、いくつもの突起が出ている。まるですべての鍵穴に対応する鍵の形を集めたかのようだ。
鍵を観察していたセナは、はっとした。
「まさか……リガラ城砦のすべての扉を開くことができる王の鍵……⁉」
リガラ城砦が建設されたのは遙か昔だが、当時の王がすべての扉を開ける鍵を作成させ、それをラシードが受け継いでいても不思議ではない。
ここはベルーシャ国との国境が近い重要な拠点であり、地下にはイルハーム神の授けた神器が眠っているのだ。何かあったときのためにと、こういった秘密の道具が作成されたのかもしれない。
「ということは、これで地下牢の鍵も開けられる……?」
全裸だったセナは慌てて神の贄のローブを纏った。この鍵がすべての扉に通用するなら、まずは施錠された寝室の扉が開けられるはずだ。
幸い、見張りの兵士はアポロニオスと共に会議室へ向かっていったのを、足音で確認している。セナが寝室を出たとしても誰にも見咎められない。
緊張に手を震わせながら、鍵穴に鍵を差し込む。
カチリ、と手応えがあった。
把手を押すと、あっけなく重厚な扉は開いてしまった。
「開いた……!」
やはり、これは王の鍵なのだ。これを使用すれば、囚われたアルファたちを助け出すことができるかもしれない。アポロニオスがいない今しかチャンスはない。
セナは廊下に誰もいないことを確認して、素早く階段へ走った。
寝室は最上階らしく、長い石の階段が遙か下方まで続いている。
辺りに人の気配はない。会議中なので、多くの兵士がそちらへ行っているのだと思われた。
「地下牢はどこかな……。とにかく、下へ……」
そのとき、コツコツと足音が近づいてきた。
誰かが階段を上ってくる!
息を呑んだセナは手近な階に身を躍らせて、目についた粗末な扉を開けた。物置らしく、鍵はかかっていない。
身を潜めて息を殺していると、やがて足音は遠ざかっていった。
ふう、と強張らせていた肩から力を抜く。
危ないところだった。この服装では、神の贄ですと公言しているようなものである。目立たないよう、外套のようなローブを入手できないだろうか。
室内を振り返ると、そこにはずらりと革製の防具が陳列してあった。
どうやらここは、兵士たちが装備する防具の保管場所として使っているらしい。
「これを借りようかな……。無断ですけどお借りします」
誰もいないが、人の物なので断りを入れておく。
しかし巨人族の兵士が装備するものなので、どれもとても大きなサイズだ。セナはもっとも小さなものを選び、胸当てと脚絆、篭手、それからヘルメットを装着した。
顔も体も、すっぽりと隠れてしまう。顔が見えないのはよいのだが、まるで子どもが大人の服を借りて着ているように見えてしまうかもしれない。
ここには武器は置いていないようで、剣などはなかった。もっともセナには武器など扱えないので、剣を振るえば自分が怪我をしてしまいそうである。
「これでいいかな……。白のローブ姿よりは、ましだよね。よし、行こう!」
勇気を奮い立たせて扉を開ける。
その途端、眼前に現れた人物に、セナは悲鳴を上げそうになった。
単なるお守りだったのだろうか。
セナは目を凝らしてペンダントトップを覗き込む。
すると、漆黒のアミュレットが光に透けていた。どうやら中は空洞のようだ。針金のような細い物体の影が見て取れる。
「中に何か入ってる……。もしかして、取り出せるのかな?」
振っても音はしないので、中身があるだなんて全く知らずにいた。
角を押してみたが、長方形のペンダントトップは蓋を開ける構造ではないらしく、びくともしない。
まさか、壊さないと取り出せないのだろうか。
できれば割りたくはない。
セナが苦慮しながらあちらこちらの面を押したり摘まんだりしていると、ふいに片面がくるりと回転した。
「あっ! ここをちょっと押してから回せばいいんだ」
無事にアミュレットを開けることができた。
中に入っていたのは真鍮製と思しき、小さな鍵のようなものだった。それが内部の突起に嵌め込まれているので、振っても動かない構造なのである。
これは偶然に入ったものではない。
このアミュレットは、鍵を隠しておくために作られたのだ。
「兄さまが僕を守ると言って渡してくれたのは、この鍵……え、でも、これって鍵なのかな?」
取り出してみると、鍵と称するには複雑すぎる形状だ。
短い棒からは、いくつもの突起が出ている。まるですべての鍵穴に対応する鍵の形を集めたかのようだ。
鍵を観察していたセナは、はっとした。
「まさか……リガラ城砦のすべての扉を開くことができる王の鍵……⁉」
リガラ城砦が建設されたのは遙か昔だが、当時の王がすべての扉を開ける鍵を作成させ、それをラシードが受け継いでいても不思議ではない。
ここはベルーシャ国との国境が近い重要な拠点であり、地下にはイルハーム神の授けた神器が眠っているのだ。何かあったときのためにと、こういった秘密の道具が作成されたのかもしれない。
「ということは、これで地下牢の鍵も開けられる……?」
全裸だったセナは慌てて神の贄のローブを纏った。この鍵がすべての扉に通用するなら、まずは施錠された寝室の扉が開けられるはずだ。
幸い、見張りの兵士はアポロニオスと共に会議室へ向かっていったのを、足音で確認している。セナが寝室を出たとしても誰にも見咎められない。
緊張に手を震わせながら、鍵穴に鍵を差し込む。
カチリ、と手応えがあった。
把手を押すと、あっけなく重厚な扉は開いてしまった。
「開いた……!」
やはり、これは王の鍵なのだ。これを使用すれば、囚われたアルファたちを助け出すことができるかもしれない。アポロニオスがいない今しかチャンスはない。
セナは廊下に誰もいないことを確認して、素早く階段へ走った。
寝室は最上階らしく、長い石の階段が遙か下方まで続いている。
辺りに人の気配はない。会議中なので、多くの兵士がそちらへ行っているのだと思われた。
「地下牢はどこかな……。とにかく、下へ……」
そのとき、コツコツと足音が近づいてきた。
誰かが階段を上ってくる!
息を呑んだセナは手近な階に身を躍らせて、目についた粗末な扉を開けた。物置らしく、鍵はかかっていない。
身を潜めて息を殺していると、やがて足音は遠ざかっていった。
ふう、と強張らせていた肩から力を抜く。
危ないところだった。この服装では、神の贄ですと公言しているようなものである。目立たないよう、外套のようなローブを入手できないだろうか。
室内を振り返ると、そこにはずらりと革製の防具が陳列してあった。
どうやらここは、兵士たちが装備する防具の保管場所として使っているらしい。
「これを借りようかな……。無断ですけどお借りします」
誰もいないが、人の物なので断りを入れておく。
しかし巨人族の兵士が装備するものなので、どれもとても大きなサイズだ。セナはもっとも小さなものを選び、胸当てと脚絆、篭手、それからヘルメットを装着した。
顔も体も、すっぽりと隠れてしまう。顔が見えないのはよいのだが、まるで子どもが大人の服を借りて着ているように見えてしまうかもしれない。
ここには武器は置いていないようで、剣などはなかった。もっともセナには武器など扱えないので、剣を振るえば自分が怪我をしてしまいそうである。
「これでいいかな……。白のローブ姿よりは、ましだよね。よし、行こう!」
勇気を奮い立たせて扉を開ける。
その途端、眼前に現れた人物に、セナは悲鳴を上げそうになった。
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