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運命の番 1
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正妃に昇格して、天を推薦してくれたエドの地位を盤石なものとし、恩を返さなくてはならない。理屈では重々承知している。それなのに、エドのことを忘れよう、考えないようにしようと思うほど、彼の面差しが瞼の裏から離れない。抱き上げてくれた逞しい腕や、熱い舌による愛撫の感触は仄かに皮膚に残り、まるで熾火が燻るかのように甘くこの身を焦がしている。
エドのぬくもりを失いたくない。それなのにオメガの身体は雄を求めて発情している。雄に貫かれることを望む身体の奥底から濃密な蜜を滴らせ、股の間を濡らしていた。慣例により下穿きは着けていない。もぞりと膝頭を擦り合わせれば、今すぐに自分を慰めてしまいたい衝動が突き上げる。
でも、それでは駄目だと身体が教える。
アルファの子種を身体の奥深くに注がれなければならないと、オメガの本能が訴える。
発情した自らの身体を抱きしめた天は、己に課せられた責務と恋心との狭間で揺れ動いた。
「エド……」
愛しいひとの名を呟き、襟元に手を伸ばしてエドから贈られた革紐に触れようとしたとき、馬車が不自然にぐらついた。
「えっ……なに?」
王宮への路を駆けていた馬車は突然停車した。
もう到着したのだろうか。
馬車の外で御者が誰何する声が耳に届いた。不穏な気配に息をひそめる。
なにか不測の事態が起こったらしい。
外の様子を窺ってみようと、真鍮の把手に手を伸ばしたとき、突如扉は開け放たれた。
「おお、素晴らしい香りだ! 来い、俺のものにしてやる」
ぎらつく双眸をむける狼型の獣人は、バシリオだ。恐れ戦いた天は咄嗟に尻で後ずさる。
狭い車内に逃げ場はない。易々と胴を掴まれて馬車から引き摺り出され、華奢な身体は強靱な肩に担ぎ上げられた。豪奢な着物がばさりと捲れ、蝶のように宙を舞う。髪に挿した歩揺は零れ落ちて路に散らばった。
「あっ、や、やめて……」
獣人王自ら迎えに来るなんて思わなかった。それもこのような乱暴なやり方で。
御者は慌てて御者台から下り、走り去る。そこはまだ王宮への路の途上で、高い塀の向こうには幾つもの宮殿が点在していた。
天を担いだバシリオは素早く裏路地を駆け抜けて、とある宮殿に入る。
暗い室内にひとの気配はなく、湿り気を帯びていた。どうやら使用されていない宮殿のひとつらしい。
天の身体は寝台へ粗雑に転がされる。燭台の灯りはなく、裾が乱された初夜の衣は射し込む月明かりに妖しく照らされた。
姫の舞を披露したときに身につけていた真紅の紗布が、白い脛を覆い隠すように、さらりと零れ落ちる。
舌舐めずりをして獲物を見下ろす捕食者を前に、絶望的な想いが胸に広がる。
ここで、獣人王に身を貫かれてしまうのだろうか。
なぜ王宮の寝所ではなく、あえてこのような場所に連れ込むのか疑問だが、天に良い印象を持っていないためかもしれない。寵妃には指名したものの、さほど配慮が必要な者ではないと思われているのだ。
ここは獣人王の住処である王宮の敷地内だ。どこで抱こうが、王の自由なのだ。
震える身体を叱咤した天は礼を尽くそうとしたが、その身体を凶暴な腕で乱暴に押さえつけられる。
「あ、まって、待ってください!」
「今すぐ突っ込ませろ。たまらないな、発情期のオメガの匂いは」
鋭い爪で帯を引き千切られ、猩猩緋の着物を毟り取られる。晒された身体を覆う最後の紗布は、無残に破られてしまった。
「やめて、やめてください、それだけは……っ」
エドからいただいた、大切な紗布。
王と姫となり、ふたりだけの舞台で見せた最高の舞。
その集大成の証が引き千切られてしまった。
哀しい最期を遂げた姫のように、恋は叶うことはないと決定づけられたようだった。
乱暴に脱がされた反動で身体が弾み、剥き出しの背を寝台に打ち付けてしまう。
「……っ、いた……」
哀しくて眦に涙が滲む。
こんな状況にもかかわらず、身体の奥は熱を凝らせ疼いていた。
バシリオに足首を掴まれて高く掲げられ、薄紅色の蕾が月明かりの下に晒される。
「もう、ずぶ濡れだな。顔は平凡だが身体はさすがオメガだ」
「そんな……」
後孔は生温かい液体で、とろりと濡れていた。子種を注いでほしいと、まだ誰も受け入れたことのない花筒は潤み、奥から愛液を滴らせているのだ。
月明かりの中で吊られた細い足から淫靡に蜜が垂れるさまは、雄の情欲を煽り立てる。
それがまるでバシリオを求めている証拠だと指摘されたようで、天は咄嗟に首を振る。
「ちがいます、濡れてなんかいません、求めてません」
エドのぬくもりを失いたくない。それなのにオメガの身体は雄を求めて発情している。雄に貫かれることを望む身体の奥底から濃密な蜜を滴らせ、股の間を濡らしていた。慣例により下穿きは着けていない。もぞりと膝頭を擦り合わせれば、今すぐに自分を慰めてしまいたい衝動が突き上げる。
でも、それでは駄目だと身体が教える。
アルファの子種を身体の奥深くに注がれなければならないと、オメガの本能が訴える。
発情した自らの身体を抱きしめた天は、己に課せられた責務と恋心との狭間で揺れ動いた。
「エド……」
愛しいひとの名を呟き、襟元に手を伸ばしてエドから贈られた革紐に触れようとしたとき、馬車が不自然にぐらついた。
「えっ……なに?」
王宮への路を駆けていた馬車は突然停車した。
もう到着したのだろうか。
馬車の外で御者が誰何する声が耳に届いた。不穏な気配に息をひそめる。
なにか不測の事態が起こったらしい。
外の様子を窺ってみようと、真鍮の把手に手を伸ばしたとき、突如扉は開け放たれた。
「おお、素晴らしい香りだ! 来い、俺のものにしてやる」
ぎらつく双眸をむける狼型の獣人は、バシリオだ。恐れ戦いた天は咄嗟に尻で後ずさる。
狭い車内に逃げ場はない。易々と胴を掴まれて馬車から引き摺り出され、華奢な身体は強靱な肩に担ぎ上げられた。豪奢な着物がばさりと捲れ、蝶のように宙を舞う。髪に挿した歩揺は零れ落ちて路に散らばった。
「あっ、や、やめて……」
獣人王自ら迎えに来るなんて思わなかった。それもこのような乱暴なやり方で。
御者は慌てて御者台から下り、走り去る。そこはまだ王宮への路の途上で、高い塀の向こうには幾つもの宮殿が点在していた。
天を担いだバシリオは素早く裏路地を駆け抜けて、とある宮殿に入る。
暗い室内にひとの気配はなく、湿り気を帯びていた。どうやら使用されていない宮殿のひとつらしい。
天の身体は寝台へ粗雑に転がされる。燭台の灯りはなく、裾が乱された初夜の衣は射し込む月明かりに妖しく照らされた。
姫の舞を披露したときに身につけていた真紅の紗布が、白い脛を覆い隠すように、さらりと零れ落ちる。
舌舐めずりをして獲物を見下ろす捕食者を前に、絶望的な想いが胸に広がる。
ここで、獣人王に身を貫かれてしまうのだろうか。
なぜ王宮の寝所ではなく、あえてこのような場所に連れ込むのか疑問だが、天に良い印象を持っていないためかもしれない。寵妃には指名したものの、さほど配慮が必要な者ではないと思われているのだ。
ここは獣人王の住処である王宮の敷地内だ。どこで抱こうが、王の自由なのだ。
震える身体を叱咤した天は礼を尽くそうとしたが、その身体を凶暴な腕で乱暴に押さえつけられる。
「あ、まって、待ってください!」
「今すぐ突っ込ませろ。たまらないな、発情期のオメガの匂いは」
鋭い爪で帯を引き千切られ、猩猩緋の着物を毟り取られる。晒された身体を覆う最後の紗布は、無残に破られてしまった。
「やめて、やめてください、それだけは……っ」
エドからいただいた、大切な紗布。
王と姫となり、ふたりだけの舞台で見せた最高の舞。
その集大成の証が引き千切られてしまった。
哀しい最期を遂げた姫のように、恋は叶うことはないと決定づけられたようだった。
乱暴に脱がされた反動で身体が弾み、剥き出しの背を寝台に打ち付けてしまう。
「……っ、いた……」
哀しくて眦に涙が滲む。
こんな状況にもかかわらず、身体の奥は熱を凝らせ疼いていた。
バシリオに足首を掴まれて高く掲げられ、薄紅色の蕾が月明かりの下に晒される。
「もう、ずぶ濡れだな。顔は平凡だが身体はさすがオメガだ」
「そんな……」
後孔は生温かい液体で、とろりと濡れていた。子種を注いでほしいと、まだ誰も受け入れたことのない花筒は潤み、奥から愛液を滴らせているのだ。
月明かりの中で吊られた細い足から淫靡に蜜が垂れるさまは、雄の情欲を煽り立てる。
それがまるでバシリオを求めている証拠だと指摘されたようで、天は咄嗟に首を振る。
「ちがいます、濡れてなんかいません、求めてません」
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