転生ジーニアス ~最強の天才は歴史を変えられるか~

普門院 ひかる

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第2章 学園・学校編

第33話 ゼウスのダンジョン(2) ~ミノタウロスとキマイラ~

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 翌日。いやらしい迷宮がひたすら続く。

 定番の落とし穴があり、突然に床板が下に開いた。
 反射神経のよい者は咄嗟とっさに飛び退いたが、ヘルミーネとプドリスが悲鳴を上げながら下に滑り落ちていく。

 落とし穴の底には剣が林立しており、毒も塗られているようだ。まともに落ちたら命がない。

 フリードリヒは、即座に念動力サイコキネシスで二人を引き上げた。

「おい。気をつけろよ」
「わかってるわよ」とヘルミーネは仏頂面で答える。
 プドリスは「主様。ありがとうございます」と目をうるうるさせている。本当に泣き虫なやつだ。

 しばらく進むと、また大広間があった。入った途端に入り口が閉まる。また、例のパターンだ。

 アイスグリズリーが30匹ほどの集団で現れた。

 プドリスが先ほどの汚名返上とばかりに、張り切っている。
「ここは私に任せてください。
 炎よ来たれ。煉獄れんごくの業火。ヘルファイア!」

 アイスグリズリーは一瞬で消し炭となった。
 ──本当は魔力を温存してほしいんだけどな…

「プドリス。よくやった」
「えへへっ」
 プドリスの頭を撫でてやる。褒めるときは素直に褒めないとね。

 しばらくは通常の戦闘が続き、また大広間があった。
 牛の頭と人間の体を持った凶暴な怪物が両手にバトルアックスを持ち、待ち構えている。

 ミノタウロスだ。迷宮といえばミノタウロスは定番だ。
 ミノタウロスはこちらをみてよだれをたらしながら咆哮ほうこうしている。
 迷宮にささげられた人間を食べていたというから、人間が好物なのだろう。

「ここはあたいが行くぜ」とヴェロニアが名乗り出た。
 先ほどのプドリスの活躍をみて思うところがあるのだろう。

「わかった。だが、無理はするなよ」

 ヴェロニアがミノタウロスへ突進し、両者が激しく激突する。

 ミノタウロスは3メートルに届こうかという身長だが、ヴェロニアはハルバートという長柄武器を使っているので、何とか対抗できている。

 激しく打ち合っているがヴェロニアも押し負けていない。ヴェロニアの怪力も進歩しているようだ。

 しかし、相手の攻撃スピードが上がった。今までは小手調べということか。

 ヴェロニアが攻撃を受け切れずに押されていく。
 ミノタウロスの攻撃がヴェロニアの脇腹をかすり、血がほとばしった。ヴェロニアの顔が苦痛に歪む。

 その一瞬のすきをついてヴェロニアの脳天をミノタウロスのバトルアックスが襲った。

 そこへ素早くフリードリヒが割って入り、バトルアックスを受け止めた。すかさずもう一方のバトルアックスがフリードリヒを襲うがこれも受け止め、膠着こうちゃく状態となった。

「選手交代だ!」

 ヴェロニアを下がらせると、ベアトリスが素早くヴェロニアの治療をする。

「光よ来たれ。癒しの光。ヒール!」

 それを見届けたフリードリヒはバトルアックスをはじき返すと後退し、仕切り直しをする。
 精神を集中し、半眼となった。同時にプラーナで身体を強化する。

 魔法で片を付けることもできるだろうが、ここは相手に敬意を表して肉弾戦でいくことにする。

 ミノタウロスが襲いかかってくる。先ほどよりも更にスピードがアップしている。パワーだけではないということのようだ。

 すさまじいスピードの打ち合いは常人の目には留まらないだろう。武器同士がぶつかり合い火花が散っている。

 ──なかなかやるな。ならばこちらも本気で行くか。

 フリードリヒは、神力を使って狂戦士バーサク化し、スピードとパワーが格段に上昇した。

 これにはミノタウロスも付いてこられないようだ。
 フリードリヒの方が優勢になっていく。

 フリードリヒの攻撃がミノタウロスの右腕を直撃した。
 が、切り落とすには至らない。

 ──ちっ。丈夫なやつめ。

 再度、右腕の傷を狙う。
 傷ついた腕では避けきれず、今度は右腕を切断できた。

 ミノタウロスの右腕がバトルアックスを握ったまま床に転がり、同時に右腕から血が噴出する。

 ミノタウロスは、なおも抵抗を続けるが、左腕一本では勝負にならない。

 間もなく左腕も切り落とされてしまった。
 ミノタウロスは両腕からおびただしく出血し、顔面蒼白になっている。

「完敗だ。殺せ」
 ミノタウロスはあきらめたように言った。

 ここは無抵抗の者を殺すのは忍びない。

「私は才能を愛する。あなたほどの腕を持っているのなら、眷属になって欲しいのだが…」
「我を許すというのか?」

「そのとおりだ」
「だが、ゼウス様に申し訳がたたぬ」

「ゼウス様は『遊んでやる』といっておられた。そこまで本気ではないと思うぞ」
「ならば承知した。眷属になろう」

「名前は上書きでいいか?」
「お任せする」
 次の瞬間、魔力を持っていかれる。大物だけにそれなりの量だ。

「では、腕を治してやろう」
 フリードリヒはハイヒールで切断した両腕を接合した。

「かたじけない」
「もう眷属になったんだ。気にすることはない。流した血は戻らないからしばらくは養生することだな」
「承知した」

 ミノタウロスと別れ、ダンジョンを進む。

「あいつを肉弾戦で倒すとは、さすが旦那だな」
 ヴェロニアが感心している。

「私は私で君たちの知らないところで、いろいろと努力しているのだ」
「才能だけじゃないってか」
「そういうことだ」

 大広間があった。入った途端に入り口が閉まる。
 今度はダイアウルフの30匹ほどの群が現れた。

 ダイアウルフは更新世に生きていた大型の狼である。この世界では現存しているようだ。

「今回は魔法を温存しろよ」とプドリスらに釘を刺しておく。

 狼は連携して攻撃してくるだけに手強てごわい。

「こちらもしっかり連携して対抗するんだ」
 メンバーに指示を出す。

 こちらは王道パターンだ。
 ローザ、ヘルミーネ、カタリーナを前衛、ヴェロニアを中衛に据え、ネライダ、ベアトリス、プドリスの後衛陣が牽制けんせいする。ミーシャとパールは遊撃として回り込む敵に対処する。

 フリードリヒも今回は遊撃に回ることにして、すきをついて回り込もうとするダイアウルフをほふっていく。

 今回もダイアウルフを殲滅せんめつするのに小一時間かかった。

 ここで小休止する。

「もう少し進んだら、今日は終わりにしよう」
「そうですね。もう魔力も減ってきましたし」
 ベアトリスが答えた。

 しばらく通常戦闘を続けながら進むと再び大広間があった。

 獅子の頭、ヤギの胴、ドラゴンの尾を持つ怪物がそこに控えていた。
 キマイラである。

「こいつは口から火を吐くはず。注意しろ」

 言うや否や、キマイラはすかさず火を吐いて攻撃してくる。
 メンバーは必死に回避している。

 フリードリヒは考える。
 キマイラは前面では火の攻撃、後ろに回ってもドラゴンの尾があるということで、一見するとすきがなさそうだが、上から背中を狙うのはどうだろう。いいアイデアではないか。

 フリードリヒは、マジックバッグから杖を取り出すとこれに跨り飛翔した。

「やつの注意を引き付けておいてくれ」とメンバーに頼む。

 キマイラは空中のフリードリヒに気づいたが、これを攻撃しようと上を向くと前衛陣が威嚇いかくするのでフリードリヒを攻撃しかねている。

 魔法でもいいが、ここは弓でいってみよう。
 フリードリヒはキマイラの上にたどり着くと弓を構え、その背中に放った。同時に、念動力サイコキネシスで弓を加速する。

 弓のスピードは加速を続けることで乗算的に上がっていく。距離が短いので音速とまではいかないが亜音速程度には加速されるはずだ。

 キマイラに命中すると「ブシュッ」という音を立ててそのからだを貫通した。キマイラはすさまじい悲鳴を上げて苦しんでいる。出血も著しい。

 フリードリヒは容赦なく2射目、3射目と放っていく。その度にキマイラの絶叫が部屋にとどろく。

 5射目を射たところで、キマイラは倒れ込んだ。もう虫の息である。

 フリードリヒは地面に降りるとキマイラに話しかけた。
「さて、ここで首をねるのは簡単だが、どうする?」
「ま…待って…くれ」

「おまえもゼウス様のお遊びに付き合わされてたいへんだな。私の眷属になるのなら命は助けてやるが、どうする?」
「わ…わかった」

「ならば、まずは傷を治してやろう」
 フリードリヒは光魔法のハイヒールを発動した。キマイラの傷がみるみる回復していく。

「名前は上書きでよいな」
「了解した」
 今回も大物だけにかなりの魔力量を持っていかれる。

「流した血は戻らないからしばらくは養生することだな」
「かたじけない」

 キマイラの部屋を後にすると、その日に野営する場所を探す。

「さすがは主様。上から背中を狙うとは思いつきませんでした」とネライダがめてきた。彼女の場合、お世辞ではなく、本気で言ってくれているところがうれしい。

「確かに、あの窮地きゅうちではなかなか思いつかないですよね」とベアトリスが賛同する。

「…………」
 真正面から褒められると照れてしまい、言葉が返せないフリードリヒであった。

 大物を倒したところで疲労もピークに達していたので、その日はこれで店じまいし、ダンジョン内で一泊することにした。
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