とある小さな村のチートな鍛冶屋さん

夜船 紡

文字の大きさ
67 / 78
トランキル帝国編

お客様

しおりを挟む
毒餌を使うことしか伝えてないけど、大丈夫だろうか?
心配そうな表情を浮かべたままの私にアンバーがまだ怒った様子で言いきった。

ーもう放っておけばいいんですわ!
ー毒草もリンゴもあるし~大丈夫でしょ~。

それに続くラリマーの言葉に、他の子たちも頷く。
そうだよね。でも、気になるんだよなぁ・・・あの子。
凄く思いつめた顔をしていたから。
とりあえず、またオパールとオニキスに頼んで様子だけでも見ておこうかな。

「オパール、オニキーーー」
「失礼する。ここが鍛冶屋【Casualidad】だろうか?」

2匹に頼もうとした時だった。
程よく日焼けしたような肌。明るい金色の髪。頭についた二つの丸い耳に彼が獣人であるとわかる。
それから研ぎ澄まされたナイフのように鋭い瞳、シャープな顔立ちは青年のようだけれども、頬に僅かに残った丸みがまだ彼は幼い事を教えてくれる。

「確かにここが【Casualidad】ですけど・・・」
「!やはりか」

嬉しそうににかっと笑う彼は、太陽を思わせる。

「あ、あの、あなたは?」
「私か?私は、レグルス。貴公きこうのことを聞き、お願いに参った。どうか、私に武器を作ってはくれないだろうか?」
「ぶ、武器ですか?」
「ああ」
「えーと、それなら、お店の中に既製品が」
「いや、既製品ではなく、素材持ち込みでお願いしたいのだ」
「素材?」
「これだ」

レグルスさんはそういうと軽々と持っていた大きな革袋をわたしの目の前に置いた。
ドサリと重そうな音がなった。
恐る恐る袋を覗くと中から巨大なライオンの頭が見えた。

「キマイラだ。私が倒した」

少し得意げな表情でレグルスさんはそれを取り出した。
ヤギの首元からライオンの顔がくっついており、尻尾の部分には蛇の頭がある。
これが、キマイラ。
生き物を弄んだかのようなその姿に若干引いていると、脳内辞書がどの素材が鍛冶で使えるのかを教えてくれる。
まず、ライオンの牙。そのまま加工しなくても大きく剣として使えそうな程に鋭いそれを加工すれば、炎を放つ魔剣になる。
それからヤギの角。これはナイフに出来るようだ。だが、牙に比べて性能は落ちる。
爪は使えないようだ。
それと、蛇の頭の尻尾。これは蛇の目を加工し、杖にすることができる。
武器として使えるのは、この3点だけのようだ。
だが、体の皮は強固で防御に優れており伸び縮みもするので防具に使えるし、一応体の肉も食べられる。
食べたいとは思わないけど・・・。
とりあえず、解体できない事を伝えてどうして武器が欲しいのか、聞いてみることにしよう。
しおりを挟む
感想 343

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。