とある小さな村のチートな鍛冶屋さん

夜船 紡

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トランキル帝国編

レグルスの目的

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作者より

新キャラであるレグルスとレックスの名前が似ている為、レックス→ニハル と名前を変更いたしました。
変更がわかりやすいよう暫くこの表示を行います。
それでは、本編をお楽しみくださいm(_ _)m

**********************


けれど、彼の方から私に声をかけてきた。

「どうした?解体してくれないのか?」

「ごめんなさい、私は魔物の解体をしたことがないの」
「そうだったのか。なら、自分でやろう。場所は借りても大丈夫か?」
「え、ええ」

そういうと、レグルスさんは小さなナイフを取り出しキマイラの死骸に向かっていった。
テキパキと皮を剥ぎ、牙や爪を取っていく。
手慣れているのかな?早い。
私のスキルの関係上、手伝うことはできない。
解体しようとすると素材以外は全て砂になって消えてしまうからだ。

「よし、出来たぞ!」

早速取れたての牙を血塗れの手で渡そうとする。
うわぁ、と若干頬が引きつってしまう。
それでも、渡されたものを手に取ろうとしたところで彼と持っている素材の目の前にフローが水の塊を出した。

「む?」
ーー汚れちゃう!
「ありがとう、フロー!あのね、解体の所為で血塗れだから、その水で手とか洗ってもらっても良いかな?」
「ああ、そういうことか!わかった!!」

首を傾げていたレグルスさんはざぶざぶと戸惑うことなく洗い、改めて私に差し出す。
牙は思った以上に太くて長いけれど、それ以上に軽くて驚いた。

「軽い……!」

私の腕よりも長いのに……!
マジマジと見てみると、中は空洞になっていた。
それで、こんなに軽いのか。

「じゃあ、とりあえず、店内に案内しますね」
「うむ!」

店内のカウンター越しにレグルスさんと向かい合う。

「あの、どうして剣が欲しいのか、事情を尋ねてもいいかな?」
「ああ。いいぞ。どうせ有名なことだしな。実は、これは大会に使うのだ!」
「大会?」
「うむ。私の生まれた帝国では5年に1度、武闘会が執り行われるのだ。それも、帝王を決める国を挙げての大きな大会だ!」
「帝王!すごい……!!」
「そうだろう?それで武器の持ち込みも許可されているのだが、武器の力で勝ったと言われない様、1つだけルールがある」
「ルール?」
「自身が倒した魔物の素材以外を使ってはいけない。という物だ」

それで、キマイラを倒して持ってきたのか。
でも……どうして私に?【Casualidad】のことも知っていたみたいだし……

「私は、勝ちたい。勝って帝王になりたい。そのためには、実力だけでなく、強い武器が必要だ」
「なるほど……」
「そして、強い武器を作れるような優れた鍛治師を私は求めた。幾人もの鍛治師を求めたが、納得のいくものはいなかった」
「では、私も無理なんじゃ……」
「いや、貴公の腕は確かだ!帝国に来た商人が売りつけた貴公の剣を私は見た。素晴らしい腕前だった」

レグルスさんはその時のことを思い出してか、空をうっとりと見つめながら言う。

「それで、商人に問い詰めた。だが、教えてもらえなかった。何故だか貴公は幻と言われるほどに隠されていた」
「そ、それは……」
「だが、ここに来てわかった。眷属様がこれほどいる鍛治師ならば、隠されていて当然だ。私でもそうしただろう」
「!……」
「そのように心配しないでくれ。私は秘密は守る。私が欲しいのは、貴公の作る素晴らしい武器だけなのだし」

ここに来てそんなに立っていないのに、どうして皆が眷属だってわかるの?
この人、怖い。

「すまない。怯えさせてしまって……眷属様のことがわかるのは、獣人の直感というか……普通の獣と眷属様の違いは多分獣人族ならば、すぐにわかってしまうことなんだ……」

!そういえば、最初にフロー達を見破ったのも、猫の獣人であるジャンさんだった。
それに、ニハルも眷属に気付いてた。……私の馬鹿。
レグルスさんにこんな悲しそうな顔させて……本当に、馬鹿。
まあるい耳も少しぺこっと落ち込んでいる様に見える。

「ごめんなさい。事情はわかりました。依頼、お受けします。材料も、既に頂いていますし」
「本当か!よかった……!」
「それで、どんな武器がいいんでしょうか?先ほどから、武器としか聞いておりませんけど」

彼はちゃんと理由を話して、私と向き合ってくれている。
私も彼にちゃんと向き合って武器を作らないと。
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