毒華は自らの毒で華を染める

夜船 紡

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達したくても達せぬ疼きに、 息も絶え絶えになりながら、アネモネは馬車に乗り込む。
ミュゲの香りが広がったそこで、軽く達し、アネモネは、ミュゲを汚したような罪悪感に苛まれた。

馬車の中で、匂いに慣れたのか、徐々に静まっていく疼きにアネモネはほっとした。

「アネモネ様、今日は具合が悪かったことに気づかず申し訳ありませんわ」
「い、いえ、大丈夫です。行く時は何ともありませんでしたの、多分、久々に馬に乗ったからそのスピードによってしまったんだわ」
「そうですか・・・でも、お怪我がなくて本当に良かった」

心配そうに見つめるミュゲを、アネモネは本当に親しい家族のように思ってきていた。
だからこそ、その匂いに欲情する自身が信じられなかった。

「そ、そういえば、ザクロ様はどうなさってるの?それに、私の家族も・・・」
「ザクロ様は、王位継承者から外されましたわ」

今まで話題にもしなかったことだが、心配ばかりかけているわけにも行かず、今まで避けていた話題をふっと思い出し聴いてみる。
ミュゲから帰ってきた一言は、恋仲とは思えないほど冷めた、そして驚く程低い声だった。

「まだ、あんな男に未練があるのですか?」
「え、いえ・・・ただどうなったのかと思っただけ・・・」

普段のミュゲとは思えぬほどの怒気を孕んだ低い声。
そして、その瞳はとても鋭くこちらを睨みつける。
車内の空気がひんやりと冷たくなるのを肌で感じ、さらに言葉を重ねてミュゲの様子を見る。

「それに・・・今は貴方の婚約者でしょう?貴方がうまくいっているのかが心配だったのよ」

そういうと、ミュゲは先ほどの顔が嘘のようににっこりと微笑み、

「あの方との婚約は破棄されましたわ」
「え・・・、ザクロ様は、一体どうなさったの?私を嵌めて、貴方を手にして・・・」
「私も、王家継承権もなぜ失ったか・・・ですが、あの方は同性愛者だったのですわ」
「は?」

意味がわからないといった顔のアネモネを見て、ミュゲは説明をし始めた。

「アネモネ様は、しっかりとしてらっしゃるしいずれバレると思われたのでしょうね。その点、私は病弱ですし、操を立てると言いながら女を退け、友人・・・いえ、ここでいうなら真実の恋人でしょうか?との逢瀬をしていてもおかしくない。まあいえば、都合のいい娘だったのでしょう」
「信じられない・・・まさか、そんな・・・」
「友人であり、時期護衛騎士のローズ様とベットの上で裸で抱き合う姿をメイドと王が見たそうです」
「なっ・・・」
「それ故に、王はザクロ様の言い訳も聞かずローズ様とザクロ様を貴族社会から追い出したそうですわ」

この国では同性愛は認められているものの、王族はその血を残すという役割から同性愛は禁じられており、見つかったものは厳罰になる。
それは、皇太子たるザクロ様でも同じだった。

「ですから、私も婚約は破棄になりましたの」
「そ、そう・・・。じゃあ、私が公爵家に戻っても大丈夫かしら?」
「それはおやめになったほうが宜しいかと・・・」
「え、どうして?」
「実はアネモネ様が気にすると思って言わなかったのですが、公爵家は取り壊しになったのです」
「な、何ですって!」

ミュゲから聞かされたのは、信じられない内容だった。
公爵家は裏で敵対国と通じており、こちらの情報を流していたのだ。その証拠もあがっており、王は早々に公爵家の取り壊しを決められたそうだ。それは半月前の出来事だった。
両親は、どうなったのかというと、国を裏切った反逆者として晒し首にされたらしい・・・
たしかに、私に対しても冷たい両親だったがそれでも親だったのだ。

アネモネの目からはポロポロと涙が零れ落ちる。
ミュゲはハンカチを取り出し、涙を拭いた。

「そんな・・・どうして・・・どうすれば・・・」
「どうか、このまま、私の邸でお過ごしになってください」
「お母様・・・お父様・・・」
「私は、家族に愛されないもの・・・どうか、家族になって・・・」

アネモネの涙を拭きながら、ミュゲは優しくそう呟く。
その声は、甘く、アネモネの心に響き、その胸に抱きつき、深く、深く泣いた。
泣き疲れ、眠りにつくまで・・・
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