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毒華は花を愛で、影の嘆きに気づかない
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先に目覚めたのはミュゲだった。
自身の隣にちゃんとアネモネがいることを確認しその見た目同様、天使のように微笑む。
「ふふ、ようやく私だけのもの」
アネモネの柔らかな品のある髪を嬉しそうに、宝物に触れるように何度も何度も触り続ける。
その刺激に、アネモネの意識が戻ってきた。
「好きよ、好き。あの時、泣いている貴方を見た時くらからずっと、ずっと、手に入れることだけを夢見てた」
ミュゲの独り言にアネモネは目を開けることが出来なくなった。
「逃げないで。受け入れて。私は貴方が本当に好きなのよ」
その柔らかな声と、優しい手つきで撫でるミュゲからは昨日の異常さなど感じることが出来ないほどだ。
まるで、昔読んだ多重人格のような変わりように、本当に同じ人物なのかと、アネモネは思った。
ミュゲにとって幸せなその時間はすぐに終わった。
コンコンと無粋な音が扉から聞こえたからだ。
「お入りなさい」
「はい」
「どうしたの?」
「お父上が来られています」
「・・・何ですって」
「急いでご支度を」
「ええ。・・・アネモネ、すぐ戻るからね。貴方はもう少しゆっくりおやすみなさい」
その柔らかな髪の間の額にチュッと軽く唇を寄せる。
その瞳はアネモネだけを優しく見つめていた。
ギリっと侍女がアネモネを、ミュゲを睨みつけていたことに、ミュゲは気づくことがなかった。
支度を終え、侍女に連れられてロビーに降りる。筆頭侍女と話している冷たい目をした男、それがミュゲの父親だ。
ミュゲの姿に気づくと、その冷たい目を更に細め、眉をひそめる。
「お父様、お呼びと伺いました」
「ミュゲ、其方・・・元公爵令嬢アネモネを匿っているそうだな」
「匿うなどと・・・あれはれっきとした報酬ですわ。そう、現皇太子のお方との」
そう、にんまりと告げる彼女の目は何処か冷たく、見たものに恐怖を抱かせる。だが、その目に負けず劣らずの男は更に言葉を重ねる。
「ならば、ちゃんと地下の檻にでも入れておけ。彼奴はもう死んだ事になっているのだぞ」
「そうですわね、つい可愛らしくて自由にさせてしまいましたの。でも、駄目ね。自由を与え過ぎては・・・」
「わかっているのならば良い。それと、飼っている者たちの管理はしっかりとな」
「ええ、お父様、そうしますわ」
ではなと男が去ると、ミュゲは侍女に八つ当たりのように乱暴なキスをする。そんな扱いにも侍女はうっとりとして舌を絡ませた。
ぴちゃぴちゃと唾液が、舌が、互いの口内を行き来する。次第に荒くなっていく呼吸、とろんとして熱のこもった目を向け、その身体を絡ませようとする侍女にミュゲは急に冷たい目で身体を引き離した。
「あ・・・・ミュゲ様・・・」
「興が冷めた。あの男が触った物は・・・いえ、この部屋の物は全て処分しておいて頂戴。1つ残らずね」
「は、はい、かしこまりました」
それだけ告げると、ミュゲはスタスタと侍女を見もせず出ていった。ミュゲに久々に触れられた侍女の身体は火照っていた。それなのに・・・
ギリっと侍女は歯が鳴るほどに歯をくいしばり、ミュゲを夢中にさせる女—アネモネを恨んだ。
それでも、彼女はミュゲに命じられた通り、部屋の物を処分する為に動きはじめた。
自身の隣にちゃんとアネモネがいることを確認しその見た目同様、天使のように微笑む。
「ふふ、ようやく私だけのもの」
アネモネの柔らかな品のある髪を嬉しそうに、宝物に触れるように何度も何度も触り続ける。
その刺激に、アネモネの意識が戻ってきた。
「好きよ、好き。あの時、泣いている貴方を見た時くらからずっと、ずっと、手に入れることだけを夢見てた」
ミュゲの独り言にアネモネは目を開けることが出来なくなった。
「逃げないで。受け入れて。私は貴方が本当に好きなのよ」
その柔らかな声と、優しい手つきで撫でるミュゲからは昨日の異常さなど感じることが出来ないほどだ。
まるで、昔読んだ多重人格のような変わりように、本当に同じ人物なのかと、アネモネは思った。
ミュゲにとって幸せなその時間はすぐに終わった。
コンコンと無粋な音が扉から聞こえたからだ。
「お入りなさい」
「はい」
「どうしたの?」
「お父上が来られています」
「・・・何ですって」
「急いでご支度を」
「ええ。・・・アネモネ、すぐ戻るからね。貴方はもう少しゆっくりおやすみなさい」
その柔らかな髪の間の額にチュッと軽く唇を寄せる。
その瞳はアネモネだけを優しく見つめていた。
ギリっと侍女がアネモネを、ミュゲを睨みつけていたことに、ミュゲは気づくことがなかった。
支度を終え、侍女に連れられてロビーに降りる。筆頭侍女と話している冷たい目をした男、それがミュゲの父親だ。
ミュゲの姿に気づくと、その冷たい目を更に細め、眉をひそめる。
「お父様、お呼びと伺いました」
「ミュゲ、其方・・・元公爵令嬢アネモネを匿っているそうだな」
「匿うなどと・・・あれはれっきとした報酬ですわ。そう、現皇太子のお方との」
そう、にんまりと告げる彼女の目は何処か冷たく、見たものに恐怖を抱かせる。だが、その目に負けず劣らずの男は更に言葉を重ねる。
「ならば、ちゃんと地下の檻にでも入れておけ。彼奴はもう死んだ事になっているのだぞ」
「そうですわね、つい可愛らしくて自由にさせてしまいましたの。でも、駄目ね。自由を与え過ぎては・・・」
「わかっているのならば良い。それと、飼っている者たちの管理はしっかりとな」
「ええ、お父様、そうしますわ」
ではなと男が去ると、ミュゲは侍女に八つ当たりのように乱暴なキスをする。そんな扱いにも侍女はうっとりとして舌を絡ませた。
ぴちゃぴちゃと唾液が、舌が、互いの口内を行き来する。次第に荒くなっていく呼吸、とろんとして熱のこもった目を向け、その身体を絡ませようとする侍女にミュゲは急に冷たい目で身体を引き離した。
「あ・・・・ミュゲ様・・・」
「興が冷めた。あの男が触った物は・・・いえ、この部屋の物は全て処分しておいて頂戴。1つ残らずね」
「は、はい、かしこまりました」
それだけ告げると、ミュゲはスタスタと侍女を見もせず出ていった。ミュゲに久々に触れられた侍女の身体は火照っていた。それなのに・・・
ギリっと侍女は歯が鳴るほどに歯をくいしばり、ミュゲを夢中にさせる女—アネモネを恨んだ。
それでも、彼女はミュゲに命じられた通り、部屋の物を処分する為に動きはじめた。
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