毒華は自らの毒で華を染める

夜船 紡

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王の思惑、毒華の約束

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ミュゲは苛立ちながら城内を案内されながら歩いていた。
だが、通りすがりの人々には可憐にしか見えないだろう。それほどに彼女の見た目は儚く綺麗なのだ。

「失礼します。ピオニー皇太子殿下、ミュゲ嬢がお越しです」
「通していいよ」
「はっ。どうぞ」

開けられた扉の部屋には、作業机が一つ。大量の書類に埋もれていた。

「よく来たな、ミュゲ」
「お久しぶりですわ、ピオニー殿下。」

ピオニー皇太子は、ミュゲがザクロ皇太子を廃嫡させる為に手を組んだ者であり、ミュゲとは同類の友であった。
同時期に生まれたが、ザクロは現王妃の息子であり、ピオニーは貴妃の息子だった為に、ピオニーはザクロに仕えることになっていたのだ。
だが、たかが親の身分の差だけで、ピオニーが自分よりも劣るザクロを支えたいとは思えなかった。
また、ザクロを見ているとピオニーには征服したいという欲求が湧き立つ。
ザクロの全てを奪いつくし、自身だけを見つめるようにしたいと。
故に、アネモネを我がものにしたいと願っていたミュゲに手を貸し、ピオニーにミュゲを紹介したのだ。

「私の願いは皇太子になるだけではなく、を手に入れる事だ」
「存じてますわ」
「なら、何故、ローズに抱かせた。しかも、は今、ローズの、囲い人として生きているのだぞ。私が手を出せぬではないか」
「まぁ・・・今手を出せば、皇太子の座を誰かに奪われることになりますわよ」
「なに」

ピクリと眉を動かし自身が不快だと示すその男を、ミュゲは冷ややかな目で見つめる。

が皇太子を追われたのも、それが原因ではありませんか」
「其の方、わかってて交渉に出したのか・・・?」
「いいえ。ですが、皇太子様はいずれ王位を継がれるお方・・・王位につけば、法を変えることもを抱いたローズを自らの手で殺すことも、を囲うことも出来るではありませんか。今はただ、耐える時期なだけですわ」
「ふむ・・・だが、王は健在だ。このままではいつ私の手にが手に入ることか」
「急いては事を仕損じるとも申します。今しばらくはローズにも良い思いをさせてやれば良いではありませんか」
「だが・・・」
は快感に弱い。ピオニー殿下がお望みならば彼の性感帯を余す事なくお教えしますわ。すぐに貴方様に夢中になる事でしょう」

事もなさげに清楚に微笑むミュゲがピオニーからすれば頼もしいものであった。

「それと・・・陛下、お耳を」
「なんだ」

コソコソと話すミュゲの言葉を聞いてピオニーは笑った。

「それはいい!それは楽しそうだ!!」
「お気に召したようで光栄ですわ」
「早速取りかかってくれ」
「・・・・・はい」

ミュゲからすればローズでもピオニーでも同じこと。
自分たちから目をそらせればそれでいい。

——大きな大きな檻を作りましょう。中の住人が気づかない程の、大きな檻を作りましょう。そうすれば、檻の中で楽しく暮らせるはずでしょう?
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