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6章 王宮へ出張
34.ハードで不人気な神官長の付き人
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チャーリーがニヤニヤしながら俺の反応を伺ってくる。その目は俺をからかっているのがありありと分かった。
「神官長の話を出したとたんに食いついただろ~。おまえがソッチとは気づいてなかったけど、あの神官長は顔が良いもんなぁ。おまえ面食いそうだし」
「………………」
「あの聖域の事件の時、なんかあったんだろ? 女好きのヤリチンだったのに、嗜好が180度変わるような……さ?」
こいつ、人に情報を売りつけておいて、さらに俺から情報を探ってやがるんか。抜け目ないやつ。
ただ、こっちは金を払われてもバラす訳にはいかねぇ秘密だらけだけど。
「ノーコメント。……ではあるけど、また神官長の面白い話があれば情報は買う。よろしくな」
「りょーかい~」
タバコを吸い終わったチャーリーが、俺の掃除用バケツに吸い殻を放り込んでくる。やっと出て行きやがるか。
「そーだ。神官長といえば……」
「もう金はねーぞッ」
「すぐわかることだからサービス。今日から懲罰明けのおまえらも神官長の付き人のシフトが入ると思うぞ」
「付き人?!」
「ここのところ大聖堂じゃ、神官長を見ないだろ? ずっと王宮に呼ばれてんだよ。その護衛がメンタル的にハードで不人気なんだよなぁ。だから懲罰明け早々にシフト押し付けられるだろうさ」
なにそれ俺的には美味しすぎるんだけど?!
古巣の王宮に行くだけだし、神官長とはお近づきになれる?! なんでそれが不人気なんだ?
「そんな任務の話、ずっと聞かなかったぞ? え? いつから?」
「おまえらはシフトから外されてたからなぁ。神域に突入した件で神官長と王宮の部署が揉めたみたいでさ」
チャーリーの話をまとめると、神域に入る権限があるからって独断専行した神官長だけど、実際には煩雑な手続き関係を全部すっ飛ばしていた。
それよって王宮側の内務関係の各部署と軋轢が生まれたらしい。
だから、嫌がらせのような邪魔をされたり、必要のない仕事が回ってきたりしているらしい。
そっか、それで最近姿をみなかったり、昨日はやつれるほど疲れてたのか……。
それも神官長は人に仕事を回すよりも抱え込むタイプだ。負担も大きいだろう。
そして、その原因である神域突入に関係した騎士は話がこじれるからと蚊帳の外に置かれていた。
それがここに来てシフトに入るってのは……おそらく王宮との揉め事に巻き込まれる騎士から、不満の声が上がっているからだろう。
チャーリーの話の通り、俺はその後の朝礼で本日のシフトは神官長の護衛、と言い渡された。
王宮は町の中心にある。町の北にある大聖堂から馬車で20分も走れば着く距離だ。
馬車から降りた神官長は、普段の神官の法衣の上に前後に布が垂れたマントのようなものを着ている。
凝った刺繍と紋章が入っているから、王宮に行く時の正装なんだろう。青空を背景に眩しいほど気品がある。
ただ、長袖の法衣の上にマントでは暑そうだ……魔法で涼しくしているのか、神官長の表情はいつも通り冷ややかだけど。
逆に俺は普段の警備時よりも軽装だ。おかげで涼しい。
危険が無い王宮へ出向くからには、防具も帯剣も不要……という建前に基づき、騎士の制服だけだ。
なるほど、これが護衛なのに『付き人』と裏で言われる理由か。
これでは有事の際は、肉壁となって神官長を守るしかないぞ。
ただ、王宮の行き帰りの安全については、馬車の中に武器防具を積んでいる。
安全性が高いためか、護衛を命じられたのも俺一人だ。でも、そのおかげで神官長にさえ気づかれなければ、神官長を眺め放題だ。
昨日のマッサージが効いているのか、今日の神官長の顔色は良い。
髪も艶があるし、肌のハリもある。目にも力があるからやつれた顔も精悍さが増したと言い換えていいくらいだ。
昨日の俺、いい仕事したな!
って、気づかれなければ、とか思ってるそばからバッチリ目が合ってる!
「しばらく顔を見なかったな、クラレンス」
「はっ! 神官長の護衛から外されていましたので……」
「なるほど、隊長にも気を使わせていたようだな」
なんだ? 昼間の神官長が見てわかるほど落ち込んでいる?!
いつも気を張った冷たく厳しい態度なのに。よほど限界に近いんだろうか。
「今日はよろしく頼む」
「はっ!」
昼間の神官長には見られない苦笑の表情だ。これは……もしかすると俺に気を許している……ということなのか?
神域では抜きっこまでした仲だもんな!
危険を顧みずに誘った甲斐があったな!
「神官長の話を出したとたんに食いついただろ~。おまえがソッチとは気づいてなかったけど、あの神官長は顔が良いもんなぁ。おまえ面食いそうだし」
「………………」
「あの聖域の事件の時、なんかあったんだろ? 女好きのヤリチンだったのに、嗜好が180度変わるような……さ?」
こいつ、人に情報を売りつけておいて、さらに俺から情報を探ってやがるんか。抜け目ないやつ。
ただ、こっちは金を払われてもバラす訳にはいかねぇ秘密だらけだけど。
「ノーコメント。……ではあるけど、また神官長の面白い話があれば情報は買う。よろしくな」
「りょーかい~」
タバコを吸い終わったチャーリーが、俺の掃除用バケツに吸い殻を放り込んでくる。やっと出て行きやがるか。
「そーだ。神官長といえば……」
「もう金はねーぞッ」
「すぐわかることだからサービス。今日から懲罰明けのおまえらも神官長の付き人のシフトが入ると思うぞ」
「付き人?!」
「ここのところ大聖堂じゃ、神官長を見ないだろ? ずっと王宮に呼ばれてんだよ。その護衛がメンタル的にハードで不人気なんだよなぁ。だから懲罰明け早々にシフト押し付けられるだろうさ」
なにそれ俺的には美味しすぎるんだけど?!
古巣の王宮に行くだけだし、神官長とはお近づきになれる?! なんでそれが不人気なんだ?
「そんな任務の話、ずっと聞かなかったぞ? え? いつから?」
「おまえらはシフトから外されてたからなぁ。神域に突入した件で神官長と王宮の部署が揉めたみたいでさ」
チャーリーの話をまとめると、神域に入る権限があるからって独断専行した神官長だけど、実際には煩雑な手続き関係を全部すっ飛ばしていた。
それよって王宮側の内務関係の各部署と軋轢が生まれたらしい。
だから、嫌がらせのような邪魔をされたり、必要のない仕事が回ってきたりしているらしい。
そっか、それで最近姿をみなかったり、昨日はやつれるほど疲れてたのか……。
それも神官長は人に仕事を回すよりも抱え込むタイプだ。負担も大きいだろう。
そして、その原因である神域突入に関係した騎士は話がこじれるからと蚊帳の外に置かれていた。
それがここに来てシフトに入るってのは……おそらく王宮との揉め事に巻き込まれる騎士から、不満の声が上がっているからだろう。
チャーリーの話の通り、俺はその後の朝礼で本日のシフトは神官長の護衛、と言い渡された。
王宮は町の中心にある。町の北にある大聖堂から馬車で20分も走れば着く距離だ。
馬車から降りた神官長は、普段の神官の法衣の上に前後に布が垂れたマントのようなものを着ている。
凝った刺繍と紋章が入っているから、王宮に行く時の正装なんだろう。青空を背景に眩しいほど気品がある。
ただ、長袖の法衣の上にマントでは暑そうだ……魔法で涼しくしているのか、神官長の表情はいつも通り冷ややかだけど。
逆に俺は普段の警備時よりも軽装だ。おかげで涼しい。
危険が無い王宮へ出向くからには、防具も帯剣も不要……という建前に基づき、騎士の制服だけだ。
なるほど、これが護衛なのに『付き人』と裏で言われる理由か。
これでは有事の際は、肉壁となって神官長を守るしかないぞ。
ただ、王宮の行き帰りの安全については、馬車の中に武器防具を積んでいる。
安全性が高いためか、護衛を命じられたのも俺一人だ。でも、そのおかげで神官長にさえ気づかれなければ、神官長を眺め放題だ。
昨日のマッサージが効いているのか、今日の神官長の顔色は良い。
髪も艶があるし、肌のハリもある。目にも力があるからやつれた顔も精悍さが増したと言い換えていいくらいだ。
昨日の俺、いい仕事したな!
って、気づかれなければ、とか思ってるそばからバッチリ目が合ってる!
「しばらく顔を見なかったな、クラレンス」
「はっ! 神官長の護衛から外されていましたので……」
「なるほど、隊長にも気を使わせていたようだな」
なんだ? 昼間の神官長が見てわかるほど落ち込んでいる?!
いつも気を張った冷たく厳しい態度なのに。よほど限界に近いんだろうか。
「今日はよろしく頼む」
「はっ!」
昼間の神官長には見られない苦笑の表情だ。これは……もしかすると俺に気を許している……ということなのか?
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