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8章 飲み会とアフター
54.ラッキースケベでってことで?
トイレを出て、スタスタと歩き出した神官長に続いてホール端の通路を進んだ。舞台の上では華やかに次のショーのキャストたちが踊っている。
舞台上へ幸運を祈るサインを送ると、俺も受付へ向かった。
支払いを済ませた神官長と店を出ると、目の前に馬車が止まっていた。
店がいつもの馬車を手配してくれていたんだろう。
「あの、家まで送ります」
「そうだな、送り狼にならないなら頼もう」
「いつでもどこでも下心のある男じゃないですよ?!」
「その言葉を信用しようか」
……信用を守るべきか裏切るべきか。期待されると裏切りたくなる。って、すぐにそんなことを考えてしまうから、神官長に下心人間と思われるんだな~。
神官長の向かいに座ることを許されて少しホッとする。
サスペンションの悪い馬車は路面の凹凸を拾ってよく揺れる。それでも花町の馬車としてはマシなほうだ。
馬車は頼りない灯りで街道を照らしながら走る。
それでも今夜は月の明るい夜だから、行き先は見て取れた。
馬車は大聖堂のある方角に向かっているようだ。
先に馬車の中での話題を探し出したのは神官長だった。
「クラレンス」
「はい」
「トイレにいた、ああいう男が好みか?」
って、こういう話題は求めてないんだけど!
「はっ?!」
「おまえたちの声が外に漏れていた」
ど、どこから聞いて?!
「そ、れはちょっと、からかって遊んでいただけで、すよ?」
「そうなのか?」
「あの……どこから聞いて……」
「激しいプレイをしているんだな、という声は聞こえたな」
き、記憶にないぞ? そんなプレイは! リックへのいじめシーンを勘違いされたのかな?!
「いや、全然あんな男は対象外です! くすぐられるのに弱いっていうんで悪戯していただけで!」
「悪戯するほど仲良くなったのか? ポッキーゲームで?」
「ッ!」
やっぱり気にしてるのかな? 俺がリックと濃厚ベロチューしたこと。
まさか……神官長が……嫉妬してる?
馬車が大きく揺れ、咄嗟に手すりを掴み損なった。
「あっ――」
崩れた体を引き寄せられ、気づいたら神官長の肩を掴んでいた。
背中に神官長の腕の感触があった。神官長の体が近く、いつものシラキスの匂いに頭がクラクラした。
「あ……の、神官長」
「……なんだ」
さっきの大きな揺れは過ぎ去った。
なのに、神官長の腕は変わらず俺の背に回っている。
その腕は、俺が体を引いたらあっけなく外れるだろう。
それじゃ、もっと近づくなら……?
つい、肩を掴む手に力がこもる。馬車の座席の背に神官長を縫い付けたまま、その口を塞いだ。
「ん」
唇を触れ合わせているだけで興奮して頭が熱い。
神官長の腕は狼を振り払うこともしないで、変わらず俺の背に回ったままだ。
唇の隙間から舌を差し入れると、柔らかな舌先に触れた。ゆるゆると触れ合うだけで気持ちいい。
神官長の舌も応えるように動いた。舌先をくすぐりあうたびに胸がざわつく。
もっと欲しい、と思ったところで神官長が不快げにうめいたのに気づいた。
ガタガタ揺れる馬車に後頭部をぶつけたらしい。
体を離すと、神官長が後頭部をさすっている。
「あ……」
「酷い揺れだな」
スッと淫靡な空気が消えた。神官長はさっきの行為なんてなかったかのように外を見ていた。
俺に回っていた腕も今は窓枠を掴み、唇は少し赤みが残るだけだ。
もう一度、なんてのは無理だろう。
馬車の揺れによって引き起こされたアクシデント、そう位置づけられた気がした。
馬車のスピードが緩んだのを感じた。
止まった馬車から降りると目の前には白い壁の立派な豪邸があった。場所は大聖堂近くの高級住宅街の一角だろう。周りに建つ家も敷地にゆとりのある邸宅ばかりだ。
馬車をそのまま返して豪邸の玄関先まで神官長を見送った。
「今夜は長く付き合わせてすまなかったな」
「いえ、勉強になりました。ありがとうございます」
「そうか、気をつけて帰れよ」
「はっ」
これ以上醜態をさらす前に帰ろう、帰ればよかったのに。
その背に思わず未練を投げてしまった。
「神官長、あなたは俺の特別です。あなたの相手が男でもいいなら……俺と付き合いませんか?」
暗かった豪邸に火が灯る。玄関前に立つ神官長の表情がハッキリと見えた。
オレンジの光を浴びた神官長は目を細めた。
その唇が俺への返答に少し開いた。
「――――――」
舞台上へ幸運を祈るサインを送ると、俺も受付へ向かった。
支払いを済ませた神官長と店を出ると、目の前に馬車が止まっていた。
店がいつもの馬車を手配してくれていたんだろう。
「あの、家まで送ります」
「そうだな、送り狼にならないなら頼もう」
「いつでもどこでも下心のある男じゃないですよ?!」
「その言葉を信用しようか」
……信用を守るべきか裏切るべきか。期待されると裏切りたくなる。って、すぐにそんなことを考えてしまうから、神官長に下心人間と思われるんだな~。
神官長の向かいに座ることを許されて少しホッとする。
サスペンションの悪い馬車は路面の凹凸を拾ってよく揺れる。それでも花町の馬車としてはマシなほうだ。
馬車は頼りない灯りで街道を照らしながら走る。
それでも今夜は月の明るい夜だから、行き先は見て取れた。
馬車は大聖堂のある方角に向かっているようだ。
先に馬車の中での話題を探し出したのは神官長だった。
「クラレンス」
「はい」
「トイレにいた、ああいう男が好みか?」
って、こういう話題は求めてないんだけど!
「はっ?!」
「おまえたちの声が外に漏れていた」
ど、どこから聞いて?!
「そ、れはちょっと、からかって遊んでいただけで、すよ?」
「そうなのか?」
「あの……どこから聞いて……」
「激しいプレイをしているんだな、という声は聞こえたな」
き、記憶にないぞ? そんなプレイは! リックへのいじめシーンを勘違いされたのかな?!
「いや、全然あんな男は対象外です! くすぐられるのに弱いっていうんで悪戯していただけで!」
「悪戯するほど仲良くなったのか? ポッキーゲームで?」
「ッ!」
やっぱり気にしてるのかな? 俺がリックと濃厚ベロチューしたこと。
まさか……神官長が……嫉妬してる?
馬車が大きく揺れ、咄嗟に手すりを掴み損なった。
「あっ――」
崩れた体を引き寄せられ、気づいたら神官長の肩を掴んでいた。
背中に神官長の腕の感触があった。神官長の体が近く、いつものシラキスの匂いに頭がクラクラした。
「あ……の、神官長」
「……なんだ」
さっきの大きな揺れは過ぎ去った。
なのに、神官長の腕は変わらず俺の背に回っている。
その腕は、俺が体を引いたらあっけなく外れるだろう。
それじゃ、もっと近づくなら……?
つい、肩を掴む手に力がこもる。馬車の座席の背に神官長を縫い付けたまま、その口を塞いだ。
「ん」
唇を触れ合わせているだけで興奮して頭が熱い。
神官長の腕は狼を振り払うこともしないで、変わらず俺の背に回ったままだ。
唇の隙間から舌を差し入れると、柔らかな舌先に触れた。ゆるゆると触れ合うだけで気持ちいい。
神官長の舌も応えるように動いた。舌先をくすぐりあうたびに胸がざわつく。
もっと欲しい、と思ったところで神官長が不快げにうめいたのに気づいた。
ガタガタ揺れる馬車に後頭部をぶつけたらしい。
体を離すと、神官長が後頭部をさすっている。
「あ……」
「酷い揺れだな」
スッと淫靡な空気が消えた。神官長はさっきの行為なんてなかったかのように外を見ていた。
俺に回っていた腕も今は窓枠を掴み、唇は少し赤みが残るだけだ。
もう一度、なんてのは無理だろう。
馬車の揺れによって引き起こされたアクシデント、そう位置づけられた気がした。
馬車のスピードが緩んだのを感じた。
止まった馬車から降りると目の前には白い壁の立派な豪邸があった。場所は大聖堂近くの高級住宅街の一角だろう。周りに建つ家も敷地にゆとりのある邸宅ばかりだ。
馬車をそのまま返して豪邸の玄関先まで神官長を見送った。
「今夜は長く付き合わせてすまなかったな」
「いえ、勉強になりました。ありがとうございます」
「そうか、気をつけて帰れよ」
「はっ」
これ以上醜態をさらす前に帰ろう、帰ればよかったのに。
その背に思わず未練を投げてしまった。
「神官長、あなたは俺の特別です。あなたの相手が男でもいいなら……俺と付き合いませんか?」
暗かった豪邸に火が灯る。玄関前に立つ神官長の表情がハッキリと見えた。
オレンジの光を浴びた神官長は目を細めた。
その唇が俺への返答に少し開いた。
「――――――」
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