62 / 69
10章 崩壊と再生(最終章)
62.恋バナの切り出し方は下手なほう
神官長による参考人としての発言が公的に記され、汚職事件は粛々と処理された。
大聖堂ではバシリオ神官とその下で働いていた神官見習いが捕縛され、証拠品の押収がされた。
王宮でもバシリオとつながりのある者が捕縛され、王宮の勢力図が少し書き換えられた。
また、俺の夜の勤め先であるショーパブについても、オーナーへ取り調べの手が及んだらしいが、そちらはいつの間にか姿を眩ませていたらしい。
おかげで雇われ店長のジェイは突然のオーナー出奔にしばらくバタバタと駆け回っていた。
ただ、ウォーレンの実家であるクロフォード家に捜査の手が及んだという話は聞かなかった。おそらくウォーレンの義弟が汚職事件に関わっていたことについては闇に葬られんだろう。
一連の事件が終わり、俺はようやく一息ついた。
俺の職務違反については神官長の護衛の任務についていたということになり不問となった。ただ、上司にも誰にも伝えず行動したことで、命令系統に混乱を招いたとされ、しばらくの減給処分を受けたのは少し痛い。
まぁ、これでもう神官長の夜の仕事も終わりだ。
ショーパブにも……来ないんだろうな。
「ってなんでまだ来てんだ?!」
「おまえのデカい財布だろ? 大事にしろよ」
ショーパブ店長のジェイにウォーレンの来店を伝えられて、椅子から転げ落ちそうになるほど驚いた。
いやいやいや、でもあの人もうこの店に用はないはずだけど?!
まてよ? クラレンスとして来店した時に「息抜きできる店」みたいなことを言ってたな。息抜きだけじゃなくてチンコも抜いてるんだけど。
つまり仕事抜きで来たってことか?
ドクドクうるさい心臓がようやく落ち着いて来た。
少し……ほんの少し、俺に会いに来たのかな~とは思ったりして。キャストと客以上の気持ちで。でもそれは……期待しすぎだよな。
もしそうだとしても、ランスが覆面をしている限り、キャストと客以上の関係にはなれないんだけど。
「今日はホール席からショーを見たいんだとさ。VIPルームも空いてるからご要望があれば黒服に言ってくれ」
「うぃ~」
「こら、気ぃ抜けてんじゃねぇ!」
ジェイは俺の頭を叩いて楽屋を出ていった。でもやたら上機嫌にニヤニヤしていた。
ウォーレンの来店が久しぶりだったからかな。
じわっと汗の滲む手を拭う。
壁際に寄ってホールの見渡せる小窓から向こう側を覗いた。
ホールには昔の記憶と同じように、パッと見ただけで目を引くボックス席があった。
薄暗い店内照明をものともせずに色白の相貌が輝いている。静謐な表情と色の白さが相まって石膏像のようだ。その顔が俺を見ると人間に戻って親しみやすく崩れることを知っている。
華やかな金髪は近づくとシラキスの香りを放って俺を惹きつける。
服の上からでも鍛えているのがわかる体は、脱いだらそそるし傷の多さに驚く。
長い足は強靭に俺を支えて快感に導く。
そして正真正銘に神の恩恵を受けている後光の差すイケメンだ。
あ~~~全部すき。
でもそのイケメンにきっぱりふられた俺。なのに俺に会いにくるイケメン。ジレンマがすぎるぅ!
「おいランス? 大丈夫か? さっきから窓に張り付いて固まってさぁ」
リックが目の前でヒラヒラ手を振っていた。またしばらく意識が飛んでいたらしい。
「いやほら、ウォーレンが……」
「久しぶりに来たから嬉しいんだ? でも初めからVIPルームじゃないって珍しいなぁ。なんでホール席なんだろ」
「それは………………き、気分転換かな」
そうだ思い出した。前に、内偵調査が終わったらホール席から直近でダンスする俺を見ろよって言ったことがあるからだ。
思い出すと恥ずかしすぎる。律儀に約束を守ってくれたウォーレンに応えたいけど、失態を犯しそうだ。
「……なぁ、ショーの途中でチンコ立ったらどうしてる?」
リックに無言で殴られた。恋バナってどうやって切り出したらいいか分からん!
「んなこという暇があったらトイレで抜いてこい!」
マジでその方がいいのかも。
大聖堂ではバシリオ神官とその下で働いていた神官見習いが捕縛され、証拠品の押収がされた。
王宮でもバシリオとつながりのある者が捕縛され、王宮の勢力図が少し書き換えられた。
また、俺の夜の勤め先であるショーパブについても、オーナーへ取り調べの手が及んだらしいが、そちらはいつの間にか姿を眩ませていたらしい。
おかげで雇われ店長のジェイは突然のオーナー出奔にしばらくバタバタと駆け回っていた。
ただ、ウォーレンの実家であるクロフォード家に捜査の手が及んだという話は聞かなかった。おそらくウォーレンの義弟が汚職事件に関わっていたことについては闇に葬られんだろう。
一連の事件が終わり、俺はようやく一息ついた。
俺の職務違反については神官長の護衛の任務についていたということになり不問となった。ただ、上司にも誰にも伝えず行動したことで、命令系統に混乱を招いたとされ、しばらくの減給処分を受けたのは少し痛い。
まぁ、これでもう神官長の夜の仕事も終わりだ。
ショーパブにも……来ないんだろうな。
「ってなんでまだ来てんだ?!」
「おまえのデカい財布だろ? 大事にしろよ」
ショーパブ店長のジェイにウォーレンの来店を伝えられて、椅子から転げ落ちそうになるほど驚いた。
いやいやいや、でもあの人もうこの店に用はないはずだけど?!
まてよ? クラレンスとして来店した時に「息抜きできる店」みたいなことを言ってたな。息抜きだけじゃなくてチンコも抜いてるんだけど。
つまり仕事抜きで来たってことか?
ドクドクうるさい心臓がようやく落ち着いて来た。
少し……ほんの少し、俺に会いに来たのかな~とは思ったりして。キャストと客以上の気持ちで。でもそれは……期待しすぎだよな。
もしそうだとしても、ランスが覆面をしている限り、キャストと客以上の関係にはなれないんだけど。
「今日はホール席からショーを見たいんだとさ。VIPルームも空いてるからご要望があれば黒服に言ってくれ」
「うぃ~」
「こら、気ぃ抜けてんじゃねぇ!」
ジェイは俺の頭を叩いて楽屋を出ていった。でもやたら上機嫌にニヤニヤしていた。
ウォーレンの来店が久しぶりだったからかな。
じわっと汗の滲む手を拭う。
壁際に寄ってホールの見渡せる小窓から向こう側を覗いた。
ホールには昔の記憶と同じように、パッと見ただけで目を引くボックス席があった。
薄暗い店内照明をものともせずに色白の相貌が輝いている。静謐な表情と色の白さが相まって石膏像のようだ。その顔が俺を見ると人間に戻って親しみやすく崩れることを知っている。
華やかな金髪は近づくとシラキスの香りを放って俺を惹きつける。
服の上からでも鍛えているのがわかる体は、脱いだらそそるし傷の多さに驚く。
長い足は強靭に俺を支えて快感に導く。
そして正真正銘に神の恩恵を受けている後光の差すイケメンだ。
あ~~~全部すき。
でもそのイケメンにきっぱりふられた俺。なのに俺に会いにくるイケメン。ジレンマがすぎるぅ!
「おいランス? 大丈夫か? さっきから窓に張り付いて固まってさぁ」
リックが目の前でヒラヒラ手を振っていた。またしばらく意識が飛んでいたらしい。
「いやほら、ウォーレンが……」
「久しぶりに来たから嬉しいんだ? でも初めからVIPルームじゃないって珍しいなぁ。なんでホール席なんだろ」
「それは………………き、気分転換かな」
そうだ思い出した。前に、内偵調査が終わったらホール席から直近でダンスする俺を見ろよって言ったことがあるからだ。
思い出すと恥ずかしすぎる。律儀に約束を守ってくれたウォーレンに応えたいけど、失態を犯しそうだ。
「……なぁ、ショーの途中でチンコ立ったらどうしてる?」
リックに無言で殴られた。恋バナってどうやって切り出したらいいか分からん!
「んなこという暇があったらトイレで抜いてこい!」
マジでその方がいいのかも。
あなたにおすすめの小説
俺は夜、社長の猫になる
衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。
ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。
言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。
タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。
けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。
魔性の男
久野字
BL
俺はとにかくモテる。学生の頃から、社会人になった今でも、異性問わずにモテてしまう。
最近、さえない同性の先輩に好意を持たれている。いつものことだろう。いい人だから、傷つけたくはないな。
そう、思っていた。
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
【完結】冷酷騎士団長を助けたら口移しでしか薬を飲まなくなりました
ざっしゅ
BL
異世界に転移してから一年、透(トオル)は、ゲームの知識を活かし、薬師としてのんびり暮らしていた。ある日、突然現れた洞窟を覗いてみると、そこにいたのは冷酷と噂される騎士団長・グレイド。毒に侵された彼を透は助けたが、その毒は、キスをしたり体を重ねないと完全に解毒できないらしい。
タイトルに※印がついている話はR描写が含まれています。