【完結】覆面セクシーダンサーは昼職の上司に盲愛される

鳥見 ねこ

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10章 崩壊と再生(最終章)

68.魔法は厄介

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 グレンの剣を逸らすか軽くはじきながら、剣の向こうのグレンの腕を狙う。

 ただ、相手も分かった上で剣が届くほどの隙を作らない。
 狭い室内で決定的なグレンの間合いに入らないよう円を描く足捌きで苦心する。
 いっそ剣を持ちながら殺さないように考えるからややこしいのか?

「そうだ。ひらめいた」

 後ろのベッド にあったタオルに水差しの水をぶっかけた。
 剣を片手に、濡れたタオルをもう片手に構える。

「ははッ! 何の真似だ? 布なんぞ簡単に焼き捨ててやるわ」

 たしかに、濡れた布だとしてもグレンの高温の剣へ攻撃するには無理がある。
 でも元々攻撃したいのはそこじゃない。
 剣で撹乱し、タオルで仕留める。

 グレンはタオルの存在に意表を突かれながらも警戒している。こちらの動きを探るためか、ジワリと踏み出してこようとするグレンの虚を突く。
 俺は大きく一歩前進した。
 さっきまで引いてばっかりだった俺の大きい踏み込みに戸惑うようにグレンの剣先がブレた。

「ハァッ!」

 今までは軽くはじくだけだった剣を今度は強く振り下ろす。案の定、グレンは頭上からの剣に対するガードに高温の剣を掲げた。
 その剣は、最初と同じように俺の剣を刃でしのぎ、とたんに俺の剣を溶かす。その直後、手に残った剣の残骸をグレンの顔めがけて投げつけた。

「クッ!」

 その残骸さえも咄嗟に剣で叩き落とそうとしたグレンに隙ができる。その腕へ水を含んだタオルを鞭のようにはたきつけた。
 濡れタオルは剣を持つグレンの腕にぶつかり絡まる。剣で殺さないように制圧するより、いっそ肉弾戦に持ち込んだほうが容易い。

 だから、そのまま腕に絡んだタオルで引き倒して武装解除する計画だった。
 だけど、グレンの反応も素早い。
 タオルを引く前に踏み込んできてタオルが無力化した。後ろに引いたなら、さらにタオルがキツく絡まったのに。
 ただ、距離はグレンが剣を振るうにも近すぎる。グレンはそのまま俺に体当たりしてきたから、俺は背中から壁にぶつかった。

「ッてぇ!」

 背中にビリッと痛みが走ったけど、目の前に迫るグレンに抵抗しないわけにはいかない。
 高温の刃を押し込もうとするグレンと、その刃が触れないようグレンの手ごと柄を押し返す俺の押し合いだ。

 体勢的にはこっちが苦しい。でも腕力はこっちが上。絶妙に拮抗していた。
 壁に背を預けたまま、渾身の力で押し返してもグレンは簡単には引かない。

「最後の足掻きか……ッ!」

 そう振り絞るグレンの顔には勝利を確信した腹の立つ笑みが浮かんでいた。
 顔に近づく高温の刃が俺の前髪を焼く嫌な匂いが漂った。間近な刃から顔に熱も伝わってくる。

 その時、ウォーレンと目が合った。
 グレンのすぐ後ろに立つウォーレンと。

 そうだ、この部屋にはまだウォーレンがいたんだ!
 俺にもグレンにも、いつからか忘れられていたウォーレンが!

「残念、俺にはまだ切り札があったわ」

 グレンの笑顔が不審げに歪んだ。

 直後、ウォーレンが振り下ろした椅子はグレンの後頭部を強打して砕けた。
 一瞬意識の飛んだグレンの手から力が抜ける。
 その手から奪い取った剣の柄をグレンの首に叩き込んだ。倒れたグレンは昏倒したようで、白目を剥いていた。

「はぁはぁ……ナイスアシスト」
「私のまいた種だからな」

 サラッと最後を持っていったウォーレンは、冷めた目でグレンを見下ろしていた。
 ふと、俺の顔に違和感があった。慌てて顔をおさえると、リックが顔から外れないように魔法をかけた覆面があっけなくハラリと落ちた。

 な、なんで?!

 焼け焦げた跡がついた覆面は前髪と一緒にグレンの魔法の剣に焼かれていたらしい。魔法と魔法で相殺でもされたのか?!
 やばっ、ウォーレンに素顔がバレる!

 慌ててウォーレンに背を向けた。
 こっちに来るんじゃねぇって思うのに、背後からウォーレンの足音が近づいてくる。

「どうした、大丈夫か?」
「俺は大丈夫だけど、覆面が……」

 片手で顔を覆ったまま、焼き切れた覆面をヒラヒラと振ってみせた。

「なんだ、そんなこと。もう嫁にくるのに覆面などいらんだろう」

 ………………? あれ? 俺が嫁に行くこと、もう確定してたっけ?

「いや~……でも突然だとビックリさせちゃうし。やっぱり段階を踏んでさぁ……」

 まだ俺こそ、ウォーレンを驚かす覚悟ができてない。だって、体の関係がある男娼ランスが実は部下の騎士クラレンスなんだぞ?! あとあんたがふった相手だ!!
 ジリジリと扉の方へ後退る。

「逃げる気か?」
「いやいや、あんたの方が逃げるかもしれないし?! 命が惜しければ俺の顔を見るな!」
「あなたはメデューサなのか?」

 ウォーレンがフッと笑った気配がした。
 すっと伸びてきた指の長い手に腕を掴まれた。強く引き寄せられて逃げられない。

「気弱だな。昼間の姿からは想像できないぞ、クラレンス」

?!!!
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