星の丘ホーム、子どもたちの物語。

doiemon

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私の仕事

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 受付にも人が並んでいた。何もルールがわかっていないが立ち尽くしていると、親切な女性が整理券を取って並ぶのだと教えてくれた。
 脇にいくつも並んでいた求人検索の機械で自分の興味があった求人票をプリントアウトして、 受付に持っていけば紹介状を書いてもらえるということを受付の人が丁寧に説明してくれた。 
 なんだ、私に合ったアルバイトを紹介してくれるわけじゃないんだ……。            
 確かにパートやアルバイトの求人は多くあった。スーパーの品出しやレジ打ち。どれもダメだったやつばかり。なんか私がやりたいと思える仕事は見つからなかった。
 窓口のおばさんはどうぞといわんばかりの表情だったが、私は断った。
 知らぬ間にため息が出ていた。出口の壁にも最新の求人票がたくさん張られていた。せっかくハローワークに来たのだから、端から順番に目を通していった。
 ひとつだけ目に止まるものがあった。
  
 保育士(仮) ※未経験歓迎、年齢、学歴不問。
 やる気があればどなたでもできます!

 なんかうさんくさいと思った。仕事内容のところには「下は5歳~上は18歳の世話」と書かれている。意味がわからない。
 でも、誰でもいいって書いてあるから……、誰でもいいのかな。懐が広いのか、適当に募集しているのか。
 怪しいけど、住所もここから近い。
 う~ん。考えたつもりだけど、私の体はすでに動いていた。
 求人番号を控えて、受付の人に伝えた。私の表情が怖かったのだろうか、焦った様子で窓口の人に伝えて案内してくれた。アレ、なんか、私、大丈夫かな。
 私がこの求人に興味を示したことを伝える前に窓口の女性はすぐにこの求人票の電話番号をダイヤルしていた。
 「はい、仕事の応募です」
 窓口の女性は明るい声で電話している。
 「履歴書などの準備はいらないから、近日中に面接したいとおっしゃってます。いつなら面接可能ですか?」
 私に質問がきた。
 「いつでも……、今日でも平気です」
 私はなんか、なめられたくないとか、根性がないとか、そんなふうに思われるのを恐れていた気がする。
 「じゃあ今日の夕方面接できますか?」
 電話先の言葉を女性は伝えてくれた。
 「はい、うかがいます。よろしくお願いします」
 私は実際に話していない電話の向こうの相手に頭を下げた。
 なぜだがわからないけど、私自身はドキドキしてて、ちょっと変な緊張が頭と心を満たしていた。
 
 約束の時間は午後4時。星の丘の3丁目5番地にある、個人経営の子ども施設だという。そこの職員の募集だったのだが、果たして私にそんなところの職員が務まるのだろうか。歩きながらずっとそんなことを考えてた。
 「着いた」
 ずいぶん大きな庭付き一軒家。家のアパートの部屋とは大違い。私は震える指でインターホンを押した。
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