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番外・後日談
65. お風呂タイム*
浴室は寝室から入るようになっているので、そこへ行くには必ずと言っていいほどベッドが目に入る。ベッドの上にサイズ違いのガウンの替えが二着並べられているのを目にして、そうか俺達がこのあと同じ寝室を使うなんてことぐらいお見通しだったんだなと悟った。
こんなに気の利く手配をしたのはいったい誰だろう。頭の中に浮かぶ人を数えてゆき、片手の指の本数を越えたあたりでやめた。何故数えようとしたのだろうか。真実は闇に葬るのが一番だ。
使用人達の仕事ぶりに感動しそうになっている俺の意識を、アレッシオは濃厚な口付けで引き戻し、ガウンと肌着をじっくり焦らしながら完全に脱がしてしまった……。
首筋に唇が吸い付き、手の平が肌をあぶるように撫でて、俺がうっとり瞼を閉じている間に、床へパサリと落ちている。
「こら。気を散らそうとしていますね?」
「あうっ……だ、だって……」
アレッシオが人差し指を鉤爪のように曲げ、俺の股間で半勃ちになっているそれを掬うように引っかけた。
硬さを確かめ、たわむれるようにクイクイと揺らされ、目尻が滲んでくる。
―――余計なことでも考えて気を散らさないと、あっという間に元気いっぱいになるからまずいのに……!
しかもアレッシオは、俺がほどよく硬くなったのに満足すると、あっさり指を離してしまった。
えっ!? と目を見開いた俺に軽い口付けをひとつ落とし、彼は再び俺の手を引きながら、浴室のドアを開ける。
ちょっとまって、まさか放置ですか!? それにおまえは脱がないの?
しかも今回は別々の入浴じゃなく、まさかもしや一緒に入るつもりなのか……!?
浴室は配管のせいで、離れた部屋まで声が通りやすいことぐらい、アレッシオだって充分承知だろうに。
「う……」
だがしかし、股間で生殺し中のオルフェオくんが「一思いにやってくれ!」と叫ぶ。どうしようか迷いつつ、俺はそろりとそこに手を伸ばしかけ……
「ダメです。それは私のものですから、勝手に触ってはいけませんよ」
手を掴まれ、小声でひっそりと命令されてしまった。
……うあぁ……いじめっこモードだぁ……!
この国の風呂文化は、基本的に一定の年齢に達すれば自力で入浴するようになっている。浴室に使用人を大勢入れて世話をさせるのはあまり一般的ではなく、手伝わせたとしても少人数だ。
それから、浴槽に湯を入れるためのポンプを押すのは使用人の役目。もし途中で湯を足したくなれば、声を上げて使用人を呼ぶか、ポンプ要員を最初から浴室に待機させておいたりする。
熱湯タンクの残量の問題もあり、ボタンをピッと押せば追加で沸かしてくれる仕組みはないので、俺も自力でガンガン流すことはしていなかった。
後から湯量を調整しやすいようになのか、形が日本式のバスタブに近い浴槽には、熱めの湯が半分ほどためられていた。
アレッシオが自分のガウンを脱がなかったのは、俺の入浴の世話をするためだったらしい。俺だけ湯に浸かりながら、枕代わりに折られたタオルへ頭を乗せると、頭上から「目を閉じていてください」と潜めた声が降りてくる。
言われた通り少し強めに目を閉じると、丁寧な手が優しく洗顔をしてくれて、保湿をしてくれて、髪を洗ってくれて……なんだこの天国。
七分勃ちのオルフェオくんが放置されているのだけがつらいが……いや本気で恥ずかしいし、湯舟の中で内股になってモジモジしてしまうけれど。
しかも髪を石鹸水で洗ってくれる指の感触が気持ち良過ぎて、下半身が全然鎮まらない。なんだこの新手の意地悪は。
しかし、「もしや風呂で!?」とビビったが、この様子ならここでは焦らすだけで何もしないかな?
―――と油断していられたのは、俺の髪を流した後、アレッシオが自分のガウンを脱ぎ落とすまでだった。
そこそこ大きな浴槽に彼も入って来て、背後から抱き込まれた時はドキリとした。二人で浸かったら湯の高さがちょうどになり、別の意味で戦慄した。
まさかこれを計算して、浴槽を半分だけ溜めていたとか言わんよな?
違うと言ってくれ。湯の準備をしてくれたのは、アレッシオではない誰かだというのに……!
俺の背はアレッシオの胸に密着し、膝の上に乗せられた格好。抱きすくめられるのは気持ち良くて好きなんだが、首の後ろを舐められ、胸の粒をいじられ始めた時は、いよいよヤバイと思った。
案の定俺は今、浴槽の中で、下から貫かれている。
「っ! ……っっ! ……うンっ!」
「しー……」
しー、って!!
しー、て言われてもッ!!
こちらが両手で口を塞いでいるのをいいことに、胸やら足やら、好き放題にさわさわと手の平を這わせてくれやがって。しかも、肝心の部分だけは綺麗に避けて!
アレッシオが本気を出したら、俺は絶対に声を抑えられないのがわかりきっているから、確かに加減されてはいた。その分、じっくり味わうように下から突かれて、出せない声の代わりに涙が出てきた。
声だけでなく、中に湯が入ってきそうなのも気になるし、ゆっくりしてもらったほうが助かるけれど。
―――湯けむりの宿、やはり風呂場の防音は必須だな。恥も自重も捨て、声漏れしにくい風呂を特注で作らせねば……!
「んっっ! ……ふ、は、はぁ……」
「ふ……」
珍しく俺が一度も達することなく、アレッシオが先に達した。中を濡らされる感覚にぶるりと震え、でも俺の中心は硬度を保ったままだ。
必死で声を抑えつつ、頭の中で湯けむり別荘の構想を練ったりしていたから、集中できなかったんだな。
「上がりましょう。立てますか……?」
「ん……」
後ろからずるりと抜き出され、小さく声が漏れた。
何故俺は、せっかくお風呂に入ったのに、入る前より疲労困憊なのだろう?
ぐったりしつつ浴槽から出ると、アレッシオが石鹸水を手の平に出して、俺の身体の表面をぬるぬると洗い始めた。湯に浸かる前じゃなく、浸かった後に洗う理由としては、アレでソレだからだ……。
あ……うしろも……。
これはいったい何の苦行だろう。湯から上がったら上がったで、声を我慢させられている。またもや両手で口を塞ぎながら、「俺本気で泣くぞ!?」と眼力を込めて睨み上げたら、焦げ茶の瞳がスウと細まり、喉仏がゴクリと上下した。やべ、逆効果だった。
彼は予め桶の中にくんでおいた湯を互いの身体にかけ、泡を流し落とすと、へろへろの俺の腕を引っ張って浴室の外に出た。
すぐそこの衝立にかけておいた大判のバスタオルを掴み、俺の身体を手早く丁寧に拭いてゆく。
吸水性と速乾性のあるタオルを開発させてよかった。手触りはいいし、これのおかげで風呂上がりが格段に楽になった。
アレッシオはずっと無言。これは経験上、なんか俺が煽ってしまって切羽詰まっている時の顔と見た。未だに放置されている俺のオルフェオくんと違い、彼はさっき一度出したのに、衝動が再燃してしまった感じだろうか。
ふふふ、ザマーミロ! なんて余裕は、三分持てばいいほうですね。ええ、学んでおりますとも。
アレッシオは互いの身体と髪の水分を拭き取った後、別の乾いたタオルをベッドに広げ、せっかく用意してくれていたガウンを脇へ退けてしまった。
いよいよ限界がきて歩けなくなった俺を抱き上げ、タオルの上に横たえた後、サイドテーブルの水差しからグラスに果実水をそそぐ。
彼は何口か飲んだあと、俺にもそれを飲ませてくれた。……口移しで。俺を弱火から中火であぶり続け、少しでも熱の冷める要因は許さないという執念を感じる。
既に一度迎え入れていたそこに香油が足され、両足を持ち上げられた。恥ずかしいのに、やっと解放してもらえる期待で胸が高鳴る。
後孔にぴたりと当てられたアレッシオのそれは、完全に力を取り戻していた。
見下ろす彼の瞳はギラついているのに、表情は微笑んでいてゾクゾクする。
「もう、いくらでも声を出していいですよ」
お許しが出た。
「はっ、―――あーっ、あんん……!」
奥までひと突きにされ、我慢せず声を張り上げた瞬間、とてつもない快感が全身を走った。その喩えようのない感覚に、俺のそこは結局、触れることなく悦楽の証を噴き出してしまう。
俺の身体はすっかり、アレッシオのために作り変えられてしまった。彼のために震えて、彼のいいように支配されてしまっている。
「オルフェ……愛してる……」
「ああぁっ、あっ! あっ! ……アレッシオ、アレッシオぉ……!」
達したばかりなのに、後ろを何度も突かれて、また自分のそれが硬くなっていくのを感じた。
夕食……食べる余裕、あるかな……。
揺さぶられ、打ちつけられ、もう何もわからない。魚みたいに、ベッドの上で跳ねるしかない。
ドロドロに愛されて、余計なことが全部消えて、アレッシオが好きだということしか考えられない。
無我夢中でもがいていた手を、彼の指で一本一本絡めとって捕まえられ、シーツの上に押し付けられた。
「オルフェ……俺のものだ……」
「ひんっ……!」
奥を深く抉りながら耳たぶを食まれ、俺はたまらず二度目の精を放っていた。
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読んでくださってありがとうございます!
前回もお伝えしました通り、年末年始の更新は
12/31~1/2までお休み、1/3以降から投稿再開予定です。
よいお年を!
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