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番外・後日談
66. 僕だってたまにはやっちゃうこともある (1) -sideアムレート
僕はこう見えて大悪魔だ。
こう見えて大悪魔なんだよ。
ホントだよ!
そんな僕でも、やっちゃうコトぐらいある。
だいたいがそーゆー時は、いつもと違う行動を取った時なんだよな。
今回は何があったかっていうと、まぁ話は昨日に遡る。
■ ■ ■
『おさんぽ行ってきます』カードを僕用ベッドにのっけて、僕がどこへお出かけに行ってたかっていうと、王宮だ。
そう。アイツが執事の兄さんとウッキウキお揃いの衣装で出かけた、あの式典。
なんでアイツらに内緒で行ったのか? それは僕のおやつに、ちょっとつまみ食いできる奴はいないかな~って思ったからだ。
食事じゃなくておやつだよ。
ほんのちょっと齧るだけだよ。
この国の上位身分に巣食っていた奴らをごっそりイタダキマスしちゃってから、まだちょっぴりしか経っていないし、ぶっちゃけお腹は全然すいてないんだよね。
でも、おやつは別腹だ!(きっぱり)
食べ過ぎでお腹がポンポコになってないかって? この僕のキュートでスマートなお腹を見るがいい!
……ふわふわでわかんないかにゃ。
しかしアイツは確実に「食べ過ぎはダメ!」とか言い出す奴だろ。将来僕がメタボになったら困るとかって本気で言うぞ。
そんなわけで、おやつをつまみに行く時は、基本的にアイツには内緒だ。
行き先を王宮にしたのは、将来有望な若き伯爵が功績によって侯爵になるっつうと、嫉妬バリバリな奴が絶対いるじゃん?
上位身分の悪党どもの大半が一掃された後、残った奴らのパターンとしては、国が綺麗になって喜ぶ奴と、ビビッて自分の行動を改める奴と、自分の上に居た奴が消えて「俺の時代が来た!」って調子こく奴、だいたいはこんな感じに分かれるもんだ。
僕が狙ってんのは、最後のやつ。おとなしくしてりゃぁいいのに、棚からぼたもち的なラッキーが舞い込むと、気が大きくなって失敗する奴がいんだよねぇ。みゅふ。
最近アイツにちょっかいかけてる東西侯爵なんかは、そいつらに祭り上げられている代表格だろ。身の丈に合わないコトばっかりしてるから、今だけはよくとも、一年もしない内に急転落してんじゃニャいの?
思った通り、式典には美味しそうなおやつ候補がちらほらいた。
この広間、二階席がないんだよな。格式の高いやつほど、国王を見下ろす場所に席を設けちゃいけないっていうルールがこの国にはあるんだ。
歌劇ホールなんかじゃ普通にVIP用の二階席とかあるけど、王族が利用する時は絶対に上の階。
舞台かぶりつきの席で観たけりゃ、完全にお忍びで行くしかないってんだから不便だね。
僕は柱の上部、天井のアーチを支えるでっぱり、なんつったっけ。そこにコソっと座り、王様の玉座より高い場所から見下ろしていた。
ホントは姿が見えないようにすることもできるから、こんなトコにいなくてもいいんだけどね。高いトコが好きなんだもん。
それに僕が姿を消していても、アイツや兄さんには見つかってしまう。狭間の世界に入っちゃえば、アイツらにさえ僕を見ることはできなくなるけど、そしたら臨場感なくなって僕がつまんないし。
前にちらっとアイツとそんな話をしたら、「オーケストラをテレビの画面越しに見るのと、生で聴く違いか」だってさ。
僕は正直、テレビっていうものを狭間の世界からしか見たことがない。でも言っていることは何となくわかった。狭間から世界を眺めた時の感じ、それに近いと思う。
アイツが真ん中の赤い絨毯を歩いていると、まぁいっぱい釣れること釣れること。大半は好意的な奴だから、そうじゃない奴の視線と感情がクッキリ目立つ。
お、あそこのオッサン、アイツに見とれてんな? お、あのオッサンはアイツに惚れやがったか。
やめとけよ~、怖ぁい兄さんの妨害が待ってるぞ?
ふむふむ、「ワタシごとき想うだけに留めておこう」か。うんうん良い心がけじゃないの。アンタみたいに弁えてる奴はきっといいコトあるぞ! これまではともかく、今のこの国はアンタみたいなのが評価されやすい時代に入ってっからな。
執事の兄さんは……まぁ通常運転だ。
良かったなオッサン達、こいつはこいつでアイツしか見えてないから、全然気付かれてないぞ! セーフ!
と思っていたら。おや東西侯爵の片割れが降格になっちゃったぞ。まぁ一番儲けてる町『だけ』は手元に残してもらえたから、けっこーな恩情じゃない?
時代が時代なら、ポンと爵位剥奪の上に全財産を取り上げられても不思議じゃないし、それに比べたらよかったじゃん。王様の権限が今よりも強かった時代は、処刑ですら王様の気まぐれでポンポンできちゃってたからな。「あ奴は気に入らぬ、死罪じゃ!」がマジでまかり通ってて、よく僕のゴハンになる奴が……コホン。
ま、それは置いといて、本日の僕のおやつだ。
アレがいいかな~?
アレも美味しそうだな~。みゅふ。
でもまだ席が遠くてアイツがよく見えなかった奴らもいるから、ちゃんと選ぶならパーティーの時がいいか。
というわけで、パーティーの大広間だ。僕がいるのはやっぱり柱の上。ここが一番見やすいんだよねぇ。
おーおー、やっぱりアイツら目立ってんなぁ。執事の兄さんとのお揃い衣装ももちろんだけど、弟の奴まで加わると目立ち方がすげーわ。
ロッソの臣下の様子はというと、アイツに言葉をかけられて感涙って感じだな。さりげなく兄さんのピンの家紋にも目をやって、それに関して思う所はないっつーか、密かに「閣下の隣は任せたぞ」みたいに思ってる爺さんもいる。
ロッソの臣下の気持ちとしては、執事の兄さんが本職の執事だった頃から顔見知りの奴もいて、「これだけの男なら文句なし」という応援派と、「閣下が妙なのに群がられるよりいい」っつー消極的な賛成派とがあるみたいだ。
つまり反対派はないってコト。
これ、ほかの家だったら―――アイツと執事の兄さんじゃなかったら、反発がえらいことになるもんなんだぞ? ホントなら。
王様が兄さんをロッソ家の席に座らせたのは、ほかの貴族を黙らせるためであって、身内を黙らせるためじゃなかったし。
人望の勝利ってやつが強力過ぎるわー。
無意識にやってんのが怖えー。
そんで注目のカード、ローザ男爵家の長男ってやつがとうとうアイツとご対面。
みゅっふふ、執事の兄さん、内心穏やかじゃないねえ。あとで揶揄ってやろうっと。
……つうか、『ピンク頭』って、オマエよう……そこに注目すんのか? 新たな主君にヒロイン疑惑かけられてるって知ったら、この長男泣いちゃうんじゃね?
コイツは執事の兄さんが手ぇ回して、とっくに婚約者が決まってるし、浮気なんぞしない奴だ。コイツが執事の兄さんを攻略するかもって、そりゃ~ないだろ。
婚約者がいなかったとしても、まず一番やべーのはオマエだと気付く日は来るのか……。
と思っていたら、オリーヴァ公爵の長男ってやつがアイツに声をかけてきた。
ん? んん?
……あれ~?
いやいや。僕の知る限りでも、びーえる構想ってやつは無かった……はず……だぞ?
オマエの知識や記憶を移植した後で、パラレル続編が出たとしても、それがこっちの世界に影響することは無いからな?
ないんだけどな。
仮に影響してたとしても、ピンク頭の長男がヒロインはないだろ。
人物相関図のハートの矢印、集中してぶっ刺さってんのはオマエだと気付け。
無理か。
誰かアイツに現実を教えてやれ。
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