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番外・後日談2
すれ違いを放置したら災いの元になる (前) *
こんな、こんなことになるなんて。
全身が火照っている。指先がじんじんとする。どこかがほんのわずか擦れただけで、そこから走ったしびれにうめき声が出そうになる。
息が荒い……。
「当時の私の状況を、ご理解いただけましたか?」
静かな声と裏腹に、燃える瞳で見下ろしながら近付いてくる男を、俺は呆然と見上げることしかできなかった。
―――ちょっとした願望と負けず嫌いと出来心が合体した、不幸なすれ違いだったんだ。
俺はいつもアレッシオにとち狂っているのに、彼はいつでも余裕綽々なのが悔しくて、少しばかり拗ねたくなることがある。これは定期的に訪れる現象だから、あんまりハッキリ言いたくはないけれど、よくある痴話喧嘩というやつだ。
余裕のないアレッシオを見たい。見たことがないわけではないけれど、あまりに頻度が少なくて、もっと見たいと思ってしまうのだ。
でも思い返せば、子猫に「オマエあんまり煽らねーほうがいいぞ?」と忠告されるぐらい、俺は勢いに任せてやばいことを口走ってしまった気がする。
やばいこと―――それは昔、俺がアレッシオに媚薬を持ったこと。
よりによって俺は、わざわざ自分からそれを蒸し返してしまったのだ。
おまけに、当時彼が俺に指一本触れなかったことに対し、「どーせ私にはそんな色気も魅力もないんだろ」みたいな理不尽なことを言って拗ねた。
手ぇ出すわけないじゃん!? 当時俺、いくつだよ!? むしろアレッシオに感謝しろよ!
あの当時はちゃんと心から反省したというのに、こんなにペロッと簡単に口にしたら、凝りてないって誤解されるじゃん!?
しかもだ。
アレッシオが大人の顔でハイハイと俺をあしらうのがさらにムカついて、「あんまり私を子供扱いすると知らないぞ?」なんてことまで口走ってしまったのである。
あとで気付いたんだ。そのセリフ、まるで「ほかの誰かに浮気するぞ」と脅しているようではないか?
俺が浮気など有り得ないし、アレッシオもそれは承知してくれているはずだが、言葉だけを取ればそう聞こえる。
違うんだ。拗ねた勢いで言ってしまっただけなんだ。何もかも口先だけのことなんだ。
だけど……そのあと俺達は忙しくなってしまい、アレッシオにフォロー、し忘れた……。
チ―――ン……(お経のBGMとともに)。
そんなわけで今夜、アレッシオに一服盛られた俺がいましたとさ。
あの魔法のおくすり、今は指定医師以外の調合や売買が禁じられているけれど、材料自体は簡単に手に入るから、作ろうと思えば簡単に作れるのである。毒物ではなく依存性もないから、歴史をちょいと調べてみたら、大昔にどこかの宮廷の閨で使われていた代物みたいで……。
という余談はどうでもいい。ともかく、俺は夕食も入浴も終え、ナイトガウン姿でまったりくつろいでいた。そんな時アレッシオに、「閣下、何も訊かずにこれを飲んでみてもらえませんか」と言われ、手渡された小瓶の液体をごくりと飲んだのだ。
十ミリリットルはないぐらいの量で、蜂蜜の甘みと濃いハーブっぽい香りがしたな。
……疑問もなく飲んだよ? 悪いか。そしてすぐに、冒頭の各種症状が現れたわけである。おそらく十二歳の頃の俺がアレッシオに飲ませたのと同じ、ほとんど薄めていない原液だ。
こういうのはもしや『一服盛られた』とも『騙し討ち』とも呼ばないのだろうか。堂々と真正面から手渡されて飲んだもんな。
「あ……あれ、っしお……」
「ご安心を。あなたの予定は調整し、明日から二日間お休みにしております」
―――っっ子猫ぉぉーッッ! たすけてぇぇーッッ!
俺はガバッと猫用ベッドを振り返った。
そこには一枚のカードが置かれていた。
『おさんぽ行ってきます』
っっのおおお~……!!
あ奴もしや、今宵の執事の企みを知っていたわけか。
知っていたのに黙っていたなんて! いや、気を利かせて外してくれたんだねありがとうってお礼言うべき!?
「オルフェ?」
「ひゃっ!?」
するりと腰を抱かれ、思い切り変な声が出た。ただ腕を回されただけなのに、そこから凄まじいしびれが走ったのだ。
「いけませんね。この状態で、よもや逃げられるなどとお考えですか?」
「う、……あ……」
こめかみに触れる唇が、小さく笑みを作っているのがわかる。
触れる吐息すらもゾクゾクして、目尻に涙が滲んできた。
俺の股間にあるものは、たったこれだけの刺激で、あっさり勃ち上がってしまっている。
「アレッシオ……! や、やめ……」
「このまま放置されてはおつらいでしょう? わかっていますよ。何せ、私自身が経験しておりますから」
根に持ってんな! ほんとごめんってばっ!
しかしさっきから口を開けようとすれば変な声しか出ず、ひたすらアレッシオの腕に捕まるしかない。下半身がガクガク震えて、もう立っているのもつらいのだ。
かといって、全身の感覚が鋭敏になっているこの状態で触れられるのも怖い。
なのにアレッシオの唇はこめかみからゆっくり伝い下り、首筋を揶揄うように食んだ。
「ぁ、あ……」
いやだ、なんだこれ……! とてつもない感覚が一気に股間へ集中し、歯を食いしばる。もう抵抗の言葉すら出せない。
強い腕が腰を抱いたまま、唇が喉から鎖骨へくすぐりながら下りる。
片手がガウンの前を掴み、ぐいと開けた。あらわにされた左胸に、尖った紅色の粒がある。
そこに吐息を感じて、「ひっ」と声が出た。
だめだ、今そんなことをされたら。
「……っ……んっっ!?」
生温かい舌が胸の尖りをねっとりと包み、唇全体を使って吸い付いた。
その、痛いほど強烈な感覚に目を見開く。
「あぁ……ッ!」
びくんと痙攣し、俺はハクハクと喘ぎながら、アレッシオの背にしがみつくしかなかった。
ぎゅっと瞼を閉じ、何度か震える息を吐いて、信じられない思いで再び目を開ける。
自分の先端が濡れているのを感じた。
嘘だろう。俺、これだけで達したのか。涙の雫がポロリと零れ、胸から顔を離したアレッシオが、その涙を唇で優しく吸い取った。
「おや? ……もう出てしまったのですね」
「……う、……嘘……こんな……」
「ええ、わかっていますよ。いつもは、こうではない。ここも……」
「ひぅっ……」
「まだ、元気だ」
たわむれるように指で包まれた俺のそこは、たった今達したばかりなのに、既に硬くなっていた。
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読みに来てくださってありがとうございます!
すみません……1話で終わらず(汗)
続きは明日になります~。
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