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番外・後日談2
『鏡の精霊~』への出張編 (0)
しおりを挟むその日は朝から妙な天気だった。ものすごく晴れていたのに、昼前あたりからだんだん、曇ったり晴れたりを繰り返すようになった。
それも、どこから雲が流れて来たのやらわからない。急にどこからともなく生じて、陽射しを遮るのだ。
風も吹いたりやんだりと、どうにも天候の読めない日だった。メイドや下働き達は干したばかりの洗濯物を早々に取り込んでしまい、俺とアレッシオも出かける予定をキャンセルした。
「せっかくの休暇でしたが、また日を改めてお出かけしましょう」
「そうだな。まあ、部屋でおまえとのんびりするのも悪くないさ」
二十一歳の夏。俺とアレッシオは本邸の俺の部屋で、小旅行の予定を延期することに決めた。
俺の仕事とアレッシオの仕事が早く片付き、奇跡的に次の予定まで間が空いて、できあがった長い休暇。この機会を逃せばまた忙しくなりそうだし、今のうちにのんびり楽しもうと話していたんだが。
視察ではなく、純粋に遊ぶ目的で遠出するなんて初めてのことだから、楽しみだったんだけどな。
でもこの怪しい天気は、なんとなく『やめとけ』という気分になる。無理をして出発しても、途中で悪天候に泣かされそうだ。
特に何をするでもなく、二人ソファに座ってくっつき、子供時代のジルベルトやシルヴィアとのエピソードをいろいろ喋ってみる。これ以外の話題だと、俺はどうしても仕事の話をしてしまうからな。
アレッシオは「お仕事の話でもあなたとなら楽しいですよ」って言ってくれるんだが、普段から仕事しすぎを注意されている身としては、お休みの日のお喋りぐらい普通の話題でできるようになりたい。
だらだらのんびりお喋りをして、時々キスをもらったり抱きしめてもらったりして、あ、なんか恋人の休暇っぽい……と思い始めたのは昼の手前あたり。
いきなり死角から白い毛玉がひょいっと出てきて面食らった。
文字通り、自分の視界の外からいきなり現われたような感じだった。
「おい、おまえらっ……と、大丈夫だったか」
「ん? どうした?」
「いや、んみゅ……」
猫用ベッドにおさんぽカードは入っていなかったので、この邸内にいたはずなんだが、どこからか急いで戻って来たような雰囲気がある。
どうしたのだろう?
「アムレート様、どうなさいました?」
アレッシオも怪訝そうにしているが、子猫は答えない。
しきりに鼻をひくつかせ、うろうろしたり立ち止まったり、どこかを見上げたりと落ち着かない。
瞳孔が縦に細くなっている……。
「なんか、まずいぞ……」
「まずいって?」
「げっ、やっぱりこれ、悪魔召喚の……!」
子猫の尾がぶわりと膨らんだ瞬間、俺達の足元がパァァ……と光り始めた。
この光って―――これ、魔法陣っぽい!? なにこれ、この世界にそんなもんあるはずが……!?
「オルフェ!?」
「アレッシオ!」
「ちょ、ヤベ、おまえらまでっ!?」
俺とアレッシオは咄嗟に抱き合い、子猫が俺達のもとへ駆け寄ろうとした―――その瞬間、凄まじい光が部屋いっぱいにふくれあがる。
目が焼けそうな恐怖を覚え、俺は背に回されたアレッシオの腕に力がこもるのを感じながら、ぎゅっと瞼を閉じた。
■ ■ ■
数秒後。
ロッソ侯爵本邸、オルフェオの私室は静寂に包まれ、そこには誰の姿もなかった。
…………
……
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読んでくださってありがとうございます!
明日以降から『鏡の精霊と灰の魔法使いの邂逅譚』にて、巻き戻り~からの出張編を開始予定です!
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