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番外・後日談2
あの時、オルフェオの見た夢は (1)
しおりを挟む1話で終わると思ったんですが、まだ続きます(汗)
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明晰夢というものがある。「あ、コレ夢だわ」と気付く夢のことだ。
最初からなのか途中からなのか、それは夢にもよる。
「私の息子のアレッシオと申します。少々生意気やもしれませんが、本日より見習いとして閣下にお仕えいたしますので、どうぞビシバシ鍛えてやってください」
そう言いながらブルーノが軽く背を押したのは、黒茶色の髪に鳶色の瞳の、とても顔立ちの整った印象的なちびっこだった。
あ、コレ夢だわ。
「アレッシオ・ブルーノともうします。よろしくおねがいします」
緊張しているのか、やや強張った顔。たどたどしさを感じるその声は、少女のように高く澄んだ声だ。
俺は優雅にソファに座っていて、初めてロッソ本邸にやって来たアレッシオ少年の挨拶を、主人として受けてやっている……というシチュエーションである。
「私はオルフェオだ。アレッシオは何歳かな?」
微笑みかけてやると、カチコチのアレッシオ少年が答えた。
「ななさいです」
七歳か……うちに来たばかりのジルベルトが七歳だったよな、懐かしい。
でもって俺はあの頃、巻き戻った直後で九歳だった。
もしや自分も子供化を? と己の両手両足を見てみたが、特にそんなことはなかった。
「……?」
挙動不審な俺を不思議そうに見つめているアレッシオ少年。
可愛い。
しかも半ズボンだぞ。執事服を小っちゃいお子様サイズにして、さらに半ズボンにした衣装。
めっっちゃ可愛いわ。
この頃はこんな顔立ちをしてたのか。無垢や純粋といった言葉が似合いすぎる。
あいつにもこんな風に、初対面の挨拶で緊張するような時代があったんだな~。
―――いや、違った。これは夢。俺の脳が作り上げた妄想の産物なのだ。子供の頃のあいつは、きっとこんな感じだったんだろう、と。
そんな想像上の小っちゃいアレッシオが目の前にいて、しかも会話もできる事実に、俺の頭の妄想力へ拍手を送りたい。
全体的に七歳の頃のジルベルトよりも大きめかな。でもジルベルトはあの頃、標準より小さめの子供だったから、このアレッシオ少年が標準体型な気もする。
「では、私はこれで失礼いたします、閣下。きちんと閣下にお仕えするんだぞ、アレッシオ」
「はい、父さん」
ぐふぅ!
尊敬するお父さんに任されてキリッと応えるお子様アレッシオ!
ふくふくのほっぺがほんのり紅潮してますがツンツンしていいですか!?
「だ、だんなさま!? どうしたんですか!?」
「い、いや……なんでもない」
両手を顔に当ててダンゴムシみたいに悶えていたら心配されてしまった。
つうか、小っちゃくてきゅるんとした顔立ちのアレッシオに『旦那様』って呼ばれるのがやばいです……!
それをやばいと思っている俺の頭がもっとやばいな。こんな子に「うちのご主人様ってヘンタイなんだ」と思われ、幻滅でもされたら心がしぬ。
俺は慈悲深そうな表情を顔に貼り付け、「これからよろしくな」と優しそうに言いながらアレッシオ少年の頭をさらさら撫でた。
頭が小さい。七歳だもん当たり前だよ。
「はい。よろしくおねがいします」
「……うむ」
「わっ?」
俺はアレッシオ少年の膝裏に腕をかけ、ひょいと持ち上げた。
軽いな~、簡単に抱っこできちゃったぞ。小さいな~。細いな~。
主人の俺に抱っこされてしまい、「どうしよう」という顔であわあわしているのが可愛い。
アレッシオにもこんな時代が―――多分あったんだよきっと!
アレッシオ少年はブルーノの見習いとして修業をしつつ、俺の側仕えとして働き始めた。
むっちゃくちゃ、ほんっっとおぉ~に可愛い。
だって、だってあのアレッシオが! 飲み物を運んでくる時も、落っことさないようにぷるぷる緊張してるんだぞ!
いや、さすが夢だわ。
教育の足りていない未熟な使用人が、当主である俺の近くに仕えるってことからして有り得ないファンタジーだもんな。
アレッシオがブルーノに引き取られた年齢は聞いたことがないけれど、このぐらいだったのかもしれない。
言葉遣いや日常のあれこれを一通り教育して、だいぶマシになったのが今この状態なのかも。
アレッシオはまだ自分でお茶を淹れることができないので、ブルーノの淹れたお茶を運んで来てくれる。
茶菓子と一緒にテーブルに並べられ、とても美味しそうだ。
「よくできたな、アレッシオ。おまえは物覚えがいいから、すぐになんでもできるようになるだろう。頑張りなさい」
「はい、だんなさま」
露骨に嬉しそうにしてはいけないと教わっているのか、頑張って表情を取り繕いつつ、でもポッと赤くなって嬉しそうな表情がまたたまらん。
もしここにジルベルトがいたら、まとめて弟扱いで可愛がり倒す自信があるぜ。
弟設定、いいかもしれないな。大歓迎だ。
「アレッシオ。こちらに来なさい」
「? はい」
言われるがまま近くに寄ってきた少年の頭を、なでなでなで……。
「……あ、あの?」
恥ずかしそうに困惑するアレッシオ少年。ぐはぁ。
いかんいかんと笑顔を取り繕い、ヘンタイの手を手元に回収する。
「では、こちらおさげします」
するとちびっこアレッシオはいきなりそんなことを言い、空になった皿とカップ類を盆に集め、落とさないように気を付けながら持って行ってしまった。
……俺、ひと口も飲み食いしてないんだが。いつの間に全部腹におさめたことになってんだろう。
ここはやっぱり夢だから仕方ないか。
妖精界やあの世といった、異界のものを食うと元の世界に戻れなくなる、ていう物語もあるし。
永遠に目覚められなくなっても困るから、残念だけどあきらめよう。
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