僕と愛しい獣人と、やさしい世界の物語

日村透

文字の大きさ
49 / 99
巡る世界

48. 狼に食べられる兎の寝床*

しおりを挟む

 躊躇ちゅうちょして一度立ち止まると、なかなか次の一歩が踏み出せなくなる。
 だから変にブレーキをかけず、勇気を出して最初の一歩を前に進ませておこうと、確かにそう思った。
 思ったけれど、これはさすがに、展開早くない!?

「あっ……あっ、あっ……ウォル……!」
「レン……」

 カーテンを閉めた薄暗い部屋の中、お互いが真っ裸でベッドの上にいた。
 僕が着ていたのは軽装備の服だから、普通の服よりしっかりしていて簡単に脱げるものじゃない。なのに、ウォルは恐ろしい速さで僕の装備を完全にひっぺがし、自分の服も脱ぎ落としていた。
 彼の匂いがついていない場所はもうどこにもないだろうというぐらい、全身をくまなく舐められた。
 傷付かないよう絶妙な力で耳をまれ、そこから走った快感に、鎖骨から胸のあたりまでびりびり痺れる。
 ついさっきまでくすぐったいとしか思えなかったその行為が、今やすっかり別の感覚に塗り替えられていた。
 しかも。

「ぁ、あ……やっ、ウォル……嫌だっ……」
「ん? 痛くはないだろう?」
「ひんっ……」

 彼は今、僕を仰向けにした体勢で腰を抱えつつ、お尻の中に指を入れている……。
 痛くはない、確かに痛くはなかった。けれど、そこに指を入れられて、神聖魔法を使われた僕はどうしたらいいんだ。
 怪我の防止と回復と、浄化作用のある魔法なのだそうだ。便利過ぎる。
 助かるよ、助かるんだ、もちろん助かるとも! だけど!
 それはそこにそういう意図で使っていい魔法ではないだろ!?

 ちなみに肉食獣人の爪は普段、先端が指の肉に埋もれた形でおさまっているため、を傷付ける心配はない。攻撃する時にだけ爪が長く伸びる仕組みだから心配はいらないと、指を入れる直前、彼が丁寧に教えてくれた。……とても大事なことだな、うん。

 入り口から入って浅いところに、かすめるだけで身体が跳ねる場所があり、そこを何度もこりこりと攻められて、さっきから声が止まらない。
 力の入らない手でウォルの胸を押し返そうとしたら、あまりにも鼓動が速くて、びっくりして手を離した。
 彼の目を見たら、焼け焦げそうな目でずっと僕を見ている。こんな、涙とよだれで絶対みっともない顔を。

「ぁ、あ……」

 狙い澄ましたように、いっそう強まる求愛の香り。
 まんまと抵抗の力が抜けてしまった。そのくせ、お尻に入ったウォルの指はぎゅっと締め付けてしまう。
 彼は嬉しそうな匂いを発して、僕のそこを見た。
 自分でもわかる。僕の中心はもうすっかりって、ずっと液をたらしている。

 さんざん僕に変な声を出させた後、ようやく指が引き抜かれた。
 お互いにどんな状態なのか、見なくとも嗅覚でだいたい察せてしまうんだけれど、僕はつい好奇心でそこを見てしまった。
 僕のそれと比較するのは大間違いな、ウォルの立派な凶器……。
 ごくりと喉が鳴り、本当にものすごく、今さらな疑問が湧いてきた。

「あ、の、ウォル……」
「ん?」
「ウォルは、僕を、その……」

 言い淀むと、僕よりも察しの良い狼は、すぐにピンときた顔になった。

「前々からキスをしたかったし、抱きたいと思っていたが、それがどうした?」
「あ、え……う……」
「全身真っ赤になって震えているおまえは、いじらしいし可愛い。むしろ以前のおまえは、見た目があんまりにも小さくて弱そうだったもんだから、ヘタに手を出せそうにないと思っていたがな。……今は、前より旨そうだ」

 食べ頃の兎を見下ろし、狼が舌なめずりをする。
 こんなギラついたヤバい瞳で、こんなヤバいセリフを言われて、なのに僕の鼓動は恐怖ではなく、歓びでどくどく高鳴っている。
 もしかして自分は、ヤバい男に引っかかってしまうタイプだったのだろうか?
 両足を抱え上げられ、羞恥と期待で涙目になりながら、ゆっくりとウォルの大きなものを受け入れた。僕に痛みを与えることなく、それはずぶずぶと奥まで到達し、一番深いところまでまりこむ。
 そこを突かれた瞬間、強烈な快感が腰から脳天まで突き抜けて、全身がびくんとしなった。

「あ、あぁあ……!」
「ふっ……く……」
「……ぁ、……ウォル、ウォル……」

 どうしよう。本当に彼が僕の中に入っている。
 目尻から散った雫を、ウォルがキスで吸い取ってくれるのにさえ感じてしまう。
 はふはふと浅い息を繰り返し、彼のぬくもりと初めての快楽にうっとりと目を細め――

「んっ?」

 目を見開いた。僕の中の、浅いところにある弱い部分が、内側からぐぐ……と押されている?

「え? ……あっ、あっ? ウォルっ、なに、なにこれっ?」
「ああ、これはな」

 狼が少し気まずそうな顔になった。
 いわく。狼族の男根は、挿入後、抜けないように内側で、コブができる、らしい。
 そのふくらんだ部分が、ちょうど僕の弱点の位置にあって、押し付けるように当たっていると……。

「……あの、ウォル。ごめん。一旦、ぬいてくれないか、な……」
「無理だ」
「ひぁっ!? ――あっ、あうっ!?」

 奥の感じる場所を突きながら、ウォルは僕の腰を抱え込み、繰り返し揺さぶってきた。

「やっ、やぁあっ! ウォルっ、ぬいてっ! おねがっ……ぬいてぇっ……!」
「無理だと、言ったろ。くそっ、かわいいな……」
「あっ! ひっ! あんっ! だめぇっ……あぁああ……っ!」

 腰を抱えた手が、兎の尻尾を握ってくる。弱点である尾の付け根をこすりながら、容赦なくはらの最奥も抉り、のけぞった胸に舌を這わせる。
 彼の攻めは徹底していた。どこもかしこも強烈な快感に襲われ、僕の理性はどこかへ吹き飛ばされ、自分のものと思えない嬌声がしきりに口から漏れてしまう。
 やがて中に出された瞬間、僕も同時に達していた。出される感触にぶるりと震えながら、自分の先端からもとぷとぷと溢れさせてしまった。
 でも、まだ終わらない。

「悪い。俺のは長いんだ。今から謝っとく」
「あ、あぅ、……あんん……」

 ――謝るタイミングが遅いよ!? そういうのは先に言うべきじゃないのか!
 なのに、口から出るのはうっとりと甘えた声ばかり。
 また奥にたくさん出されて、一度達した僕のものも、すぐにむくりと復活してしまった。

「レン……」

 僕を好きだと、大切だと、全力で訴えてくるこの香りがいけない。
 これのせいで、僕はいつだっておかしくなってしまう。

「すき……ウォル……すき……」

 そう伝えたら、嬉しそうに細められる瞳も、全部、全部好きだ。
 この気持ちも、どうせ彼にはバレバレなんだろうけれど。

「レン……俺のものだ……俺の……」
「……ウォルぅ……ぁあぁ……」

 僕は長い時間をかけて、彼のすべてを使ってとろかされ、隅々まで美味しくいただかれてしまった。



---------------------------------

読みに来てくださってありがとうございます。m(_ _"m)

更新のお知らせ:
所用により次回は11/6以降の更新になります。

しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件

表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。 病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。 この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。 しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。 ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。 強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。 これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。 甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。 本編完結しました。 続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください

僕だけの番

五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。 その中の獣人族にだけ存在する番。 でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。 僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。 それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。 出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。 そのうえ、彼には恋人もいて……。 後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。

小学生のゲーム攻略相談にのっていたつもりだったのに、小学生じゃなく異世界の王子さま(イケメン)でした(涙)

九重
BL
大学院修了の年になったが就職できない今どきの学生 坂上 由(ゆう) 男 24歳。 半引きこもり状態となりネットに逃げた彼が見つけたのは【よろず相談サイト】という相談サイトだった。 そこで出会ったアディという小学生? の相談に乗っている間に、由はとんでもない状態に引きずり込まれていく。 これは、知らない間に異世界の国家育成にかかわり、あげく異世界に召喚され、そこで様々な国家の問題に突っ込みたくない足を突っ込み、思いもよらぬ『好意』を得てしまった男の奮闘記である。 注:主人公は女の子が大好きです。それが苦手な方はバックしてください。 *ずいぶん前に、他サイトで公開していた作品の再掲載です。(当時のタイトル「よろず相談サイト」)

俺がこんなにモテるのはおかしいだろ!? 〜魔法と弟を愛でたいだけなのに、なぜそんなに執着してくるんだ!!!〜

小屋瀬
BL
「兄さんは僕に守られてればいい。ずっと、僕の側にいたらいい。」 魔法高等学校入学式。自覚ありのブラコン、レイ−クレシスは、今日入学してくる大好きな弟との再会に心を踊らせていた。“これからは毎日弟を愛でながら、大好きな魔法制作に明け暮れる日々を過ごせる”そう思っていたレイに待ち受けていたのは、波乱万丈な毎日で――― 義弟からの激しい束縛、王子からの謎の執着、親友からの重い愛⋯俺はただ、普通に過ごしたいだけなのにーーー!!!

世界を救ったあと、勇者は盗賊に逃げられました

芦田オグリ
BL
「ずっと、ずっと好きだった」 魔王討伐の祝宴の夜。 英雄の一人である《盗賊》ヒューは、一人静かに酒を飲んでいた。そこに現れた《勇者》アレックスに秘めた想いを告げられ、抱き締められてしまう。 酔いと熱に流され、彼と一夜を共にしてしまうが、盗賊の自分は勇者に相応しくないと、ヒューはその腕からそっと抜け出し、逃亡を決意した。 その体は魔族の地で浴び続けた《魔瘴》により、静かに蝕まれていた。 一方アレックスは、世界を救った栄誉を捨て、たった一人の大切な人を追い始める。 これは十年の想いを秘めた勇者パーティーの《勇者》と、病を抱えた《盗賊》の、世界を救ったあとの話。

黒豹拾いました

おーか
BL
森で暮らし始めたオレは、ボロボロになった子猫を拾った。逞しく育ったその子は、どうやら黒豹の獣人だったようだ。 大人になって独り立ちしていくんだなぁ、と父親のような気持ちで送り出そうとしたのだが… 「大好きだよ。だから、俺の側にずっと居てくれるよね?」 そう迫ってくる。おかしいな…? 育て方間違ったか…。でも、美形に育ったし、可愛い息子だ。拒否も出来ないままに流される。

処理中です...