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かつて悪(役)だった令息との結婚
181. 管理者としての責任 (5) -sideミッテ
しおりを挟むsideミッテちゃん、(5)までとなります。
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わざわざランハートから確認されていたのに、「それは有り得ない」ときっぱり否定してしまったことが、実は真相そのものだったなんて。
これをどうランハートに伝えればいいのでしょう?
とんだ赤っ恥ですよ! 黒歴史の上塗りです!
そんな私の葛藤に、原因となった侵入者はもちろん他人事。どこ吹く風です。
おのれ、忌々しいですね……!
「きっちり答えてもらいますよ。まず、いかなる理由があろうと、他者の試験への介入はご法度。なのに何故、あなたがここにいるのでしょう?」
『おまえが不甲斐ないからだ。より高次元への進化に相応しい者ではなかった』
「その評価を下すのは、あなたではありませんよ。あなたにそのような権限はない」
『同胞を導く義務はある。その甲斐あって、現在のおまえは相応しき存在に近付いていると認めよう』
その甲斐あって?
――おまえが成長したのはこの私のおかげだ感謝しろとでも言いたいわけですか?
こいつ、話の通じない気配が濃厚になってきましたね。
いえ、人の世界に忍び込んでおきながら大きな口を叩いている時点で、もうとっくにダメでしたね。
「もうひとつ質問です。かつてのランハート・フォン・ムスターと、ルーディ・フォン・ヴェルクの死の原因についてですが。彼らの死は、あなたが導いたものですか」
『そうだ』
「何故そのようなことを?」
『試練だ』
「……はい?」
『以前のおまえは、次の段階へ上がる者として不充分だった。ゆえに、試練を与えた。この程度の試練を乗り越えられなくば、おまえの進化など無意味。そしてこの世界の人間も、おまえの助力がない場合にどこまでやれるのか、力量を測った。結果はいずれも無残なものだった』
……コイツ何をほざいてるんですかね。
試練?
それを私に課したと?
彼らを殺すことが何の試練だと?
『殺してはいない。私はただ導いただけだ』
ああはい、わかりました。
人間にやらせたから自分は殺してはいないと、そう主張したいのですね?
私の同族たる者が、恥じることもなく堂々とこんな詭弁をブチ出してくるとは思ってもみませんでした……!
しかし、ランハート達を死に追いやることが何の試練だと――……もしや。
「この世界をただ、混乱に陥れること。それ自体が目的だったのですか?」
ムスター家とヴェルク家の跡継ぎ息子が、ほんの幼い段階で命を落とすことで、実際にこの世界はとことん混乱しました。
まずはリヒトハイム王国が、そしてそこから世界中に混乱が伝染したのです。
ただ、現在のランハートもイゾルデも、仮にリシェルが子をなせなかったとしてもなんとかすると言っています。それは嘘ではありません。
ムスター家も、そして国王夫妻も、血の繋がった子ができなくとも『今は』何とかできるのです。
以前は存在しなかった、後継者にできる優秀な血縁者が、『今回は』育っているのですから。
これは私だけでなくランハートも意図しなかったことですが、どうも前回までティバルト達によって没落させられていた家の中に、該当者がいたのですよね。
以前彼らに潰されたのは、ムスター家だけではなかったということです。
『現在のこの世界は安定している。人間達もおまえも、みごと私の試練を乗り越えた』
とことん上から目線ですね。
自分が鍛えてやったおかげで、おまえの世界は安定したのだぞと言いたいようです。
こういうの、マッチポンプというのでしょうか。ランハートから聞きましたけれど、火消し人が火をつけるという。
いいえ、もっと悪質でしょうか。この者は火種の周辺に油を撒き、それに燃え移っても自分では消さないのですから。
さあ業火の条件を用意してやったから、みごと防火なり消火なりを成し遂げてみせよと、偉そうに高みから観察していやがったわけです。
――確かに私は未熟でしたし、それは認めますが?
「あなたなどに未熟さを指摘されるいわれなどありませんよ。あなたがこの世界に与えたものは試練などではなく、ただの迷惑行為です」
その力をふるい、人々を洗脳するような真似まではしていないでしょう。
それをしていれば確実に私が気付きますし、我々以外の『同族』も察知してしまいます。
だからごく普通の人間の中に紛れ込み、影響力のある人間を動かす方法を取った。
「どのようにして人間に紛れ込んだのです? それに、ムスター家とヴェルク家だけではないでしょう」
ティバルトによってリヒトハイムの王位が簒奪されたあと、災いの業火が世界中へ燃え広がりやすいように、他国へ移ってあちこち油を撒いていたのではないですか?
それを、人々の力量を測るですって?
何をとことん勘違いをしているんですかあなたは?
『……これ以上の議論は無意味だ。我が試練を乗り越えたことを、ただ誇るといい』
「無意味ではありませんよ、勝手に終わらせないでください! 今度は何をするつもりですか!?」
『何もせん。おまえ達は無事成長を果たし、もう試練の必要はない。あとはその品の無さを改善するといい』
「ちょっと待ちなさい、言うだけ言って――」
光が強まり、私はその場から弾き出される感覚がありました。
あちらが力を行使したというより、精神世界で私の存在を拒否し、遮断したというのが正しいでしょう。
――我々以外の『同族』に察知されないように、ですよ。
バレないようにコソコソしている時点で、後ろ暗いことをやっている自覚ぐらいあるんでしょうがこのアンポンタンがッ!!
「しかし……なんてことでしょうか。つまり、やけに動かないと思っていたのは、もうその必要がないからということだったのですね」
黒幕とやらの目的がいまいち不明だったのは、この世界の混乱そのものが目的だったからで。
ランハートがことごとくその思惑を防いで以降、まるで動く気配がなかったのは、そもそも動く気がなかったからで。
「困りました。これ、ランハートに伝えていいものなのでしょうか」
結局、あの者が誰に化けているのかは不明なままです。
相手の正体が人間ではなかったとなると、人間であるランハートには言わず、私だけでこの問題を処理すべきでしょうか。
断じてアレと一緒にされたくはありませんが、『同族』としての責任を取らねば……
……いえ。
報告・連絡・相談はとても大事。
これもランハートが日頃から言っておりましたね。
自分のせいだ、自分が責任を取らねば、自分だけで解決せねば……と思い込んだ新人が、無理やり自分だけで全部やろうとして事態を悪化させるのだと。
というわけで、全部話しましょう。
天使のくせに人間に頼ったり知恵を借りようとして、プライドはないのか? とあの者ならば言いそうですが。
いいんですよ。
だって私、ヒヨコですから(きっぱり)。
まだまだ未熟で世間知らずなピヨちゃんなのです。
むしろ頼るのが大事な仕事です(開き直り)。
問題は、どのタイミングでこれを相談するか、ですが。
この夢を使った接触方法は、やめておいたほうがいい気がしました。あの者に盗聴される恐れがあります。
今はリシェルとの初夜から数えて八日目。
十日が過ぎればイゾルデからランハートの手元に戻されますから、その時に速攻で伝えるとしますか。
リシェルと二人きりの休暇で、さぞボケボケになっているであろう頭には、きっといい刺激になるでしょう。
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読んでくださってありがとうございます!!
更新のお知らせ:
5/18~20まで投稿お休み 5/21から再開予定ですm(_ _m)
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