どうやら悪の令息に転生したようだ

日村透

文字の大きさ
202 / 266
堕ちた天使を狩る

201. 狩人リシェル、助手ランハート(微*)

しおりを挟む

 読みに来てくださってありがとうございます!
 ちょくちょく投稿お休み挟んですみません
 再開いたします~!

------------------------




 リシェルは母上様から直々に狩りを命じられ、俺はリシェルのために働けと命じられた。
 御意。

 リシェルのターゲットは、王の侍従全員。
 それに加えて、そいつらの実家の親兄弟も全員だ。
 となると、実家はどこにあるのかすべて把握しておかねばならない。
 奴らの逃亡を防ぐよう、あらかじめ手勢を潜ませておく必要がある。

 ――ところがなんと奴らの実家は、王都郊外やその周辺といった、近場に集中しているのが判明した。

 いや、これは以前から調べて知っていたことではあった。
 けれど当初はそのことを、誰も深く考えていなかったのだ。
 都会の近くに住んでいる人間のほうが、都会に就職しやすいという理屈だよ。なんかみんな中央に集中してんな……と感じはしても、有り得ないというほどのことでもなかった。
 だがこうなると、見え方が変わってくる。

「もし遠い田舎にバラけられていたら面倒だったし、近くにいてくれるのは助かるんだが」
「この分布、わざとみたいだよね? 四公の領内に綺麗に配置されている感じがするよ」

 彼の言う通りだ。
 俺達四公の本邸は、領内でも王都に近い場所に建っている。王の呼び出しがあれば、すぐ王宮に馳せ参じることができるように。
 そして、王都を守る最後にして最大の守護壁になれるように。

 しかし王の侍従の親兄弟が住んでいる実家は、そんな四公の本邸を監視しているかのような位置にあった。
 ような、ではなく、実際に監視していたんだろうな。

 ――なあ、ミッテちゃんよ?
 なんとなくこいつらって、暗部っぽい感じしねえ?
 問いかけると、俺の肩でミッテちゃんが「ふむう」とうなった。

「……実を申しますと、かつてはそういうのがありました。と言いますか、どの国にもそういった組織はあるのですよ。ただこの国の場合、自然消滅したと思っていたのですが」

 自然消滅? どういうこと?

「それがですね……かつては、リヒトハイム建国王が独自に集めた、諜報や汚れ仕事を行う組織があったのです。頂点はリヒトハイム王のみであり、王には絶対服従という者達でした」

 国とは関係なく、王様個人の都合で動かせる集団なんだな。
 それが自然消滅したってのは?

「――肝心のリヒトハイム王が、彼らの存在を忘れてしまったのですよ。ファーデンの存在も、ヨハンの代で伝承が途絶してしまったでしょう? あれと同じことが起こったのです。先代国王のさらに祖父の代でしたから、あなた方の感覚では大昔と思いますよ」

 そいつは確かに、俺らからすると大昔だな。

 たとえ王様専用の特殊部隊がなくとも、国家が情報収集を行う組織を抱えている。
 シュピラーレの小父様やヴェルクの義父上様、多分エアハルトもそういうのを持っているはずだ。
 だから王様が個人的に集めた、王様のためだけの秘密組織とやらは、時代とともにそぐわなくなって淘汰されたひとつと言えそうな感じがした。

 だって王家の親子間で伝承が途絶えたなら、組織のトップが新たな王様に自己紹介でもすればいい話だろ。
 だがそいつらは、それをしなかった。
 我が家と同様、できない事情があったのか。
 もしくは王様が王様として相応しい存在じゃなかったから、仕えずに姿を消すことを選んだのだろうか。
 
 違うよな。なんか違う。
 その組織、たいした志も何もなく、ただ漠然と存続してたんじゃねぇか?
 なんとなく、『たとえ王に知られていなくとも我らは王のために動く。それが我らの存在意義だ』みたいな、狂信的な気配がするんだけど?

「ああ、そうですね。確かに、そのような思考の傾向はありました。というか、そのようなをしていたのでした。となると、私でさえ悟ることができなかったぐらいですから、相当に根深く染みついておりますよ」

 全盛期のミッテちゃんなら、すぐにわかったんだろうけどな。
 ただあいにく全盛期のミッテちゃんて、今ほど人間っていう生き物の深部に興味を持ってなかった感じがするんだよ。
 ミッテちゃんは一度力が失われた分、逆に前よりもある面で強く鋭くなってんじゃねぇかなと俺は思っている。
 それでも、侍従達の底にあるものは読み取れなかったみたいだけどな。

 ――そいつらは、『綺麗な』存在だった。
 野心も何もなく、ただ誠実に王様に仕えている。
 多分そこには、偽りの一片もなかった。



 寝室で二人きりになり、リシェルにもミッテちゃんから聞いた話をそのまま伝えた。

「余計に捕まえたほうがいい理由ができたね」
「その通りだよ。この際、完全に消えてもらったほうがいい」

 だって、あのオークの私兵ってことだぞ。
 これまでも王様のために、命令がなくとも奴らが勝手に動くことがあったんじゃないのかね?
「あ奴は気に入らぬ!」の一言でこっそり暗殺とか、そういうのやっていそうな気がすんだよな。

「ヴェルクのお義父様にも協力を仰ごう」
「うん。一斉捕縛に関しては、お父様が適任だ。ヴェルクの騎士団だけじゃなく、シュピラーレにも戦力を提供してもらい、お父様に彼らを動かしていただくのがいいと思う」
「だな。レーツェルの騎士団は、お姉様とエアハルト義兄様の守りを固めることに集中してもらうか」
「うん、そのほうがいいよ。一度狙われているんだもの」
「ファーデンからも一部、動かすか」
「いいかもしれないね。だって彼ら、『天の雫』の影響、多分この世で一番強く受けているよ」

 さくさくと段取りが決まり、纏まった頃には就寝時刻を過ぎていたんだが……

 さあ寝ようと言い出す前に、どちらからともなく、お互いから視線を外せなくなってしまった。

「ん……ぁ……」

 無言で唇を重ね、甘く感じるそれに舌を絡めた。
 小さく漏れる喘ぎが俺の耳をくすぐり、酩酊感が押し寄せてくる。
 さんざん唇を味わったあと、彼の寝間着の前――初夜のピラピラ衣装じゃないぞ――から手を差し込み、しっとりとした素肌を撫でたら、腕の中の身体がふるりと震えた。

「ごめん、なるべく……寝不足に、ならないように、するから……」
「いっ、いいよ……いいから、そんなの気に、しな……あぁ……っ!」

 切ない悲鳴に、下半身がドカンと痛くなる。
 やば、手加減できるかな、俺……?


しおりを挟む
感想 836

あなたにおすすめの小説

記憶を無くしたら家族に愛されました

レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない… 家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。

偽物勇者は愛を乞う

きっせつ
BL
ある日。異世界から本物の勇者が召喚された。 六年間、左目を失いながらも勇者として戦い続けたニルは偽物の烙印を押され、勇者パーティから追い出されてしまう。 偽物勇者として逃げるように人里離れた森の奥の小屋で隠遁生活をし始めたニル。悲嘆に暮れる…事はなく、勇者の重圧から解放された彼は没落人生を楽しもうとして居た矢先、何故か勇者パーティとして今も戦っている筈の騎士が彼の前に現れて……。

姉の代わりに舞踏会に行ったら呪われた第三王子の初恋を奪ってしまった

近井とお
BL
幼少期、ユーリは姉によく似ていることから彼女の代わりに社交の場に出席することが多々あった。ある舞踏会の夜、中庭に姿を眩ませたユーリに誰かがぶつかってくる。その正体は呪われていると噂の第三王子であったが、ぶつかられたことに腹を立てたユーリは強気に接し、ダンスを踊った後、彼を捜している気配を感じてからかいながら立ち去る。 それから数年後、第三王子は初恋の令嬢を探し始めたが、それはユーリに違いなく……。 初恋の相手を捜す第三王子×軽口令息

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

処理中です...