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堕ちた天使を狩る
201. 狩人リシェル、助手ランハート(微*)
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再開いたします~!
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リシェルは母上様から直々に狩りを命じられ、俺はリシェルのために働けと命じられた。
御意。
リシェルのターゲットは、王の侍従全員。
それに加えて、そいつらの実家の親兄弟も全員だ。
となると、実家はどこにあるのかすべて把握しておかねばならない。
奴らの逃亡を防ぐよう、予め手勢を潜ませておく必要がある。
――ところがなんと奴らの実家は、王都郊外やその周辺といった、近場に集中しているのが判明した。
いや、これは以前から調べて知っていたことではあった。
けれど当初はそのことを、誰も深く考えていなかったのだ。
都会の近くに住んでいる人間のほうが、都会に就職しやすいという理屈だよ。なんかみんな中央に集中してんな……と感じはしても、有り得ないというほどのことでもなかった。
だがこうなると、見え方が変わってくる。
「もし遠い田舎にバラけられていたら面倒だったし、近くにいてくれるのは助かるんだが」
「この分布、わざとみたいだよね? 四公の領内に綺麗に配置されている感じがするよ」
彼の言う通りだ。
俺達四公の本邸は、領内でも王都に近い場所に建っている。王の呼び出しがあれば、すぐ王宮に馳せ参じることができるように。
そして、王都を守る最後にして最大の守護壁になれるように。
しかし王の侍従の親兄弟が住んでいる実家は、そんな四公の本邸を監視しているかのような位置にあった。
ような、ではなく、実際に監視していたんだろうな。
――なあ、ミッテちゃんよ?
なんとなくこいつらって、暗部っぽい感じしねえ?
問いかけると、俺の肩でミッテちゃんが「ふむう」とうなった。
「……実を申しますと、かつてはそういうのがありました。と言いますか、どの国にもそういった組織はあるのですよ。ただこの国の場合、自然消滅したと思っていたのですが」
自然消滅? どういうこと?
「それがですね……かつては、リヒトハイム建国王が独自に集めた、諜報や汚れ仕事を行う組織があったのです。頂点はリヒトハイム王のみであり、王には絶対服従という者達でした」
国とは関係なく、王様個人の都合で動かせる集団なんだな。
それが自然消滅したってのは?
「――肝心のリヒトハイム王が、彼らの存在を忘れてしまったのですよ。ファーデンの存在も、ヨハンの代で伝承が途絶してしまったでしょう? あれと同じことが起こったのです。先代国王のさらに祖父の代でしたから、あなた方の感覚では大昔と思いますよ」
そいつは確かに、俺らからすると大昔だな。
たとえ王様専用の特殊部隊がなくとも、国家が情報収集を行う組織を抱えている。
シュピラーレの小父様やヴェルクの義父上様、多分エアハルトもそういうのを持っているはずだ。
だから王様が個人的に集めた、王様のためだけの秘密組織とやらは、時代とともにそぐわなくなって淘汰されたひとつと言えそうな感じがした。
だって王家の親子間で伝承が途絶えたなら、組織のトップが新たな王様に自己紹介でもすればいい話だろ。
だがそいつらは、それをしなかった。
我が家と同様、できない事情があったのか。
もしくは王様が王様として相応しい存在じゃなかったから、仕えずに姿を消すことを選んだのだろうか。
違うよな。なんか違う。
その組織、たいした志も何もなく、ただ漠然と存続してたんじゃねぇか?
なんとなく、『たとえ王に知られていなくとも我らは王のために動く。それが我らの存在意義だ』みたいな、狂信的な気配がするんだけど?
「ああ、そうですね。確かに、そのような思考の傾向はありました。というか、そのような訓練をしていたのでした。となると、私でさえ悟ることができなかったぐらいですから、相当に根深く染みついておりますよ」
全盛期のミッテちゃんなら、すぐにわかったんだろうけどな。
ただあいにく全盛期のミッテちゃんて、今ほど人間っていう生き物の深部に興味を持ってなかった感じがするんだよ。
ミッテちゃんは一度力が失われた分、逆に前よりもある面で強く鋭くなってんじゃねぇかなと俺は思っている。
それでも、侍従達の底にあるものは読み取れなかったみたいだけどな。
――そいつらは、『綺麗な』存在だった。
野心も何もなく、ただ誠実に王様に仕えている。
多分そこには、偽りの一片もなかった。
寝室で二人きりになり、リシェルにもミッテちゃんから聞いた話をそのまま伝えた。
「余計に捕まえたほうがいい理由ができたね」
「その通りだよ。この際、完全に消えてもらったほうがいい」
だって、あのオークの私兵ってことだぞ。
これまでも王様のために、命令がなくとも奴らが勝手に動くことがあったんじゃないのかね?
「あ奴は気に入らぬ!」の一言でこっそり暗殺とか、そういうのやっていそうな気がすんだよな。
「ヴェルクのお義父様にも協力を仰ごう」
「うん。一斉捕縛に関しては、お父様が適任だ。ヴェルクの騎士団だけじゃなく、シュピラーレにも戦力を提供してもらい、お父様に彼らを動かしていただくのがいいと思う」
「だな。レーツェルの騎士団は、お姉様とエアハルト義兄様の守りを固めることに集中してもらうか」
「うん、そのほうがいいよ。一度狙われているんだもの」
「ファーデンからも一部、動かすか」
「いいかもしれないね。だって彼ら、『天の雫』の影響、多分この世で一番強く受けているよ」
さくさくと段取りが決まり、纏まった頃には就寝時刻を過ぎていたんだが……
さあ寝ようと言い出す前に、どちらからともなく、お互いから視線を外せなくなってしまった。
「ん……ぁ……」
無言で唇を重ね、甘く感じるそれに舌を絡めた。
小さく漏れる喘ぎが俺の耳をくすぐり、酩酊感が押し寄せてくる。
さんざん唇を味わったあと、彼の寝間着の前――初夜のピラピラ衣装じゃないぞ――から手を差し込み、しっとりとした素肌を撫でたら、腕の中の身体がふるりと震えた。
「ごめん、なるべく……寝不足に、ならないように、するから……」
「いっ、いいよ……いいから、そんなの気に、しな……あぁ……っ!」
切ない悲鳴に、下半身がドカンと痛くなる。
やば、手加減できるかな、俺……?
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