どうやら悪の令息に転生したようだ

日村透

文字の大きさ
202 / 272
堕ちた天使を狩る

201. 狩人リシェル、助手ランハート(微*)


 読みに来てくださってありがとうございます!
 ちょくちょく投稿お休み挟んですみません
 再開いたします~!

------------------------




 リシェルは母上様から直々に狩りを命じられ、俺はリシェルのために働けと命じられた。
 御意。

 リシェルのターゲットは、王の侍従全員。
 それに加えて、そいつらの実家の親兄弟も全員だ。
 となると、実家はどこにあるのかすべて把握しておかねばならない。
 奴らの逃亡を防ぐよう、あらかじめ手勢を潜ませておく必要がある。

 ――ところがなんと奴らの実家は、王都郊外やその周辺といった、近場に集中しているのが判明した。

 いや、これは以前から調べて知っていたことではあった。
 けれど当初はそのことを、誰も深く考えていなかったのだ。
 都会の近くに住んでいる人間のほうが、都会に就職しやすいという理屈だよ。なんかみんな中央に集中してんな……と感じはしても、有り得ないというほどのことでもなかった。
 だがこうなると、見え方が変わってくる。

「もし遠い田舎にバラけられていたら面倒だったし、近くにいてくれるのは助かるんだが」
「この分布、わざとみたいだよね? 四公の領内に綺麗に配置されている感じがするよ」

 彼の言う通りだ。
 俺達四公の本邸は、領内でも王都に近い場所に建っている。王の呼び出しがあれば、すぐ王宮に馳せ参じることができるように。
 そして、王都を守る最後にして最大の守護壁になれるように。

 しかし王の侍従の親兄弟が住んでいる実家は、そんな四公の本邸を監視しているかのような位置にあった。
 ような、ではなく、実際に監視していたんだろうな。

 ――なあ、ミッテちゃんよ?
 なんとなくこいつらって、暗部っぽい感じしねえ?
 問いかけると、俺の肩でミッテちゃんが「ふむう」とうなった。

「……実を申しますと、かつてはそういうのがありました。と言いますか、どの国にもそういった組織はあるのですよ。ただこの国の場合、自然消滅したと思っていたのですが」

 自然消滅? どういうこと?

「それがですね……かつては、リヒトハイム建国王が独自に集めた、諜報や汚れ仕事を行う組織があったのです。頂点はリヒトハイム王のみであり、王には絶対服従という者達でした」

 国とは関係なく、王様個人の都合で動かせる集団なんだな。
 それが自然消滅したってのは?

「――肝心のリヒトハイム王が、彼らの存在を忘れてしまったのですよ。ファーデンの存在も、ヨハンの代で伝承が途絶してしまったでしょう? あれと同じことが起こったのです。先代国王のさらに祖父の代でしたから、あなた方の感覚では大昔と思いますよ」

 そいつは確かに、俺らからすると大昔だな。

 たとえ王様専用の特殊部隊がなくとも、国家が情報収集を行う組織を抱えている。
 シュピラーレの小父様やヴェルクの義父上様、多分エアハルトもそういうのを持っているはずだ。
 だから王様が個人的に集めた、王様のためだけの秘密組織とやらは、時代とともにそぐわなくなって淘汰されたひとつと言えそうな感じがした。

 だって王家の親子間で伝承が途絶えたなら、組織のトップが新たな王様に自己紹介でもすればいい話だろ。
 だがそいつらは、それをしなかった。
 我が家と同様、できない事情があったのか。
 もしくは王様が王様として相応しい存在じゃなかったから、仕えずに姿を消すことを選んだのだろうか。
 
 違うよな。なんか違う。
 その組織、たいした志も何もなく、ただ漠然と存続してたんじゃねぇか?
 なんとなく、『たとえ王に知られていなくとも我らは王のために動く。それが我らの存在意義だ』みたいな、狂信的な気配がするんだけど?

「ああ、そうですね。確かに、そのような思考の傾向はありました。というか、そのようなをしていたのでした。となると、私でさえ悟ることができなかったぐらいですから、相当に根深く染みついておりますよ」

 全盛期のミッテちゃんなら、すぐにわかったんだろうけどな。
 ただあいにく全盛期のミッテちゃんて、今ほど人間っていう生き物の深部に興味を持ってなかった感じがするんだよ。
 ミッテちゃんは一度力が失われた分、逆に前よりもある面で強く鋭くなってんじゃねぇかなと俺は思っている。
 それでも、侍従達の底にあるものは読み取れなかったみたいだけどな。

 ――そいつらは、『綺麗な』存在だった。
 野心も何もなく、ただ誠実に王様に仕えている。
 多分そこには、偽りの一片もなかった。



 寝室で二人きりになり、リシェルにもミッテちゃんから聞いた話をそのまま伝えた。

「余計に捕まえたほうがいい理由ができたね」
「その通りだよ。この際、完全に消えてもらったほうがいい」

 だって、あのオークの私兵ってことだぞ。
 これまでも王様のために、命令がなくとも奴らが勝手に動くことがあったんじゃないのかね?
「あ奴は気に入らぬ!」の一言でこっそり暗殺とか、そういうのやっていそうな気がすんだよな。

「ヴェルクのお義父様にも協力を仰ごう」
「うん。一斉捕縛に関しては、お父様が適任だ。ヴェルクの騎士団だけじゃなく、シュピラーレにも戦力を提供してもらい、お父様に彼らを動かしていただくのがいいと思う」
「だな。レーツェルの騎士団は、お姉様とエアハルト義兄様の守りを固めることに集中してもらうか」
「うん、そのほうがいいよ。一度狙われているんだもの」
「ファーデンからも一部、動かすか」
「いいかもしれないね。だって彼ら、『天の雫』の影響、多分この世で一番強く受けているよ」

 さくさくと段取りが決まり、纏まった頃には就寝時刻を過ぎていたんだが……

 さあ寝ようと言い出す前に、どちらからともなく、お互いから視線を外せなくなってしまった。

「ん……ぁ……」

 無言で唇を重ね、甘く感じるそれに舌を絡めた。
 小さく漏れる喘ぎが俺の耳をくすぐり、酩酊感が押し寄せてくる。
 さんざん唇を味わったあと、彼の寝間着の前――初夜のピラピラ衣装じゃないぞ――から手を差し込み、しっとりとした素肌を撫でたら、腕の中の身体がふるりと震えた。

「ごめん、なるべく……寝不足に、ならないように、するから……」
「いっ、いいよ……いいから、そんなの気に、しな……あぁ……っ!」

 切ない悲鳴に、下半身がドカンと痛くなる。
 やば、手加減できるかな、俺……?


感想 864

あなたにおすすめの小説

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

【完結】双子の兄が主人公で、困る

  *  ゆるゆ
BL
『きらきら男は僕のモノ』公言する、ぴんくの髪の主人公な兄のせいで、見た目はそっくりだが質実剛健、ちいさなことからコツコツとな双子の弟が、兄のとばっちりで断罪されかけたり、 悪役令息からいじわるされたり 、逆ハーレムになりかけたりとか、ほんとに困る──! 伴侶(予定)いるので。……って思ってたのに……! 表紙は、Pexelsさまより、Julia Kuzenkovさまによる写真をお借りしました。ありがとうございます!

嫌われ者の長男

りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....