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堕ちた天使を狩る
213. 上位者達の密かな事情 -side高位天使達
世界は、ひとつだけではない。
数多の世界が存在し、数多の『管理者』が存在する。
ただ世界によっては、管理者が不在の世界もあった。それは偶発的に出現した世界のこともあれば、わけあって管理者が消えてしまったケースもある。
我々の担当している空域の、それも複数の世界において、無視できぬトラブルが同時期に多発していた。
同胞からの救援要請も届いていたため、我々はそれらの世界の対処でかかり切りになり……ある世界の異常を感知するのが遅れてしまった。
それはまだ未熟な同胞が、成長と進化を目指して臨む世界だった。
仮にその世界で何が起ころうと、他世界に悪しき影響が及ぶことはない。それもあって安心し、監視が甘くなっていたのは否めなかった。
『まさか……』
『これほどのことが、起こっていようとは……』
その世界から強く発された、管理者以外の気配。
我々はその異変を感知するや否や、手の空いている同胞とともに、急いでその世界に翔けつけた。
そしてその世界で何があったのか、世界の記録を瞬時に読み取り……あまりのことに絶句した。
あろうことか、同胞の妨害をしている者がいる。
あれは以前、どうしようもない手段を用いて失敗し、己の世界を破壊して不合格となった者だ。
頑固で生真面目。それはよいが、己の正義に固執し、他者の正義を軽んじる悪癖があった。そして致命的なことに、己の育むべき世界の民を『駒』同然に支配していた。
とどめに『魔法』だ。
あれは非常に扱いが難しい。人間の文明に与える場合は慎重に慎重を期し、さらに熟考を重ねねばならないというのに、あの者は効率重視でポンと与えてしまった。
案の定、それが文字通り世界にとどめを刺すことになった。
ゆえに降格処分となり、当分の間は再試験に挑むことを禁じられ、修業を課されていたはずだが。
修業に取り組んでいると見せかけ、我らの目を盗み、下位の同胞の邪魔をしていたとは……恥知らずが!
『されど、あの者をいかにする?』
あの世界の管理者、今は『ミッテ』という名で通している同胞の召喚した魂が問題だった。
『よもや、他世界からの召喚を行うとは。……だが罪ではない。ほかに手段がなく、致し方なかった面もあろう』
『それを教えた者も狡猾だ。罰されることはないと見通した上でそそのかしたに違いあるまい』
『召喚をした時点ではどのような魂が来るのか完全には読み通せぬ。ゆえにこそ危険だったのだが……幸いにも、今回ばかりは成功例と言えるか』
我らの片付けてきた『無視できぬトラブル』が、まさにその召喚術に端を発するものばかりであったため、若干複雑な心境ではある。
しかし、それにしても。
『あれはやはり〝魔王〟で相違ないか?』
『そのようにしか見えぬ』
『あれを〝人〟の魂と言い切るには、少々無理があるのではないか?』
我らの『眼』の前で、今はエンデという名の肉体を強奪した恥ずべき同胞が、この世界のランハートという青年を攻撃しようと試みている。
精神破壊、精神汚染、洗脳、そのあらゆる攻撃の根が、青年に絡みつく端から黒く変色して枯れ果てていた。
己の魂を汚染しようとした『力』を、汚染し返している。
明らかに無駄とわかるのに、エンデは恐慌状態に陥って無意味な攻撃を何度も繰り出していた。
ランハートは平然としたもので、なんとその『力』を鷲掴んでのけている。
……待て。精神世界は精神力の如何で多少はどうにかなるとはいえ、腐っても我らの同胞相手に、並の人間ができる真似ではないぞ?
『〝魔王〟だな。人間と融合してはいるが』
『よりによって、なんという魂が召喚されてしまったのか……』
繰り言は無意味だ。喚ばれてしまったものは致し方なく、ランハートによって真の管理者が難を逃れたのも確か。
彼は管理者とも良い関係を築いているようだし、この世界に伴侶や好ましい家族、好ましい友を得て、とても満足しているのがわかる。
あれと敵対せねばならない道理がない。むしろ、敵対すればその被害がどれほどになるか予想もつかない。
恥知らずの同族の怒りなど、実に浅く軽いものだ。それと比較し、あのランハートに潜む怒りの凄まじさは言語に絶する。
魂の芯からぐらぐらと憤怒を煮え立たせ、己が敵を一匹残らず闇に沈めんとする、恐怖の化身。
消し炭にされそうなほどの熱さを内包しながら、その美貌は永久凍土のごとき冷ややかさで、触れた瞬間に皮膚が裂けて血まみれになりそうな予感を覚える。
あれは人外の、魔の者に備わる美しさだ。我ら全員の見解が一致した。
滅ぼそうと思って滅ぼせるものではない。恐らく倒しても復活するであろう。
『敵対は愚か。我らは、我らの責務を果たせばいい』
『うむ、その通りだ』
愚かにも敵対した同胞と、ランハートの魂を我らの空間に招き入れる。
それと同時に、この世界の管理者も招いた。
まだ未熟なヒヨコに過ぎないが、以前会った時よりも、遥かに成長した面構えと気配になっている。
「申し訳ございません、皆様方。このような性格の者でございますが、わたくしが責任を持って面倒を見ますので、ご寛恕いただきたく存じます」
『……実に頼もしく成長したものだ』
我らはランハートの今後の処遇を、この世界の管理者『ミッテ』へ一任することにした。
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読みに来てくださってありがとうございます!
更新のお知らせ:7/10~12投稿お休みしますm(_ _)m
『やさしい世界』や『聖女転生』は投稿予定です。
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