プログレッシブコンキー

出会う。そして、巡る。

1.4

レンヤートは自宅のリビングに設置しているソファに腰掛けた。手にしているワイングラスを見つめる。時計の針が静かに時を刻む音が、静寂な部屋に響く。彼の様子はまるで、心ここにあらずというべき状態だった。

今日初めて会った都姫という男性との出会いはレンヤートの中で化学反応が起きたような感じだった。姫月にしか見せない純粋な笑顔、そしてリスのように頬袋を膨らませ食事を楽しむ姿。その全てが、彼の心に深く刻まれていた。レンヤートは目を閉じると、都姫の笑顔が鮮明に浮かび上がるのを感じた。彼の一挙一動が、レンヤートの心を揺さぶっていた。

「何なんだ、この感情は…」
彼は心の中で呟いた。今まで多くの女性と関係を持ち、恋愛において百戦錬磨の彼にとって、このような気持ちは初めてだった。都姫が自分に向ける探るような目、その眼差しがレンヤートの心に深く刺さっていく。

レンヤートはワインを一口飲み、リビングの窓越しに広がる夜景を眺めた。イタリアの美しい街並みが、彼の心を少しだけ落ち着かせる。しかし、都姫のことを考えると、再び心がざわつき始めた。

「明日、都姫くんと会う…」
そう口にしただけなのに、彼の胸を高鳴り始め、鼓動が早くなっていく。女性にしか恋愛感情を抱いたことがないレンヤートにとって、都姫に対するこの新しい感情が何なのか、理解しようとするたびに混乱が増していく。

レンヤートはソファに深く沈み込み、目を閉じた。都姫の声、笑顔、その全てが脳裏に鮮明に蘇る。彼が写真を撮る時の真剣な表情、その瞬間の感情や物語を捉えようとする姿勢。全てがレンヤートにとって新鮮で、魅力的だった。

「なぜ、こんなにも都姫くんの事が気になるのだろう…」と自問自答を繰り返すが、その答えは見つからない。
レンヤートは迷宮に迷い込んだ感覚を覚えた。

彼は目を開け、再びワイングラスを手に取った。その冷たい感触が、少しだけ彼の心を落ち着かせる。しかし、都姫に対する感情は、ますます強くなっていく。「（彼はもう寝たのだろうか…）」「（彼は自分のことに興味を持ってくれいているだろうか…）」レンヤートは普段考えないようなことまで考えていた。

「（明日、都姫くんに会った時、この気持ちがもっと明確になるのだろうか…、今日みたいに自然に喋られるだろうか…）」純粋な思いが彼の心の中で響き続けた。

レンヤートは深い溜め息をつき、心の中で葛藤する思いを静めようとした。明日、都姫と再び会うことが彼にとって新たな希望と不安を同時に呼び起こす。彼はワイングラスを置き、重たい瞼を閉じると、静かな夜に身を委ねることにした。