シンデレラ バリエーション

冲田

文字の大きさ
4 / 8

4

しおりを挟む
 いよいよ舞踏会の日がやってきました。厨房はいつもと比べものにならないほど大忙しです。いたるところでおいしそうな湯気が立ち上り、食欲をそそる匂いに満ちていました。お姉さんたちはわくわくしながらその様子をのぞき見、鼻をひくひくさせていました。料理が運ばれ始め、厨房に人がいなくなったら灰かぶりの仕事が始まります。舞踏会のごちそうのおこぼれを、お姉さんたちのためにとってこなければならないのです。 


 夕方になりますと、お城には次々と馬車が到着しました。馬車からはきらきらしたドレスを身にまとった娘さんたちが降りてきました。王子はその様子をため息をつきながら眺めていました。やがて、お城中に高らかなラッパの音色が鳴り響き、花火があがりました。舞踏会の始まりです。 


 あらかた仕事を終えた灰かぶりは、いつもの噴水に来ました。そして、夜空に咲く花火を見てため息をつきました。 

「舞踏会がはじまってしまった。今夜王子様は、お相手を見つけてご結婚なさってしまうのね。そうしたら私なんて見向きもされなくなるわ」 

 灰かぶりはつぶやきました。 

「舞踏会に行きたいのね」 

 灰かぶりのつぶやきに、どこからかの声がこたえました。灰かぶりはきょろきょろとあたりを見ました。 

「ここよ、私。いつもあなたたちを見守っていたのよ」 

 灰かぶりの目の前に、噴水から出てきた水の妖精が立っていました。 

「あなたの願い、叶えてあげましょう。舞踏会にいってらっしゃい」 

 妖精が灰かぶりに魔法をかけると、灰かぶりは瞬く間に、それは美しい人間の娘になっていました。誰にも負けない、素敵なドレスとガラスの靴もプレゼントしてもらいました。 

「あぁ、妖精さん。本当に、本当にありがとう。私、人間になれたんだわ!」 

 灰かぶりはあまりのうれしさにダンスのステップを踏みました。 

「いいえ、これは夢よ。灰かぶり」 

 妖精は言いました。

「真夜中の十二時になったら、魔法はとけてしまいます。気をつけて。十二時の鐘が鳴り終わったら、あなたはもとのねずみに戻ってしまいます。一夜限りだけれど、楽しんでいらっしゃい」 

「わかりました、妖精さん。気をつけますわ」  
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

きたいの悪女は処刑されました

トネリコ
児童書・童話
 悪女は処刑されました。  国は益々栄えました。  おめでとう。おめでとう。  おしまい。

生贄姫の末路 【完結】

松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。 それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。 水の豊かな国には双子のお姫様がいます。 ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。 もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。 王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

ローズお姉さまのドレス

有沢真尋
児童書・童話
*「第3回きずな児童書大賞」エントリー中です* 最近のルイーゼは少しおかしい。 いつも丈の合わない、ローズお姉さまのドレスを着ている。 話し方もお姉さまそっくり。 わたしと同じ年なのに、ずいぶん年上のように振舞う。 表紙はかんたん表紙メーカーさまで作成

運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)

王女様は美しくわらいました

トネリコ
児童書・童話
   無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。  それはそれは美しい笑みでした。  「お前程の悪女はおるまいよ」  王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。  きたいの悪女は処刑されました 解説版

松野井奏
児童書・童話
月とぼうやは眠れぬ夜にお話をします。

処理中です...